駆けた日
筋男
第1話 入学
春、桜が咲き始める頃。4月2日、青央大学付属の入学式。これから新しい生活が始まる。有名大学の付属高校ということもあり、入学式も高校に併設されている大層な講堂で行われている。吹奏楽のコンクールでも使えそうだ。高揚感に包まれている中、大学でも教授を務めているらしい校長の話が長い。校長の話が長く、つまらないのは高校生になっても変わらない。この退屈な時間に耐えかねたのか隣の茶髪に染めたチャラそうな男が話しかけてきた。
「校長の話、長くね?」
「まぁそうだね。どこいっても校長の話って変わらないのな。てか、もう髪染めてるんだね。」
この高校には校則という概念が無いに等しいが、それにしても染めるタイミングが早い気はする。
「そう、せっかくこの高校入ったんだし、楽しまないとね。順番逆になったけど、
俺、小磯幹也っていうからよろしく。ちなみに、陸上部いくつもり。」
「マジか。俺も陸上部見てみようと思ってたから、一緒に行こうよ。俺は早瀬耕、よろしく。」
そんな会話をしている間に校長の話も終わりに近づいたようだ。知り合いのいない高校にきて、同じ部活の見学に行く同期が見つかるなんて幸先が良い。入学式も終わり、クラスでのホームルームで今日は帰宅となる。帰宅準備をしていると、小磯がクラスにやってきた。
「早瀬ー、軽く部活みよーぜ。」
「明日とかでよくない?今日は正直パスかな。」
「了解。じゃ、今日は1人で行ってくるわ。」
正直、部活見学に行くのは怖い。中学生まではずっとサッカーを続けてきたが、パッとするような成果は出なかった。そんな中でも長距離だけは学校でも速かったから、高校では長距離で活躍するために陸上部に入ろうと思っていた。これで、もし部活でついていけなかったら、もう出来るスポーツが無くなる気がしてどうしようもない不安に駆られる。不安と希望抱え、まだ現実を見る勇気を持てないまま、高校初日が終わった。
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