第5話

「(・・・・・)」


「こんっ こんっ こんっ こんっ!」


「("きつね"-----)」


「こんっ こんっ こんっ!」


明かりに誘われ、英孝が


屋敷の中に入り込むと、


「こんっ こんっ」


「こんこんこんっ!」


屋敷の襖(ふすま)越しに


何匹かの狐たちが


何か、大きな甕(かめ)の様な物の周りで


鳴いているのが見える-----


「(・・・・)」


「ぐるぐるぐるぐる」


「こんっ こんっ こんっ」


「こんっ こんっ!」


「(・・・・)」


「ぐるぐるぐるぐる」


「("棒"か-----)」


襖越しに、離れた場所にいる


狐たちに目を向ける


「こんっ こんっ こんっ」


「ばちゃっ ばちゃっ」


どうやら、狐たちは自分達の体の長さを優に越える


長い棒きれを持ち、その棒を、甕の中に入っている


何かに向けて、ひたすらと回している-----


「("きつね"か-----?)」


「こんっ こんっ こんっ」


「こんこんっ」


何となく、だが、狐たちが、


棒を入れている大きな甕を見て、


英孝は、なんとなく、それが


"きつね"だと思う-----


「ガラ」


「・・・・!」


「こんっ!」


「こんっ こんっ!」


突然、英孝が隠れている襖とは、


別の入り口の襖が開く


「・・・・」


「(な----)」


「こんっ こんっ!」


「こんっ」


「・・・・」


襖の奥から入って来た狐を見て、


甕の周りにいる何匹かの狐たちは、目を細める


「(っ! 


・・・で、デカい)」


どうやら、この狐は、


他の狐たちより何倍もの大きさで


まっすぐ立っているだけなのだが


あまりにも身の丈が大きすぎて


天井に頭が付きそうだ。


「(何だ-----?)」


「こんっ こんっ こんっ」


しかも、この狐。


他の狐と違い、色が、


"白い"。


「--------」


それに、なぜか、新郎男性の様な、


“紋付き袴”


を着ている


{(・・・・)}


袴を着けた白い狐は、


まるで自分の子を見る様な目付きで


甕の周りにいる狐たちに目を向ける


そして、


「どすり」


と、部屋に置いてあった大きな椅子に座る


「(デけぇな----、)」

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