第17話 地獄の国の復興

 危うくの所、トンタと仲間たちの活躍により危機を脱出し、地獄の国は極悪人の親分たちに乗っ取られずに済んだ。

 しかし、親分たちにより新生命誕生機を悪用されて多くの恐竜と怪鳥を誕生させられてしまい、地獄の国が破壊されてしまった。閻魔大王は恐竜や怪鳥の始末と地獄の国の復興についてどうしたら良いか頭を悩ませていた。


 閻魔大王はトンタ、所長、工場長、村長及びトンタの仲間たちを集めて対応策の打ち合わせを行った。


「トンタさん及び仲間の皆さんの活躍のお陰で、極悪人の親分に地獄の国は乗っ取られずに済みましたが、破壊された地獄の国の復興には多くの問題があり、是非トンタさんの力もお借りしたい」

 閻魔大王はトンタにお願いをし、話を続けた。

「極悪人の親分の残した恐竜や怪鳥をこのままにしておいたのでは、いつまた暴れられて地獄の国が更に破壊されてしまう恐れがある? そこで何か良い対応方法を皆さんに検討して頂きたい」

 閻魔大王は困った顔をして検討をお願いした。


「獰猛な恐竜や怪鳥は殺してしまった方が良いのではないですか?」

 村を破壊され、多くの村人を殺され、悔しくて恐竜たちを殺してやりたいと思っている村長が涙を流し提案した。

 その提案に皆、反論もせずただ黙って考えていた。


「恐竜や怪鳥は暴れないようにコントロールすることが出来ますので、彼らの持っている強力な力を破壊された地獄の国の復興に活用してはどうですか?」

 トンタは早く復興できるように恐竜たちを活用する事を提案した。

「獰猛な恐竜たちを本当にコントロール出来るのですか? これ以上の村人の犠牲は絶対に許せませんよ」

 村長は本当にコントロールが出来るのか疑問を感じていた。

「村を破壊し、村民を襲い殺したのは恐竜たちではありませんよ。親分たちが彼らをコントロールして行った事ですよ。今度は村長、貴方たちが良い事をやらせるようにコントロールすれば良いのですよ」

 トンタは恐竜たちが親分たちにコントロールされた事を強調した。

「恐竜たちに何が出来るのでしょうか?」

 村長の質問にトンタはにこやかな顔で言った。

「村長さんの村では家、用水路が壊され、田畑が荒らされましたね。家を建て直したり、用水路を作ったり、整備、補修したりするのに恐竜の強力な力を活用するのです」


 じっと聞いていた閻魔大王は微笑みながら提案した。

「トンタさんの提案は実に素晴らしいと思います。村を破壊され村民も犠牲になり、村長の言っている事も良く分かりますが、恐竜たちに対して悪い感情が入り過ぎているようなので、村長、一度テスト的にトンタさんの提案内容を実施してみてから決める事にしてはどうですか?」

「分かりました、そうします」

 村長は自分が感情的に走っていることを反省した。


「トンタさん、助けて貰ってばかりいて申し訳ないが、お願い出来ますかな?」

 閻魔大王は控えめに言うと、トンタは答えた。

「喜んでやらせてもらいます」

「有り難う。所長と工場長はトンタさんに協力してやって下さい」

 閻魔大王は深々と頭を下げて言った。

 トンタは工場長に怪鳥、恐竜の頭に埋め込んだ誘導装置用の操作コントロールボックスの製作をお願いした。


 第一更生村にて怪鳥、恐竜の活用テストが行われた。

 活用テストの内容は壊された家が撤去された所に新しく家を建築するための柱の運搬と柱の組み立てを行う事になった。

 ゴンが地上に待機させられている怪鳥の背中に乗った。

「これから、柱の運搬を行います」

 ゴンは大声で言うと、首から下げたコントロールボックスのレバーを操作した。

 怪鳥はゴンを乗せ舞い上がり森の中にある製材所に行き、柱の束を縛った縄を足で掴み吊り下げて戻って来ると建築現場の製材置場に置いた。

 すると全長三十五メートルの草食恐竜セイスモサウルスの背中にランが乗って首から下げたコントロールボックスのレバーを操作し出て来た。

「これから柱を組み立てます」

 ランは大声で言うと、セイスモサウルスは製材置場に行き長い首を下げて、柱の上部を縛った縄を口でくわえると首を上げ柱を吊下げると建築現場に行き、大工と連携して長い首を上下、左右に動かし、柱を組み上げた。その光景はセイスモサウルスが丁度クレーン車に見えた。

 重い柱を軽々と持ち上げ家の棟上げは見ている間に短時間に出来てしまった。


 恐竜活用テストを見ていた、閻魔大王、所長、工場長、村長は目を丸くしていた。

「これは素晴らしい! 是非、破壊された建物、用水路、道路、田畑の復興に活用して行きたいですね」

 閻魔大王が絶賛すると、所長、工場長、村長も同意し、怪鳥、恐竜の持っている強力な力を地獄の国の復興に活用する事になった。


 次の日より、地獄の宮殿、舌抜所、更生村、強制労働村の復興工事が始まった。

 怪鳥には郵便物、物資、材料等の空からの運搬を行った。肉食恐竜ティラノサウルスはブルドーザーの代わりに使い、シャベルや排土板を引かせて、治水のためのダム、溜め池、用水路、道路の整備を行った。肉食恐竜デイノニクスはトラクター変わりにし、鍬や排土板を引かせて、荒らされた田畑の整備、耕作を行った。草食恐竜セイスモサウルスはクレーンがわりにし、長尺物の運搬、組み立てを行った。


 トンタと仲間たちは空飛ぶオートバイに乗り各地域に出向き、怪鳥、恐竜の誘導コントロールボックスの操作指導を行った。

 指導を行うとその便利さに、恐竜を是非使いたいとの要求が多くなり、恐竜の数が足りなくなってきた。


 ゴンとランが困った顔をしてトンタの所に相談しに来た。

「ご主人、恐竜の操作指導に行くと恐竜を使いたいとの要求が多くあり、恐竜の頭数が足りなくなってきており困っています。何とかなりませんか?」

 そこで、トンタは血の池に誘導した恐竜を使う事を提案した。

「ご主人、それは良い案ですよ。直ぐに対応しましょうよ」

 ゴンとランは手を叩いて喜んでいた。


「ゴン、ラン、この案にはまだ問題があるのだよ。断崖絶壁に囲まれた血の池から恐竜をどのようにして引き上げるかまだ、分からないのだよ」

 トンタは苦笑いしていた。

「家の柱を立てた時と同じようにセイスモサウルスを使いましょうよ」

 得意顔で鼻の孔を膨らませてランが提案した。


「でも、血の池には体重の重いティラノサウルスやセイスモサウルスがいるのでセイスモサウルス一頭では引き上げるのは無理だよ」

 ゴンがランの案を否定すると、ランが更に提案した。

「じゃあ、セイスモサウルスを何頭でも使えば無理じゃないよ。大丈夫だよ」


 二人のやり取りを聞いていたトンタは笑顔で提案した。

「ゴンもランも良い案を出してくれたよ。おかげで二人の案を入れた良い案が思いついたよ」

「中央に滑車を取り付けた十メートルの太い丸太をセイスモサウルス四頭の首の上部に取り付け、滑車に太い縄を通し、縄の一端を血の池にいる恐竜の胴体に巻き付け、縄のもう一端を五頭のティラノサウルスで引っ張らせるのさ」

「凄い! そうだよ、それは良い考えだよ」

 チョロがトンタの肩で手を叩き、大声を出して叫んだ。

「それが良いよ! それが良いよ!」

 仲間が皆、口を揃えて言った。


 直ぐに、血の池にいる恐竜をこの方法で引き上げて見ると、上手い具合に行ったので、次々に引き上げて全ての恐竜を陸に上げることが出来た。

 引き上げた恐竜は、要求のある地域に届けられた。

 恐竜の強力な力により地獄の国の復興工事が急ピッチで進められるようになると共に、地域の人々に余裕が出来るようになり、復興工事に改善を取り入れ復興前の地獄の国より更に素晴らしい地獄の国に生まれ変わって行った


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