塩の逆襲

皆様は「塩」についてポジティブ、ネガティブ、どう感じますか?


塩は高血圧の引き金であり、生活習慣病の友達である…


そう思われますでしょうか?


他の話で少し述べていますが、塩は昔は兵士の給料として払われていた事もあります。


こんな話がありました。

大東亜戦争の敗戦。

ですがある種有名である戦陣訓に「生きて虜囚の辱めを受けず」とされており、頑強な精神力で敗戦後もゲリラ活動をしていた日本兵。

まことしやかに言われている事ですが、戦後日本人の旅行客が通りかかり、日本語を聞いた日本兵が。


「塩を分けてくれないか」


そう言って現れて、晴れて「復員」されたと言う話。


このニ点を挙げても人間、ひいては生命に「塩」は必要な物質であると言えます。


身体は塩に順応しています。体内に塩分が多くなれば水分を求めて体内濃度を正常にし、逆に塩が足りない状態ですと体内の水分を排出して体内濃度を正常にしようとします。

ですが水分を多量に排出してしまうので塩が足りないと脱水症状にもなります。


この体内バランスからしても生命には適量の塩は必要です。



中東地域等で家畜を放牧している人々は、家畜にも塩を与えます。


日本でも家畜を飼育している酪農家さんや肉を卸す農家さんならお分かりと思いますが、家畜には飼料、水…その他に塩を与えます。


草食の家畜だからと牧草や穀物と水だけでは駄目なのです。

中東のお話に戻りますが、彼等は家畜を財産として、食肉として売る事もありますし、冬場の食料として自家で潰して加工したりもします。


そこで塩を惜しんだか振る舞ったかがすぐに分かります。


塩を必要量接種していた家畜なら皮も丈夫で肉離れもよく、肉も骨も滋味豊かです。


そこで塩を惜しんだ家畜ですと、潰して皮を剥ごうにも皮が弱くちぎれて肉離れ悪く、更に肉質も劣悪。腸詰めにしようと腸を捌くと千切れて裂けて。そして大半が皮剥の時に骨がポキリと折れるのです。折れた骨はスカスカで骨粗鬆症になっています。


これは人間にも当てはまります。


私の知人に薄味を好む方がいらっしゃるのですが、年齢もありますが骨粗鬆症予備軍で、主治医からナトリウム錠剤を処方されていました。


身体は正直で、適度な塩分はカルシウムの吸収を正常にして骨を保ちます。


更に塩不足は脳にも悪影響を起こします。

「本物の塩」にはニガリのミネラルが含まれています。

その微量なミネラルが脳を保ちます。

ですので不安障害等の脳の機能不全にはその神経伝達を助けるミネラル含有の薬剤を処方されたりもします。


正に心身共に塩は必須と言えると思います。



では我々はどの様に塩分と付き合えば良いでしょうか?



日本には大まかに分けて三種類の塩があります。


それは精製の仕方が違うのです。


一番多いのはイオン交換


次に逆浸透膜


最後が天日


この三種類です。


一番多いイオン交換。これはとても安価に塩化ナトリウムを採取出来ます。

ですので戦後の国産塩はこれが主流でした。

今でも5キロ、10キロで五百円程で流通しています。

「塩」をどう定義するかによりますが、科学的な製法で塩化ナトリウムほぼ100%はこの製法です。


次に逆浸透膜です。

これはイオン交換と天日の中間とも言えます。

逆浸透膜は海水から真水を作る工程と関係した技術です。逆を言えば真水を海水から「多量に短時間に」分離させる事が出来て、濃縮海水を作り、それを釜で結晶化させます。

この方法は理論上は塩化ナトリウムとニガリのミネラルを残した塩を比較的ローコストで生産出来ます。


そして最後が天日です。

これは昔ながらの製法に一番近いです。海水を汲み上げて太陽光で水分を蒸発させてゆっくりと濃縮します。

そしてそのまま塩が出てくる迄干すか、釜で蒸発させてニガリを適度にきって作る方法です。


天日が昔ながらと申しましたが、本来日本でこの天日を行うのは「非効率」なのです。

日本は雨量が比較的多く、天日で露天でじっくり濃縮しても不意の雨で溶け出して…台無し…等となる可能性が高いのです。

ですから現代で天日の塩の名産地はオーストラリアやメキシコの大規模塩田が有名です。広大な開けた大地に重機で塩を積み上げられる。

日本とは規模が違います。

更にミネラルを「雑味」とされる事もあり、古来日本人が食していた適度なニガリの天日塩ではなく、ニガリを完全にきって塩化ナトリウム純度の高い物を高品質とするのが世界基準。

ですから日本に海外の天日塩を輸入して、それにわざわざニガリを足して日本好みにする製法もあります。


誤解を与えそうな事ですが、天日塩はどれもバランスが良く両手で歓迎とはいかず、海水に近いミネラルバランスの天日塩を求めるなら成分表示のしっかりした物を探すのがベターです。

天日塩は日本が長く親しんだ天然塩に近しい産物。体に合う人は多いと思いますが日本好みの天然塩は手間暇が掛かる「貴重品」でもあります。


更に日本では殆ど採取されませんが、大陸では海水からの製塩よりも採掘された「岩塩」が主流です。

岩塩はとても塩化ナトリウム純度の高いものですのでそれも純度を求める世界基準の一端になっています。



人は何故「塩」をこれ程求めるのか。


人間だけでなく、野生動物も地表に表れた塩や土を食べたりして塩分補給をしていますし、肉食動物は草食動物を狩り、一番塩分とミネラルの多い内臓を序列の高い個体が優先して食べます。


殆どの陸上生物は「体内」に「海」を持っています。


我々人間の体の六割以上が水分とされますが、それは体内に海水を持っている事を表すのです。

卵ではなく、母胎で育つ種が多い哺乳類。

母胎の「羊水」が海水に類似しているのも偶然ではないのです。



我々は現在科学を主軸とした文明を作っています。

そこで古い記録に頼って「安易な減塩」だけに目を向けては危ういと思います。


減塩の根拠の古い記録としても大東亜戦争の後の記録。

我々の体に刻まれた古い記録は数万年の蓄積です。

その体は塩分過敏でない人なら生きる為に塩を求める本能が備わっています。

百年に満たない不確かな減塩論文と数万年の遺伝子。


更に人は適度な塩分には舌が旨味を見出しますが、過剰な塩分には危険信号を送る仕組みも存在しています。

多量の塩分摂取が人命に関わる事は事実です。ですのでご自身がどの様な方針をとられるかは個々人の判断ではあります。



我々は今体内の健全な海原を探さねばならない時期に来ているのかも知れません。

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