第43話 雅さんのお玉さん、完全復活しました……。

 あれから、俺はとにかく逃げた。

 だが、飛べる玉付き天使。地を走る汗臭筋肉豆。そんなん、負けはもう決まっていて。


「つーかまえたっ」


「ギャー!」


 両側から玉を掴まれ上空へ!


「千切れる! もげる! 玉が!」


「大丈夫ー、リュゼたち離さないからー」


「いや! 離してくれ! いやダメだ! 落ちる! どうすればいいんだー!」


「そっちはそっちの世界で楽しんでねー」


 地上でフェルデンの肩を抱き、ニヤニヤ顔のヲタ双子。


「おっ、んなの子になりてぇー!」




 ※ ※ ※




 翌日。


「ズキズキする……、玉が」


 自分の席で玉をさすっていた。


「大丈夫ですか? みやびさん。その……、お玉さんは」


「……」


 お玉さん……。エロ可愛い響きだ。


「いや、まぁ、お玉さんは大丈夫じゃないが、大丈夫だ」


「今日は特訓中止にしましょうか?」


「いや、やろう。その方がお玉さんが元気になるから」


「そうですか、なら、ダンス練習頑張りましょうねっ。雅さんのお玉さんが元気になるように!」


 小さくガッツポーズフェルデン。


「…………」


 もう、雅さんのお玉さんは元気になりました。






 放課後、体育館裏にて。


「私、考えたのですが。二人で同じダンスをやった方が効率がいいと思うのです」


 今日も真面目にブルマだよフェルデンさん。


「そうすれば、動きが間違っているとか、指摘し合えますし。みんなで踊るのだから、息が合うように一緒に練習した方がいいと思うのですっ」


「……そうだな」


「というわけでっ、『愛ダンス』からやりましょうっ」


「あー、現実逃避してー……」


「ダメですよ? 雅さん。ちゃんと現実を見て、練習しなきゃ」


「……お前は本当に、いつでも真面目で前向きだな」


「それがっ」


 フェルデンの右側から、ヲタエルフ兄顔ひょっこり。


「姉さんの魅力だからっ」


 左側から、ヲタエルフ弟顔ひょっこり。


「……お前らも、練習しろよな」


「んー? ボクらもう完コピできるよー?」


「……マジか」


「何なら、赤町せきまち先輩せんぱいの他の候補だった『愛するハッピークラッカー』『バニラ・ダンスホール』も完コピできます」


「……マジか」


「さらに付け加えれば、他の女子から候補が上がっていた『ノイジーマイノリティー』『ブルーosculationオスキュレイション』も」


「完コピ」


「できるよー」「できます」


 ハモって顔を挟むような平行ダブルピースをした双子。顔がいいから、本当に腹立つ!


「世界は不公平だ……」


「んー、仕方ないなー。じゃあたまには、リールお姉ちゃんを貸してあげるよ」


「たまにじゃなく、いつも貸してください……」


「お姉ちゃん、ちょっと耳を貸してー」


「え、あ、はい」


 耳、いや、鉄仮面をヴィエルに近づけたフェルデン。そして、何かコソコソ耳打ちという名の、鉄仮面打ちをするヲタ双子兄。


 何を吹き込んでいるか知らねーけどよー。この俺の絶望感は、そうそっこらちょっと癒されるもんじゃ——。


「……わかりましたっ。雅さん!」


「何だよ……」


「キュムキュム注入です!」


 フェルデンは俺の左胸に両手を当てた。


「…………」


「ダメじゃないですかー、ヴィエルさんっ。雅さん固まっちゃいましたよー」


「まぁまぁ、見てなよお姉ちゃん。絶対に時間差で」


「キュムー……」


 俺は後ろから倒れた。


「えっ? 雅さん!?」


「サンキュム……」


 雅さんのお玉さん、完全復活しました……。


−−−−−−


 あとがき。


 読んでくださる皆さんに「サンキュム」を(笑)

 いつもありがとうございます。

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