第3話料理と文章

ふと思ったのですが。



料理と文章…似ていませんか?



りょうり


ぶんしょう


何処が似ているのか?


そう仰られるのはもっともです。


私が思いますに。りょうりもぶんしょうも人間が作ります。


でも、他にも人が作るものがあるじゃないか。



そうですね。



りょうりは味付けが人それぞれ違います。和食の料理人さんは薄口でも満足を味わって貰える様に注意を。中華の料理人さんなら、食べる人の五味を活発にさせて複雑な旨味や薬効を考えたり、フレンチの料理人さんなら、一週間近く前から十分に素材を揃え、最上のフォンをひいて様々な料理の尖りをとって楽しみを提供する様に考えたり…


すると、ぶんしょうも…表現や考え方、読みやすい表現をとるか…少しなぞなぞを加えるか…想像して頂くか、こちらから説明を加えるか…


りょうりとぶんしょうはそれだけ様々な素材や調味料、香辛料や見た目迄…細心の注意をはらった品…とも言えるのではないでしょうか。




昔の意外な人物にも料理を好んだ人が居ます。



その中で有名なのは、月の前立の大立者。


伊達政宗公。


伊達政宗公は、武士ならば、客に出す料理の一つも作れねば…面目も立たぬ。と言うお考えの方で。

千利休に茶湯を学び、後に織部に学んだ伊達者。

現在存在する懐石料理は茶湯での膳が始まりだ…と言う話もある様で…


茶湯だとまず、亭主が客を洒脱に招く…今で言うサロンの様な社交の場だったようです。

草庵で、密事を話したり、普段は口をきけない天下殿とも気軽に話したり出来る場所…だったとか。



話が横道に逸れました…



伊達政宗公は、長寿で、天下殿(殿下と天下は音が似ている)太閤殿下豊臣秀吉公に臣従した後に、征夷大将軍徳川家康公から二代秀忠公、三代家光公に渡って仕えたお方。


そして三代家光公が伊達政宗公の江戸上屋敷に下向になり、それを伊達政宗公はてづからの料理で持て成します。

ですが、そこは伊達政宗公。謀反を疑われてしまいます…

まず逸話に、台所の伊達政宗公の元に家光公の使いの物が茶入はこちらを使う様に…と茶の入った茶入を持ってきます。伊達政宗公が家光公を毒殺するのではないかとまわりの者が警戒して台所迄理由を付けて見に来ました。

伊達政宗公は、今は料理が肝腎要ゆえ、お後で賜ります。と、断りました。


そして自ら様々の料理をお作りになり、自ら料理の膳を家光公の元に運びます。


ですがそこは伊達政宗公。家光公のお付きの者が…お毒味致したく…と家光公の前で申します。

すると伊達政宗公は、天下を狙うならばもうとっくにやっておる!と。

つまりは…もう徳川の御世であるから毒など盛る意味が無いと。

すると家光公と共に招かれた大名が、仲立ちに入り、まずは私がお料理を頂きます…とおっしゃってその大名が先に食べる事で騒ぎは治まり。

とうの家光公は、伊達のおやじ殿はそんな事はしない…とずっと笑っていらっしゃった…


どうでしょう?

りょうり…面白く無いですか?

え?今りょうりの事を話していたの?

そうです。ぶんしょうをりょうりと致しました…





座布団…頂けますか?





ですが。

今、りょうりとぶんしょうは絶滅の危機に有ります。

昭和の料理界には現在メディアが取り上げる様な綺羅星な方々…ではなく、いぶし銀に黙々と技を伝える方々がいらっしゃいました…

その昭和の時代を生きた……昭和の料理界三羽烏と讃えられた料理人さんは…



今の若いものは…はじかみも…剥けぬ…


と嘆かれていました。

もう本物を作れる方々は高齢になられて…ずっと伝えられた技術がなくなってきています。

もう亡くなられた知人の料理人さんは昭和の三羽烏の一羽の直弟子で、様々な技術を寝る間も惜しんで学び、料理で山水を表現する迄になられました。

今は何でも買える時代。その方の修行時代のお話ですと、卵を上手く焼く為の修行も、卵も貴重なので湿らせて扱い辛くした布巾を卵の代わりとして巻く練習を反復なさったとか…


今は大きな会社や海外からの安価な品々が流れ込んで来ていて、料理界の技術はどんどんとなくなっていっています…


更には出汁等も化学調味料…今ではメディア受けの良いうま味調味料ですね。

これにとってかわられ。

昭和も終わりになる時の話ですが。中華料理の名店があり、料理長しか仕上げの工程が出来ず、料理長が休んでしまうと、料理の味が変わってしまい、食べたお客様が「今日は料理長はお休みなの?」と言われる程だったとか。

では…その料理長は失われた技術を持っていたのか…違います。


唯一


自分にしか開けられない鍵付きの引き出しを持っていました。



料理長がいない日に、他の料理人さんが、たまたま鍵が開いている引き出しを見付けて。


それを開けました。



引き出しの中には…



沢山の種類の化学調味料が入っていました。


はい。


もうその名店は、技を失っていたのです…




次に


ぶんしょうですが。



今は表現の自由と言われますが、使ってはいけない言葉や依頼者の誘導したい方向に話を結実させる等の注文があり…


そうすると、沢山の表現を知っているより


クライアントの条件を無条件に呑める表現者が一流となります。



ですので…ここでは申せませんが…昭和の方々…もしくはもっと時代を遡った方々が、当然の常識としていた言葉や文化が規制され…



便利とされるネットを利用する方々が増えたので…



様々な言葉もひっそりとこの世から消えていっています…



少しそれますが



亡くなられた、スティーブ・ジョブズ氏は自身のアイフォンを子供達が使うにあたり、制限を設けていたそうです。



それは、アイフォンやネット、紙媒体以外の電子書籍等を習慣的に利用すると



思考力…



読解力…



理解力…



様々なものが低下する…と報告があったそうです。



言うなれば、電子の世界は料理におけるうま味調味料と言えるかもしれません。

簡単に旨味を強く感じさせて舌の感覚を麻痺させて脳に快感を届けます。









皆様も、りょうりとぶんしょうは、質素な物でも大切にして伝えて頂きたいと、いめは思います。







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