第4話

きつねうどん(四)


「ガサッ」


「(------?)」


蕎麦屋の中に英孝が入ると、


店の中には、きつねはおろか、


店主の姿すら見えない


「---------」


英孝は誰もいない店の中を


奥まで進んで行く


「・・・・!」


「ぷぅぅううぅぅん」


「("蕎麦"------)」


店の奥の座席の上を見ると、


そこには、できたての


"蕎麦"


が、まるで今ちょうど作られたかの様に


テーブルの上に置かれている


「・・・・」


テーブルの上に乗った蕎麦を見て、


英孝が違和感に気付く


「("きつね"が無い----)」


「ぷぅぅぅぅぅん」


「(きつね------)」


確かに、テーブルの上には、


"器"、そして、"蕎麦"


が乗せられているが....


「ぷぅぅぅぅううぅぅん」


テーブルの上に乗せられた


蕎麦の器の中には、


"きつね"


が入っていない


「・・・・・」


「(きつね-----)」


「ガタッ!」


「(・・・・)」


英孝は、再び、店の中を引き戻し


暖簾をくぐると、外へ出る


「(きつね-----)」


"タッ タッ タッ タッ-----"


「("きつね"-------)」


"タッ タッ タッ タッ---"


「("きつね"っ------!)」


"タタッ タタタッ タタタタッ!"


「ハッ ハッ-------」


"ダダッ ダダッ ダダダダダ!"


"ガサッ ガサササッ"


「(-------!)」


いつの間にか、英孝の意志と関係なく


足が動き出し、気付けば英孝は


暗い、夜の道をひたすら駆けていた...


「-----き、きつねっ...」


"ダダダッ!"


「はっ はっ-------!」


「き、きつねっ きつねっ」


"ダダッ ダダダダダッッ"


「(---------!)」


「がさ」


「("きつね"------)」


「・・・・」


「がさっ」


「(・・・・・)」


気付くと、3日前と同じ様に、


自分の帰り道である坂の上から


崖を下りた場所にある


屋敷の元まで英孝は辿(たど)り着いていた-----


「("明かり"-------)」


「ガサッ」


草むらから、屋敷の側まで近づいて行くと


建物の中に、"明かり"が見える


「・・・じゅるっ」


「(きつね-----)」


「ガサッ ガサササササッ」


「・・・・」


英孝は、無心で蛍(ほたる)の様に


建物の灯(あか)りへ吸い寄せられていく-----

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