第6話さかな諸々

昔話ですが。



昔の方々は沢山の魚に出会っています。


魚は海に囲まれた日本では馴染みの食材であり


更には身近なご近所さんでもありました



更には今ではもう見る事が出来ない魚も身近にいました。



身近ではないですが、河や沼のヌシとして名前が上がるカワタロウ等は名前を聞いた事もある方もいらっしゃると思います。

いわゆるネッシー的な存在で、今でも探している方がいらっしゃるとか。



では身近でありながら、今では殆ど見る事が出来なくなった魚も。



例えば



酒の中で泳ぐ金魚



刺し身で食べると魚になってしまうと言われた魚



この様に、一部の口伝えで存在する魚も実際に近代迄存在していました。



刺し身で食べると魚になってしまう魚。

これは私が今は亡き祖母から語られた話です。

その魚は実は現在でも釣り上げる事が出来る魚です。

ですが、何事も詳しくお話してしまうと、皆様の知的好奇心と言う楽しみを奪ってしまいますので。

あくまでもどうして魚になってしまうか…を、お話します。



その魚は川魚で、力強く巨体で、戦前や戦後には貴重なタンパク源でした。

その身は淡白でありながら様々な料理に馴染み、頑張って釣り上げますと、その喜びもひとしおで大ご馳走です。


早速傷む前にさばいて、半身は釣り上げた家が。

残り半身を分家でしたら本家へ。もしくは付き合いの深い村仲間に。

更には魚のかしらや骨も焼きますと、立派なアラ汁にもなりました。

そうして糧を分かち合うならわしもありました。


そして刺し身を食べる時は必ず一人では食べずに、家族や仲間が食べた者が魚にならない様に見張りました。


その刺し身を食べて暫くすると。

嘘のような話ですが。

まず、腕に黒いうろこ模様が浮き出てきます。

更に刺し身を食べ進めると…そのうろこ模様が体にも現れます。


そこで更に刺し身を食べてしまうと…


魚になってしまうと言うのです。


ですから、頃合いを見て、家族や仲間が止めに入ります。


まさに…魔味…の一つ。



有名な食通がホヤを魔味と表現されました。


そう言う意味では



河豚も魔味の一つかも知れませんね。


河豚は高価かもしれませんが、今でも食べることが出来ます。


昔は河豚を「てっぽう」と呼んだりもしました。


つまりは。


当たると死ぬ…


からです。


これは命がけでも食べたいと思わせてしまう河豚の魔力…魔力の味…魔味。


てっぽうにはこんな話もありますね。



昭和の帝が、下関にいらっしゃった時に、河豚が饗されました。


ですが、帝と卓を囲む者達が。


「お上がてっぽうで撃たれては不味いので、我々が頂きます」


そう言うが早いか様々な河豚料理を平らげていってしまいます。


帝は。


「河豚には毒があるのだぞ…?」


そう言って食べられない事を悔しがられた…と言うお話もあります。



何故急に魚の話をしたのか…



そうですね。



実は今まさに。



一人で先に述べた刺し身…魔味を食べようとしているからです。


この味の為なら魚になるのも悪くは…ないかな?



とか…思ってみたりします。



もしかしたら皆様のまわりにも、知る人ぞ知る魚に限らず、昔から大切にされている食材もあるかと思います。


この時代。気軽に旅行にもいけませんから。


少しだけ探して見るのも楽しみの一つかもしれないですね。

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