第45話 何時間でも見ていられる!
「……俺が筋肉痛になるとは」
翌朝、自分の席で机に顔を突っ伏していた。
あの後、高速完コピ地獄に二時間も付き合わされた。ついでに歌わされたから、喉も痛い。
ヲタ双子は疲れを一切見せず、さっき会ったら「グッモーニンッ豆先輩ー」と、ケロっとしていた。……世界はどこまでも不公平だ。
「大丈夫ですか?
唯一の公平点は、俺がぐったりしているとフェルデンが心配してくれる所だ。
でも、この聖母様は聖母様なので、指を舐めてくるヤンデレや、ノーパンで歩かさせようとしたヲタ双子にも優しい。みんなに優しい。それでこそ聖母様だが、だからこそ公平で不公平だ。
「俺だけの聖母様であってくれ……」
「え? 何か言いました?」
「何もー……」
「今日こそ特訓をお休みしますか?」
「いや、やろう。やらせてください。あーでも、またあいつら来ねぇかなー……」
「大丈夫ですよっ、さっき電話がきまして、『今日は
「よかった……」
心の底から、よかった。
「今日こそ『愛ダンス』しましょうねっ」
「キュム」
放課後、体育館裏。
「今日は大音量で聴いて、練習できるように、これを持ってきましたっ」
ブルマン……、間違えた。フェルデンは今日も元気にブルマで、そのブルマから白いワイヤレスイヤフォンを取り出した。
「…………」
世の中、便利な物が増えすぎだ。ワイヤレスになったら、体をくっつけられんではないか。
「グッバイぴったんこ……」
「何か言いました?」
フェルデンは鉄仮面の左耳部分の凹みにイヤフォンを入れ、右イヤフォンを俺に差し出した。
「…………」
この間も思ったが、本当にその鉄仮面、特注品なんだな。見事にイヤフォンがフィットしていてすげーよ。
そう思いながら、右耳にイヤフォンを入れた。
「『愛』流しますよー」
「おう」
フェルデンは今日は白い
「これならゆっくりで覚えやすいですが、ふふっ。スローだと笑っちゃいますね」
「そうだな」
「えーと、営みのっ、街が暮れたらっ、色づきー」
フェルデンは、真似して歌いながら、横を向いて手招きするような動きを段々と下げていき、足をぴょこぴょこ動かす。
「……」
「風たちはー、運ぶわー、カラスと人々の群れっ」
次に、手を後ろにし体を反るように、手を前にしたら尻を突き出すようにし。押し返されたようにそのまま下がり、両手をぐるっと回し考えるポーズみたいに、左手の人差し指を口に当てた。
「…………」
動きが、ぎこちないのに、一々可愛い!
尻がたまらん!
それに、最後の『人々の群れ』の所のあれは何だ! 俺に何かを訴えかけているようだ!
これは! 何時間でも見ていられる!
「あの……、雅さん」
「何だろうか!」
「一緒に踊らないのですか?」
「うむ! 俺はお前の尻を! あっ、失礼! お前のダンスをずっと見ていたい!」
「…………」
−−−−−−
あとがき。
二人に踊ってもらうには、私も『愛ダンス』を覚えなきゃいけないわけで。
『愛ダンス』エンドレスで見ていますが、体育の成績いつもギリギリだった私には、表現するの無理!(泣)
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