第3話 体験入部②

 ついに長距離の練習が始まる。

「今日の練習メニューを伝える前に、1年生もいるし簡単に自己紹介ね。俺が長距離ブロック長の山井です。よろしく。中学生までとは走る距離が全然違うと思うから最初は無理せずね。今日は3-2-1の変化走を男子5本、女子は4本で。明日のポイント練習に備えるイメージをもってやろう。」

陸上を走るだけの種目と思っていたが、少なくとも練習にはいろんなものがあるらしい。今日も練習も明日のポイント練習も全く意味が分からない。察してくれたのか、山井先輩が1年生を集めてくれた。

「今日は変化走といって最初の3分はゆっくり、つぎの2分は気持ち速く、最後の1分は本気近いペースで、また3分に戻ったらゆっくりで繰り返していく練習ね。まぁ初めてだから1本でも2本でも付いてこれたら良い方だと思って参加して。ついていけなくなったら集合場所伝えるからそこで待機でよろしく。」

「わかりました。」

「まぁ、昨日の感じなら小磯はついてこれるかもだけど無理すんなよ。」

「了解っす!」

なにやら小磯は昨日で評価が上がっているようだ。俺も中学までは陸上部よりも長距離が速かった自負がある。負けてられない。

「2人とも1年生なんだね。同期いてよかったわ。俺は長岡和也、よろしく。2人はずっと陸上?」

「いや、俺は中学まではサッカーしてたよ。サッカーでは試合にも出れずに挫折しましたー。」

どうやら小磯は俺と同じらしい。俺は弱小チームながら試合には出ていたが、所詮知れたレベルだ。

「小磯と一緒だわ。俺もサッカー挫折組。」

「マジかー。サッカー崩れかー。サッカー崩れは速いイメージあるんだよね。俺はずっと長距離やってたから、シューズとか含めてわからないことあったら言って。とりあえず今日がんばろっか。」

練習スタート地点では先輩たちが2列になっている。1年生3人は真ん中に入れられた。付いていけなかった場合のフォローのためとのことだ。そんなことになる訳にはいかない。

 練習は近くの公園まで向かう。ジョギングで5分くらい走ると公園に着いた。そのまま休むことなく練習が始まった。

「がんばっていきましょー」

「ハイ」

「楽しんでいきまっしょー」

「ハイ」

走りながら声出しが始まった。恥ずかしすぎる。これはダサい。中学生の頃なら確実に馬鹿にしているノリだ。

すぐ後ろの神保先輩が声をかけてきた。

「1年生もイケると思ったら声出しいいからね。」

お断りだ。恥ずかしすぎる。

「元気出していきまっしょー」

すぐに長岡が声を出した。コイツは慣れているんだ。声出しが終わってからしばらくすると、

「上げまーす」

先頭の先輩が言うと同時にペースを上げた。かなり速い。これが2段階目なのか。周りは皆余裕そうだ。時計を見るが20秒しか経っていない。置いて行かれると思ったら、神保先輩が背中を押してくれた。

「頑張れ、1本目だぞ。いきなりでびっくりするかもだけど、ここ耐えれば2本目は少し楽だから。」

何を言っているのか理解できない。辛い。

「上げまーす」

また声がかかる。これは無理だ。でも他の1年がついているのに俺だけ遅れるわけにはいかない。ここで終わってもいい。走りきる。ふとペースが落ちた。何とか1本目は耐えた。あと4本もあるのか。耐えれるのだろうか。















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