第13話 何でじゃー!

 翌日の放課後。


「ったく、酷い目に遭ったぜ……」


 あれから俺は、ヤンデレのリールなんちゃらという電撃を何発も受け、今度こそ砂浜に埋まった。

 電撃の強さでブーメランが破れ、アソコが丸出しになり、結果、またフェルデンに引かれた。

 そして、玉にも直に電撃は放たれた。そのせいなのか、未だにまだ小の出が悪い。


「本当にすいません……」


「いや、お前は悪くな……、悪いな。いいか? ヤンデレの、ラビオスのお前への愛は異常なんだぞ!?」


「はい……」


「俺だから耐えられたものの! 普通の奴なら玉がもげていたぞ!」


「は……、問題はそこですか?」


「そこ以外に何がある!?」


「わかりませんが……。でも、みやびさんにはわかっていただきたいのです」


「何がよ」


「べトゥラさんはその……、愛情表現が異常なだけで、私の唯一のお友達なんです」


「愛情表現が異常なのはわかっていたんだな。……ん? ってか、唯一のダチ?」


「……はい。ここに通えて、晴那はるなさんや雅さん。他にもお友達は増えました。でも、ここに来る前は……、べトゥラさんだけだったのです」


「うそーん」


「だから、愛情表現がどんなにおかしくて、激しくて、私以外どうでもよくなっていても。ベトゥラさんの気持ちは嬉しいのです」


「……愛情表現がおかしくて激しい。自分以外どうでもいい。うん、素晴らしく的を得ているな。……んん? ちょい待ち。ここに通えて増えたダチがムキゴ……、赤町せきまちや俺? 俺!? も!?」


「はい。雅さんも大切なお友達です」


「うおぉっしゃー!」


 思わずガッツポーズで立ち上がった。


「え? どうしました? 雅さん」


「俺! 友達じゃーん! 昇格してるじゃーん!」


「えーと、はい。昇格というか、同じクラスになった時点で皆さんお友達です」


「なーんだ。最初から俺らダチだったんじゃーん。ならば友よ!」


 フェルデンの両手をがしっと握った。


「はい」


「友ならば友として友のために友を止めなければならないよな!?」


「えーと、お友達なら、雅さんのために、べトゥラさんを止めなければならない。ですか?」


「さすがフェルデン! 全てをわかってくれる!」


 両手を握ったまま上下に振った。


「雅ー、あんまりリールの手をずっと握っているとー、隊長にしばかれるぞ!」


「ぐえっ!」


 ムキゴリに後ろからスリーパーフォールド! 首が絞まり、ギブギブ! と腕を叩いた。


「面白くねーなー。ちっとは抵抗しろよ」


 首からムキゴリの腕が離れた。


「俺は学んだのだ。お前に抵抗しても無意味だという事を」


「つまんねー奴だな。あ、つまんねーと言えばもう一つ。雅、遠泳大会に出なかったな、張り合いがなくてあっさり優勝しちまったぜ」


「くそぅ、俺が出ていれば三連覇できたのに!」


「晴那さん、優勝おめでとうございます」


「おー、リール、ありがとな」


 ムキゴリは前の席に座っていたフェルデンの鉄仮面を撫でた。


「いえ……」


 だから何故! 俺には照れないのに女のムキゴリには照れたような声を!

 ちくしょー、こうなったら腹いせに優勝賞品を奪ってやる!


「赤町、賞品なんだったんだ? 早く見せろ」


 我が校の遠泳大会は、一位から三位まで賞品が出る。参加賞はラムネ。いつの時代だよ! っていう参加賞だ。


 で、問題は一位から三位までの賞品。中でも優勝賞品。表彰式はやらず、いつもこっそり授与。もらった本人しかわからない。


 ちなみに、一昨年の優勝賞品は、『まったりほのぼの校長癒し動画』

 意味がわからないだろう!? もらった俺ですら未だに意味がわからない! だってただ校長が木にぶらさがっているだけの動画だぜ!? それも一時間! 寝落ちしたわー。


 去年は、『これで君もスリムに! 校長好物セット』

 まぁ、食いもんならいいかと思ったら、葉っぱと新芽と果物8グラム! それと謎の苔! 8グラムだぜ!? もぉーイライラ爆発して校長室に突入して聞いたら、


『そーだよー。それしか食べないのー。痩せるよー』


 と、のんびり言われた。


 ふざけんな! だろ!? 一応、食事には気を使っているが、8グラムはねーわ!


 で、あの苔は何っすか!? って聞いたら。


『んー? 僕の体の苔。美味しいよー?』


 もっとふざけんな! 何で校長の体の苔を食わなきゃなんねーんだ!

 発狂したから、葉っぱとかは鳥の胸肉と一緒に焼いて食ったけどな! 苔は校長の口に返したが!


『美味しいのにー』


 と、もっさもっさ食っていたが。知らんがな!


 動画、好物、とくれば、今年はぶら下がり用の木とか、そんなもんだろう。ざまーみろムキゴ。


「ん? 今年はな、二つあってな。一つは学食一年無料券だったぜ」


「何でじゃー!」


 頭を抱えて座ったまま後ろから倒れた。


「は? 何がだよ」


「何でムキゴリが優勝する時は、普通の賞品なんだー!」


「……誰がムキゴリだって?」


「はっ! しまった!」


 賞品の余りにもの違いの差に、羨ましさで、とうとう口に出してしまった。ムキゴリが拳をポキポキと鳴らしながら俺を見下ろしているー!


「は、晴那さんっ、もう一つは何だったんですか?」


 後ろからフェルデンの助け舟。やっぱりお前は天使だー。


「ああ、もう一つはな、思われ花の種だってよ」


「初めて聞くお花ですね」


「だよなー。何でも、どんな花が咲くかは人によって違い、咲いた花を見れば、自分がどう思われてるかわかるらしいぜ?」


「……そうですか」


「あたしは花はわかんねーから、後でリールにやるな。で、ダーリンにもやろうと思っていて。これから一緒に行かないか?」


「え? 私もいいんですか?」


「もちろん! ダーリンにリールの話をしたら、会いたがっていたからさー。で、雅もついてきな」


 横に来たムキゴリに後ろ襟を掴まれ、宙ぶらりんこ。


「あたしよりでかい、ムキゴリはたくさんいるってことを、教えてやるよ」


「あざーっす……」

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