第2話

きつねうどん 


二きつね


「うわぁあああああああっ」


「こんっ こんっ 


こんっこんっこんっ」


「(は、"疾(はや)"い-----!)」


「ザッ ザッ ザッ ザッ!」


まるで貂(てん)のような表情で追いかけてくる


きつねを後ろを振り返りながら、英孝は


今来た道を、凄まじい勢いで駆けて行く!


「ハッ! ハッ! ハッ!、ハッ----!」


「こんっ こんっ こんっ


こんこんこんこんっ!」


「(ま、"不味(まず)"い-----)」


「ガササッ」


先程降りて来た坂の斜面を、


英孝が草を掴みながら登ろうとするが


手が滑って巧く草が掴めない


「うわっ うわわわわわわっ」


「こんっ こんっこんっ!」


「うわわわわわわぁああっ!」


「ドスッ」


バランスを崩して、英孝は坂の途中で


尻もちをつく


「ガサッ ガサササササッ」


「うわっ うわわわわわわっ」


「・・・・」


きつねが、すぐ目の前まで迫ってきている


「(や、


 "殺(や)"られる------)」


"もう、きつねうどんは食べんぞ!"


目を見開きながら、先程峠の蕎麦屋で


きつねうどんを食べた事を、英孝は後悔する


「----スッ」


「・・・・?」


「こんっ!」


「(き、きつね----)」


「こんっ こんっ!」


英孝があっけに取られていると


黒い、紋付袴(もんつきばかま)を着たきつねが


両の足でしっかりと


大地に根を張るように立ちながら


自分の目の前に何かを差し出してくる


「スッ----」


「(----き、"きつね"うどん----?)」


「こんっ こんっ」


「・・・・」


坂の途中で尻を地面につけながら


目の前のきつねを見ると、


狐は、笑顔で笑いながら


自分の目の前に


"きつねうどん"


を差し出してきている-----


「----こんっ?」


「("受け取れ"って事か----?)」


「スッ」


英孝は、無言できつねが差しだして来た


湯気が立っているカップを手に取る


「("きつね"うどん----)」


「-------、」


地面に這いつくばって、戸惑っている英孝を


きつねは、まるで親の様な表情で見ている


「っ!!」


「ハッ ハッ!」


"ズズッ ズズズッ!"


きつねに手渡されたきつねうどんを


英孝は夢中で素手で掬(すく)い取るっ


「あっ!? あちっ!」


"バチャッ バチャッ"


「ハッ! ハッ----、!」


「ばちゃっ ばちゃっ」


英孝は、動転しているのか


そのまま、訳も分からず


きつねから差し出されたきつねうどんを


素手で、夢中ですすり上げて行く!


「ズズッ ズズズッ」


「("暖かい"-----)」


「ずずっ ずずずっ」


「ハッ! ハッ!」


きつねから追いかけられていた恐怖感から


解放されたのか、英孝は、


涙を流しながら、夢中できつねうどんの中の


きつねを勢いよく素手で掴みとる!


「・・・・」


"箸が無い"


「(箸がなければ、きつねは食えぬ---)」


「スッ-----」


きつねが、英孝の前に何かを差し出してくる----


「("割りバシ"-----)」


英孝は、きつねから渡された割り箸を手に取り


無心できつねから差し出された


きつねうどんに箸を伸ばす-----


「ズズッ」


「ズズズッ」

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