第7話 地獄の国へ出発
地球救出号は地獄の国に入るために、黄泉の世界の入り口に向けて出発した。
黄泉の世界の中には天国の国と地獄の国があり、地球の人間等が亡くなると黄泉の世界の入り口に入り、そこで地球での経歴を調べられ、天国の国へ行くか、地獄の国へ行くか選別される。 そのため、地獄の国に入るためには、よみの世界の入り口から入らなければならかった。
爺ちゃんは青白い顔をして、落ち着きがなく、キョロキョロ、ソワソワしながら、ヘルパー艦長と話をしていた。
「国王様も無茶な事をさせるものだのー、トンタ達を地獄に放り出すなんて、死に行くようなものだ、何とかならぬものかのー、艦長」
爺ちゃんは話している途中から涙を流し、泣き声で艦長に助けを求めた。
「国王様も地球を救出するため、トンタ殿を早く、トンターマンに養成しなければならず、きっと苦しんでおられての決断でしょう。 トンタ殿の生還を信じようではありませんか」
艦長は爺ちゃんの背中をやさしく摩り、なだめていた。
そんなこととは知らず、トンタ達は正義感に燃え、早くトンターマンになり地球を救出するのだと意気込み、実践訓練に必要な物をチェックし、医薬品等の小物品をリュックサックに入れ、飲料水、食料等、重くて大きな物を馬のクロとアカの二頭に積んでいた。
服装はダークグリーンの
地球救出号は真っ黒な入道雲のようなガス層の中に入って行った。窓の外を見ると暗闇の中に数えきれないほどの、青白く光る火の玉が白くて長い尾を引いて飛んでいた。
「ご主人、あの気味の悪い青白く光る火の玉は何ですか?」
不思議そうな顔をしてゴンがトンタに尋ねた。
「何だろう? 僕にも分からないよ」
それを聞いていた、爺ちゃんが涙を拭き、ふだんの顔になり、トンタの背中を摩りながら説明した。
「あの青白い火の玉はのー、亡くなった人や動物の魂じゃ、あの魂は黄泉の世界の入り口で、亡くなる前の姿に戻り、天国と地獄に別れて行くのじゃ」
「これからお前たちの行く地獄は、生きていた時に悪いことをした人たちが行く危険な所じゃ、挫けるでないぞ、爺ちゃんも天国から応援しとるからな」
トンタは心配そうな顔をした爺ちゃんの手をとり、笑顔で答えた。
「爺ちゃん、大丈夫だよ、僕たちは必ず生還するから待っていてね」
地球救出号は黄泉の世界の入り口の広場に静かに着陸した。
そこは不気味に暗く、広場の先に長い橋が架かっていた。
橋にはところどころ灯篭が掛かっていたが、霧でかすみ橋の先は何も見えなかった。
青白い火の玉は橋の手前の広場に降り、人間、犬、ネコ等の亡くなる前の姿に戻り橋を渡って行った。
トンタたちは爺ちゃん、艦長に見送られ橋の手元に来た。橋には三途の橋と書かれており、橋の遥か下に三途の川が流れていた。
振り返ると、爺ちゃんが身を乗り出して手をちぎれるばかりに振っいた。
トンタが真剣な顔で、身震いすると仲間に強い口調で言った。
「さあ、行くぞ。 これから何が起こるか分からない、気を引き締めろ!」
ゴンとランは怖くないのか元気に答えた。
「アイアイサー」
ジョイ、チョロ、ピイコはこれから恐ろしい地獄に行くと思うと怖くて声がでず、震えながらうなずいていた。
三途の橋を渡り始めると濡れるほどではないが霧雨が降っており、ひんやりとした風が三途の川より噴き上げ、頬に当たった。 その風は時より風向きを変えた。
その時、前方の黄泉の世界の方から声が聞こえた。
「早くこっちに来いよー! 早くこっちに来いよー!」
風向きが変わり、後方の現生の方から声が聞こえた。
「死なないでー! 戻って来てー! 行っては駄目だよー!」
橋を渡って行く者は皆、下を向いて誰一人話をせずに歩いていた。 時々、現世側に向きを変え、引き返して行く者もいたが、ほとんどの者は橋を渡って行った。
異様な雰囲気に気の弱いジョイは身震いしていた。
「なんだか気味が悪いよなあー、もう家に帰りたくなったよ」
誰もが返答しなかった。 ジョイは、ばつが悪そうに後ろから付いて来た。
橋は一キロメートル程あった。 渡り終えると橋を完全に塞ぎ建物が建つており、間口二十メートルはあるかと思われる程の、大きな入り口が設けられており、入り口上部に取り付けられた板に検問所と書かれてあった。
入り口を入ると人が一人通過できる、二十列ほどに区分けされた通路があり、一定の間隔で入れるような構造になっていた。
それぞれの通路の上部及び通路の手摺に電子カメラが設置されており、通過時に顔、指紋などの個人情報を自動的に入手し、コンピューター処理にて現世での履歴を調査していた。
検問所の建物を出ると石を積み上げた堅牢な建物があり、分別所と書かれてあった。中に入ると鉄格子の通路が二十列程あり検問所の通路と接続されていた。
通路は途中から二股に別れ、上方に吸い上げられると地獄へ、真っ直ぐ行くと天国と分けられる強制分別装置になっていた。
現世の履歴により分別され、上方に吸い上げられ地獄にいく人は「ちくしょう! ちくしょう!」と泣き叫んでいた。
泣き叫ぶ人を横目で見ながら、トンタは仲間達と馬のクロとアカを引き連れて地獄の国に入るため、分別所の事務所に歩いていった。
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