第44話 豆だからかっこつけたいんだろ

みやびさんっ、大丈夫ですかっ? 起きれますかっ?」


「はい、起きれます雅さん」


 色々ました雅さん。


「これだから、玉付きは嫌なんだよ」


 はーい、そこのフルポーカーさーん。無オーラで俺を見ないでくださーい。怒りを出してくれた方が優しいって、気づいてくださーい。


「まぁ、でも。これで一つ貸しができたじゃないか兄さん」


 勝手に貸したんですよねー? あなた方が。まぁ、でも、貸されたついでに。


「お前らに頼みがあるんだが」


「んー? ダンスを教えてほしいってー?」


「……エスパーですか?」


「あははっ、違うよー、ただのヲタ」


「双子だよー」「双子です」


「…………」


 一々シンクロすな、キラッてピースすな。


「これで、貸し二つになっちゃうけど、いいのー?」


「フェルデンに無様な姿を見せるよりはいい」


「えっ……?」


「ん?」


 今、フェルデンからバケゴリに言うような、ときめきボイスが聞こえたが、気のせいか?


「豆先輩のくせに、かっこつけちゃってー」


「いやいや、豆だからかっこつけたいんだろ」


「まぁまぁ、姉さんと二人きりの練習を阻止できると思えば、Win-Winなんじゃないか、兄さん」


「まー、そういう事にしてあげようかー。でも、さっき少し、お姉ちゃんをときめかせて、ムカついたから」


 あ、やっぱりフェルデン、少しはときめいてくれたのか。……ふむ。やる気が出——。


「だから、ボクたちの、の意地を見せてあげるよー」


 え? 何? 何でこのヲタ兄、フルポーカーで俺と張り合おうとしてんの?

 いやいやっ、どう見ても、お前らの方が格上——。


「サージュ、ミュージック、スタート」


 フルポーカースマイルで、奴は指をパチンと鳴らし。


「はい、兄さん」


 弟はクールに携帯を操作し。


 あのリズミカルなイントロが。


「……は?」


 高速で流れた。それをいとも簡単に。


「「営みの、街が暮れたら色づきー。風たちは、運ぶわー、カラスと人々の群れっ」」


 歌って踊ってみせた。


「……すいませんでしたー! だから、通常スピードでお願——」


 俺が謝っても。


「「意味なんか、ないさ暮らしがあるだけー。ただ腹を空かせてー君の元へ帰るんだっ」」


 シンクロ高速完コピエンドレス地獄を、やめてくれなかった。

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