第10話

「("きつね"と"たぬき"------)」


「ぽんっぽんっ」


「こんっ こんこんっ!」


「(・・・・・)」


「ぷぅぅううぅうううん」


丘からの風に流されたのか、


英孝の鼻に、何とも言えない、


いい"香り"が漂ってくる-----


「ぽんっぽんっ?」


「こんっ こんっこんっこんっ」


「(・・・・?)」


白い、大きな狐と、黒い、大きな狸は


大きな甕の前で、互いに向かい合うと


甕の前に敷かれた座布団の様な物の上に座る


「ぽんっ ぽんっぽんっ」


「こんっ こんっこんっ」


「ガサッ」


「(棒か・・・?)」


「こんっ!」


「ぽんっ ぽんっ!」


二匹の狐と狸が、甕の周りを取り囲んでいる


大勢の狐と狸たちに向かって目配せする


「・・・こんっ!」


「ぐるぐるぐるぐる」


「・・・ぽんっ!」


「ぐるぐるぐるぐる」


「(・・・・・)」


「ぽんっ ぽんっ」


「こんっ! こんっこんっこんっ!」


どうやら、甕の周りにいた


狐と狸が、棒の様な物を取り出し、


甕の中にその棒を入れ、回し始めたようだ


「ぐるぐるぐるぐる」


「ばちゃっ ばちゃっ」


「ぷぅぅうぅううぅん」


「("蕎麦"----


いや、もしくは、


"うどん"-------。)」


「ぽんっ ぽんっ」


「ぐるぐるぐるぐる」


「こんっ こんっ」


「ばちゃっ ばちゃっ」


「(そう言えば-----)」


全く関係無い話だが、英孝は


今日の会社の帰り、


同僚が言っていた言葉を思い出す----


【英孝! 今日、麻雀とか、パチンコとか、


ギャンブルをしないか!?】


「(・・・・・)」


そして、次に、上司が言っていた言葉を思い出す


【栄養素っ!? 栄養素ッ!?】


「・・・・」


「ぽんっ」


何故、今になって今日の会社の事が


頭に浮かんできたのかは分からないが、


考えにならない考えを浮かべていると、


甕の方から、何とも言えないいい匂いがしてくる


「(・・・・・・)」


「ぽんっ ぽんっ!」


「ぐるぐるぐるぐる」


「こんっ こんっ!」


「ばちゃっ ばちゃっ」

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