第9話

「きつねうどん」(九)


「ぷぅぅうぅぅぅうん」


「(------?)」


狸たちが林から出てきたのと同時に、


英孝の鼻に、何とも言えない、


どこか、峠の蕎麦屋で嗅いだことがある様な


いい"匂い"がしてくる


「ぼんっ ぼんっ ぼんっ!」


「(デカい...)」


狸たちが、甕の前に立っている


狐たちの前まで来る


「ガタッ」


そして、神輿(みこし)の様な物の上から、


大きな、"黒い"狸が、


甕の前に降り立つ


「(な、何が始まるんだ-----)」


「ぼんっ ぼんっ ぼんっ」


大きな黒狸は白い狐の前に立つと


小気味よい鳴き声を上げる


「こんっ こんっ こんっ」


それに合わせる様に、甕の前にいた


白い狐が、同じような調子の


小気味よい鳴き声を上げる


「("仲間"なのか----)」


「ぼんっ ぼんっぼんっぽんっ」


「こんっ こんっこんっこんっ」


英孝は、二匹の様子を見て


何となく、


"この狐と狸は仲間なんじゃないか"


と思う


「ぼんっ!?」


「・・・ぼんっ」


「(・・・・?)」


大きな黒狸が後ろに付いていた


狸たちに向かって何か鳴き声を上げると


狸たちが神輿の中から何かを取り出してくる


「ガササッ」


「ガサッ」


「・・・・ぽんっ」


「(た、"たぬき"-----)」


黒い狸は、別の小さい狸から


"たぬき"を受け取ると、


それを、白い狐の前にある甕の中に投げ入れる


「ガサッ」


「じゅっ」


「・・・・こんっ」


それを見たのか、白い狐の周りにいたきつねたちが


何かを差し出す


「("きつね"------)」


英孝は、それが、


"きつね"


だと言う事を悟る----


「・・・・」


「ガサッ」


白い狐は、きつねから、"きつね"を受け取ると


それを、黒い狸と同じ様に甕の中に投げ入れる


「・・・こんっ!」


「じゅっ」


きつねが、きつねを甕の中に投げ入れると、


よく分からないが


何かが溶けた様な音が聞こえてくる


「・・・・」


「サァァァァァァァァァ-----」


英孝の顔の横にある木の葉が


丘から吹き付けてくる風で揺れる


「(・・・・)」

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