親しい人とはよく交わるのも良い
皆様は「ご無沙汰しています」…という方はいらっしゃいますか?
人とは千変万化。久々に会うと昔と人が違った様に横柄であったり支配的であったり…
竹馬の友であったのにいつの間にか会いたくなくなる…なんてことにもなったりして。
ですがもし会う機会があるならどんなに合わなくても会わないより良かったりもします。
仏教の説話でしたか。
ある若い僧侶が早朝の鐘の音より早く起きて、数少ない薄い粥と塩、漬物を貰いに行きます。
そのただでさえ一人分にも少ない食事を二食に分けるのです。
そして同じ寺内にある尼寺に実母がおりました。
尼寺は男子はすんなりとは入れません。
ですからその僧侶は尼寺の寺女に無理を言って食事を届けてもらっていたのです。
母の尼はその息子からの食事が届く事が「元気の印」として有り難く受け取り一層勤行に努めました。
しかし人の命は人には決められません。
人一倍邁進していた若い僧侶は流行病にかかってしまうのです。
その頃の食糧事情を推理しても、米の粥であったとは限りません。
稗や粟の薄粥でもあったでしょう。
それを半分のみ食べて同じく勤行していた。
無理が祟ったのでしょう。
臥せった時に、友人の僧侶が見舞いに来ます。
その僧侶に病んだ僧侶が願うのです。
「どうか私と貴方の仲だと見込んでお頼み申します。老いた母の朝餉を変わらずに用意して頂きたいのです。お頼み申します。お頼み申します」
「わかった。お主のご母堂には私が朝餉を変わらずに届けようぞ」
それが心配だったのでしょう。友人が固く約束してくれたので緊張の糸が切れてまもなく亡くなってしまいます。
それからはその友人が鐘より早く起きて朝餉を二食に分けて、寺女に託しておりました。
そうしますと寺内で評判になります。
無くした朋輩の願いを未だに叶えて血の繋がりのないご母堂を世話しているとか…
すると朝餉の粥も量が増えます。
ですがその友人は亡き朋輩のご母堂の粥を増やし、漬物もつけました。
そうしたらご母堂は。
「我が子が認められたのでしょう。こんなに手厚くしてくれるなんて…有り難い」
疑わずに毎朝の粥を啜りました。
しかし明くる日。
朝餉が届かない時があったのです。
遺言を守った僧侶はその事を老師に問われ僧堂に籠もっていて朝餉を用意できなかったのです。
ご母堂は朝餉の無いのに腹を立てて、いつもの寺女に「息子はどうしているのですか!」そう言ってしまうのです。
寺女は居住まいを正して、
「貴方様のご子息は数年前流行り病でお亡くなりになられております。」
「そんな馬鹿な…近々では朝餉の量も増えている。出世したのでしょう?」
「それはご子息のご友人が変わらずに朝餉を用意していたのです。その善行を認められて粥を増やされたのです」
母親も尼、息子は僧侶、頻繁に会うことは出来ません…
ですがなんと悲しいすれ違いでしょう。
母親は息子の死も知らず、粥が増えた事を仏縁と思っていた。
その後に、老師との問答が済んだ友人が涙を流しながら粥を持ってきます。
「寺女からお聞きと思います。私がご子息の遺言として朝餉を用意していた者です。この度それを咎められ老師と対面することになり本日ご用意が出来ませんでした」
そうして伏して詫びるのです。
「私は愚かでした。尼だ僧だと理由をつけて実子の死迄数年知らなかったほうけもの…貴方様のご厚意を息子の昇進と勘違いした俗物です。これからどうして生きて行けましょうか…」
「ご母堂、おはやりなさるな。貴方様の無垢な祈りは届いております。太平を祈る脇でご子息の冥福を祈っては頂けないでしょうか…私は貴方のご子息と変わらずにお仕えしますので」
そのようなやり取りがあり、尼は寺に残り、息子の友人がいくら出世しようが朝餉を欠かさなかった…と言います。
皆様、家族や友人の顔を真っ直ぐに見て、真心で接した事はございますか?
毎日しろとは申しません。ですがこの世は一期一振、袖振り合うも多生の縁…
人は良し悪しありますが何かしらの縁を繋いでいることと思います。
ですからたまには周りの方を「意識」してみてほしいのです。
孝行したき時に親は居らず。
こんなに枯れ果てた世の中です。ほんの一滴の真心で十分です。
私からのお願いで御座います。
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