第4話一筆啓上



自分は一体どう生きているのか…どうか……色々な思い出が頭を流れていきます。


夜の考え事は良くない。それは、夜に考えると物事を悪く悪く考えてしまうからとも言われます。

私は夜型なのでその先人の言葉が間違っていないのだなぁ…と思う事もあります。



すると、夜の考え事を止めさせるかの如く、一人の人物にいきあたりました。



題名は「一筆啓上」



こちらはご存知の方も多いと思います。


そして、一筆啓上の筆頭格と言えるのは、徳川家康公に仕えた三人の奉行の一人。



鬼作左と呼ばれた本多重次


ではないでしょうか。



本多重次は興味深い話が伝わる方です。

まだ徳川家康公の領地が小さい時に民の訴え等を聞いたり、御触書を出したり…更には武辺者としても活躍され、体中は傷だらけで、手の指等は数本無くなっていたとか…



正に風貌はこの世に現われた赤鬼そのもの。


そして類まれな武辺者として鬼作左…と呼ばれました。


ですが、鬼の目にも涙。

本多重次はとても領民思いの奉行でした。


新しい御触書等が出されても、長ったらしい蚯蚓文字で読める領民が少ない。


そこは鬼作左。御触書にこう書きます。



「わるさをすると、さくざがしかるぞ」


ひらがなで簡潔に御触書を出しました。

領民達ははたして悪さをしなくなったそうです。

これは別に本多重次が領民に恐れられていた…訳ではないのです。

本多重次は殿の敵、民の敵、に対しては鬼の形相でしたが、殿の領民に対しては仏に仕えると云われる地獄の獄卒の鬼の様に道理を弁えて情け深い人でした。


ですから、さくざがしかるぞ…は、鬼作左は無体な事をする奉行ではないから鬼作左の言う事を聞こう…と領民が感じ入り、結果として争い事等が減りました。


鬼作左は「人気」と「信頼」の違いも弁えていたのです。

今の政の基になるお話ですね。



そうです。



一筆啓上です。



これも本多重次らしさが有ります。


戰場から自分の奥さんに手紙を出した話です。



「一筆啓上、火の用心、をせん泣かすな、馬肥やせ」



先の御触書の様な簡潔なふみですね。

何に注意をして、何を守るべきかがたったこの一行足らずに著されています。

ですから、今ではお手紙の見本の一つとされる事もあります。




そうなりますと本多重次は、ひいては人への接し方、果ては文章を著す見本と…




亡くなられた今現在でも、私達に対して八面六臂の活躍をして今でも「一筆啓上」をしていらっしゃいます。

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