第15話 怪鳥の出現

 その頃、新生命誕生工場では、親分がイライラし子分たちに怒鳴り散らしていた。

 「トンタの野郎たちは地上から消えてしまったぞ! 何処に行ったのだ? お前たちには捜せないのか? いくら閻魔大王、所長、工場長、村長を捕まえても奴が生きているからには、いつ、我々がどうなるかわからん、早く捜し出せ!」


 親分たちは新生命誕生機で誕生させた恐竜の頭に誘導装置を、額にはカメラを埋め込み、現場の状況をディスプレイにて把握し、コンピューター制御により恐竜をコントロールしていた。

 その恐竜を地獄の宮殿、舌抜所、更生村、強制労働村に奇襲きしゅうさせて、閻魔大王、所長、工場長、村長を始め戦闘隊員及び強制労働村の極悪人たちを捕らえ、新生命誕生工場の檻に入れ捕虜にしていた。強制労働村の極悪人たちは親分が面接し必要な者のみ子分にし、それ以外は恐竜の檻に入れ餌にしてしまった。


「親分、地上から消えちまったトンタの野郎たちを見つけるには地上の恐竜からだけでなく、空から捜す必要がありますぜ。 戦闘能力があり空からも監視できる怪鳥も用意しましょうや」

 恐竜制御担当の子分が言うと、親分はニヤリと笑った。

「それは良い考えだ! いますぐ対応するのだ、もたもたしているとトンタの野郎がいつ攻めて来るか分からんぞ」

「実は、親分がそう言うだろうと思い、もう用意してありますぜ。それはすげえやつで、親分が見たら痺れますぜ」

「それはでかした。 直ぐに見せろ!」

 親分は興奮し、子分に連れられ怪鳥の檻の前に来た。


「グエーッ、グエーッ」

 突然、気味の悪い、吐き気を催す叫び声が耳に入って来た。

「な、何だ! この叫び声は?」

「怪鳥の叫び声でっせ」

「ずいぶんと気味の悪い叫び声だな。 本当に凄い奴なのだろうな?」

「そりゃあもう凄い奴でっせ!」

 親分は叫び声の聞こえた檻の上部を見上げた。


 檻の上部には、左右に渡した鉄パイプがあり、そのパイプには黒い大きな塊が幾つも連なってぶら下がっていた。それは丁度、黒色の大きなビニール袋がぶら下がっている様に見えた。

「おい!ふざけやがって! 怪鳥なんていないじゃ無いか?」

 親分は怒って、怒鳴りつけた。

「親分、よく見て下さいよ」

 子分は檻の鉄格子を指の裏の第二関節部で二度ほど叩いた。

 黒い塊が動き出し、怪鳥が頭を下に出した。

 怪鳥は真っ黒な色をした身体で、身体に似合わない大きなくちばしはオレンジ色をしており、頭にはとさかがあり、黒とオレンジのまだら模様をしていた。


 子分は拳銃を取り出すと、天井に向かって撃った。

「バアーン」

「グエーッ、グエーッ」

 怪鳥は驚き大きな叫び声をあげ、翼を大きく広げた。 大きさは七メートル程あり迫力があった。

 子分は更に、もう一発撃った。

「バアーン」

 怪鳥は翼をばたつかせ、下の段のパイプに滑空しとまると、嘴を大きく開きオレンジ色の火を吐いた。

「ゴォーーー」

「うおーつ! 脅かすなよ」

 親分は驚き、飛び上がった。

「どうです、火を吐き、戦闘能力のある優れものでしょう」

「これは凄い! どうやって作ったのだ?」

「この怪鳥は翼竜のプテラノドンをベースにして口から火を吐くように改良した傑作でありますぜ。 あとは頭に誘導装置、額にカメラを取り付ければ完成で、二日後に飛ばす事が出来ますぜ」

「分かった! 二日後の朝早く出撃させろ」

 いつの間にか親分は上機嫌に成っていた。




 一方、トンタと仲間たちは次の日も、強制労働村の恐竜を血の池に誘導し、最後の一頭を誘導し終えたのは、誘導し始めてから二日目の夕暮れ時であった。

 血の池にある島の平坦な草むらに座り込み休んでいると、竜がテンを背中に乗せ、更生村の恐竜を血の池に誘導するのを終え、島の上空にやって来てトンタと仲間たちを見つけると「グォーツ」と叫び声を上げ、口から火を吐き辺りを明るくし、ゆっくりと降りてきた。

 トンタと仲間たちは素早く駆け寄ると、竜とテンに抱きつき喜び合っていた。


「あれっ! トンタさんは身体が大きくなり? ボデイスーツにマントを着け格好が良くなりましたね?」

 テンが不思議そうな顔をして言うと。

「実は、僕もそう思って驚いていたのだよ」

 竜も不思議そうな顔をしていた。

「天国の国王様か頂いたボデイスーツを着て、トンターマンに変身したのだよ」

 ゴン、ラン、ジョイは口をそろえて笑顔で言ったが、竜もテンも言っている事が理解できず、更に不思議そうな顔をしていた。

「ごめん!ごめん! 竜にもテンにも言ってなかったよね、説明するよ」

 トンタは天国の国王が作ってくれたトンターマン装備品について説明した。


「そうだったのかー! 皆があまりにも格好よくなったので驚いていたのだよ」

 竜とテンが笑いながら言うと、トンタと仲間たちはその気になり、顔を上げ、胸を張り、両手を振って歩き回った。その格好に皆で顔を見合わせて大笑いしていた。


 今夜は皆、久しぶりに晴れやかな気分となり、血の池の島での宴会となり、夜遅くまで歌声と、笑い声が聞こえていた。 血の池では多くの恐竜が泳ぎ回り、叫び声を上げ、更ににぎやかさを増していた。


 翌日、親分を捕らえるため、朝早く血の池を出発し新生命誕生工場に向かった。 トンタを先頭にゴン、ラン、ジョイ、チョロ、そして最後部にテンを背に乗せた竜が縦一列となり大空を飛んだ。ピイコは偵察するためトンタの遥か前方を飛んでいた。

 眼下に第一更生村が見えて来た。恐竜は見当たらず、村人が溜池の北の橋の近くの掘りを埋め溜池に水を溜めていた。村人は我々を見上げ手を振っていた。


 突然、トンタのレーダーメットのレーダー探知機に異常物体の情報が入ったので全員に連絡した。

「全員に連絡する。 前方二十キロメートル付近で上空二千メートルにこちらに向かって来る二十ほどの物体有り、注意せよ」

 仲間は上空と聞いて「何だろう?」と困惑していた。 ゴンがトンタに通信した。

「ご主人、一体何が飛んで来るのですか? どう対処するか指示願います」

 トンタも分からず困っていた。

「物体不明のため対応指示できません。ピイコちゃん至急不明物体を目視確認し、報告願います」

「アイ・アイ・サー 至急偵察をしてきます」

 電磁推進機をハイレンジにするとピイコは一瞬にして見えなくなった。

 直ぐに報告が入って来た。

「報告します、異常物体は馬鹿でかい怪鳥が二十頭です。 口から火を吐きますので二百メートル以内には入らないよう気を付けて下さい」

「えっ! 今度は火を吐く怪鳥ですか? 大変だ」

 ジョイが叫ぶと、チョロが嘆いた。

「まったく、極悪人の親分は火を吐く怪鳥を誕生させちまったよ。 どう対応すればよいのかなあ?」

 直ぐに、トンタより指示が入った。

「皆に連絡する。 怪鳥の二百メートル以内には入らないで下さい。怪鳥は大きいので急旋回は出来ないと思われます? 素早く後方に出て、急旋回しオートバイのレーザー銃で攻撃します。 ミサイルはロックし絶対に使用しないこと」

「それでは、横一列になり怪鳥を待ち受けます」

 トンタの指示で皆、横一列に並び変え飛行した。 前方に同じ飛行高度で飛んで来る怪鳥がはっきりと見えて来た。怪鳥は思っていたよりもだいぶ大きかった。


「怪鳥接近、指示があるまで各自の間隔を開け怪鳥めがけて直進せよ」

「グエーッ、グエーッ」

 怪鳥は大きな叫びを上げ、鋭い目でこちらを睨み近づいて来た。

 四百メートル程に近づいた。その時。

「ゴォーーーーーー」

 怪鳥は大きな嘴を開くと、勢いよくオレンジ色の火を吐いた。 炎で怪鳥の姿が見えなくなってしまい、仲間たちは何時、どの様な動きをすればよいか迷っていた時、トンタより指示が入った。

「全員、直ちに急降下せよ!」

 トンタ及び仲間たちは素早くハンドルを前に倒した。オートバイは急激に降下し、怪鳥の下側に入り込んだ。怪鳥はそれに追ってこれず、そのままの方向で上空を通り過ぎようとした時、トンタより指示が入った。

「急上昇! 急上昇せよ!」

「急上昇しながら反転し攻撃せよ!」

 急上昇し怪鳥の後方に出ながら怪鳥の飛行方向に大きく縦の円を描くように空中で回転させ、オートバイが逆さの状態でレーザー銃を怪鳥に各自二発を発射した。怪鳥十二頭に白いレーザ光線が走り命中し、きりもみ状態で落下して行った。

「ヤッター! 怪鳥二頭撃沈。これから他の怪鳥を追跡し攻撃します」

 ゴンから通信が入ったが、直ぐにトンタは指示を出した。

「攻撃は中止する! これから新生命誕生工場に全速力で直行し極悪人の親分と仲間を捕らえに行きます」

 新生命体を次々に誕生させ絶え間なく攻撃して来る敵と全て対戦していたら収拾がつかなくなる、早く元を絶たねばとトンタは判断した。

「攻撃は中止です。但し追跡してくる怪鳥との距離が五百メートル以内に成ったら独自の判断で対戦して下さい。それまでは全速力で新生命誕生工場に向かって下さい」


 新生命誕生工場に近づくにつれて、地上は恐竜、空には怪鳥が次々現れ、叫び声と吐く火炎で激烈地帯となっていた。

 攻撃してくる怪鳥には竜の素早い動きで翻弄ほんろうさせて、口から吐く火炎で倒してもらい、トンタと仲間たちは新生命誕生工場に向かった。

 その時

「助けてー! 危ないよー!」

 ジョイの悲鳴が聞こえた。 トンタは斜め前方を見るとジョイの後方二百五十メートル程に怪鳥が接近していた。 ここで怪鳥が火を吐いたら危ない、トンタがジョイに指示を叫んだ。

「ジョイ! 急旋回だ! 急旋回するのだ」

 ジョイは急旋回したが怪鳥も旋回しピッタリと離れずに追って来た。

「振り切ることが出来ないよー!」

 トンタはレイザー銃を発射しようと思ったが、怪鳥は左右に揺動し、ジョイに当たる恐れがあり発射出来なかった。

「ジョイ! 渓谷に逃げろ、そこでお前の運転テクニックを使え」

 ジョイは狭い渓谷に入った。その後を怪鳥が追い、怪鳥をトンタが追った。ジョイは狭い渓谷を左右、上下に巧みなテクニックで飛行したが怪鳥もピツタリと離れずじりじりと距離を詰めて来た。

「ご主人! もう駄目だよー」

「ジョイ頑張れ! もう少し先に切り立った壁がある、渓谷は右に折れるが、右に折れず、切り立った壁に出来るだけ接近し壁に沿って急上昇するのだ。 お前には出来る、それだけのテクニックがある」

 ジョイは加速グリップをエンドに回しフルスロットルレンジにした。オートバイは加速され時速五百キロメートルで飛んだ。切り立った壁は見る見る近付き大きくなって来た。

「まだだ、まだだ、今だ!」

 ジョイは自分で自分自身に指示を出し、叫ぶとハンドルを一杯に引き寄せた。切り立った壁から三十メータ程手前から急カーブして上昇していった。

「あっ! 衝突する?」

 トンタは心の中で叫んだが、ジョイのオートバイは壁との距離が僅か二メートルの間隔を開け通過した。

 その時

「ドーン」

「グギャーア」

 怪鳥はジョイに付いて行けず、急上昇中に切り立った壁に激突し、最後の叫びを上げて渓谷深くに落ちて行った。

 ジョイとトンタは大きく空中を一回転し、渓谷を抜け戦列に戻った。

「ジョイ、良くやったなー、凄かったぞー」

 トンタはジョイにVサインを送り褒めた。ジョイは喜びVサインを出していた。


 それからもトンタと仲間たちは襲って来る怪鳥と戦い、怪鳥に打ち勝ち、ようやく新生命誕生工場の真上に来ることが出来た。



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