第2話 体験入部①

 入学2日目、放課後すぐに小磯がやってきた。

「今日は行くでしょ?」

「もちろん、昨日どうだった?」

「あとで行けば分かるけど、雰囲気めっちゃ良かったよ。」

「そうなんだ、それなら楽しみだね。」

昨日も部活に顔出している小磯が男子部室まで案内してくれる。さすが私立というべきか、スポーツ推薦もない学校なのに芝のグランドに、野球場、テニスコート、陸上用タータンまで完備されている。

「それにしてもスポーツの設備すごいよね。」

「まぁそうだけど、俺はあんまり関係ないかも。早瀬って短距離?長距離?」

「長距離のつもり。」

「そっか、それなら同じだ。あんまり使わないよ。」

小磯の言っていることはあまり分からないが、とりあえず部室までついていくことにした。

「こんちわーっす。今日も体験入部にきました、小磯です。」

「おう、今日も来たのか。お前ももう学校の変わり者の仲間入りだな。」

「やめてくださいよー。僕はちゃんと普通の人として、普通に楽しく高校生活を送りたいんです!!」

部室に入るなり、身長は小さいが豪快そうな先輩と会話を始めた。

「宮根先輩、こいつ、早瀬っていう同じ体験入部の奴です。」

「早瀬耕です。元々陸上部じゃなかったすけど、興味あってきました。よろしくお願いします。」

「いいよ、そんな固い挨拶は。まぁよろしく。いきなり練習はキツいかもだけど雰囲気感じてみて。」

「ありがとうございます。がんばります。」

続々と部室へ先輩方が入ってくる。

「今日も1年生来てくれてるんだ。」

「今年は幸先いいっすねー。」

「まぁ陸上だからなー。」

この学校において陸上部は何かあるのだろうか。何とも言えない不安を感じながらも着替えを済まして芝のグラウンド隅にある集合場所へ向かう。全員が集まると、宮根先輩が話始めた。どうやら部長らしい。

「インハイ予選までもう1か月無い状況だから、怪我には気を付けて各自課題持って練習していこう。今日は1年生もたくさん来てくれているから、先輩たちはしっかり陸上部を知ってもらえるようにしよう。そして1年生は今日来てくれてありがとう。怪我には気を付けて、部活の雰囲気を味わってください。じゃあ、もくそう。」

もくそうとは何だとなっていると皆目を閉じて始めていたので、周りに合わせておいた。

「やめ!」

再び目を開ける。どうやら浮かずには済んだみたいだ。

「もくそうって黙って想像する書くらしいんだけど、瞑想的な感じなんだと思う。練習前に集中する目的らしいよ。」

困惑していたら、小磯が解説してくれた。黙想が終わると、短距離と長距離に分かれるらしい。ついに練習が始まるかと思うとたまらなく緊張する。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る