第6話 魔法
6話 魔法
俺達は次の日から武器を扱う練習を始めた。
俺は短剣だがルカは難易度の高そうな魔法の練習だ。
完璧に覚えるには二ヶ月かかるらしいが出来るだけ早く使えるようになりたいようで次の日から早速依頼での練習を始めた。
「どうだルカ、いけそうか?」
「出来るか分かりませんが取り敢えずやってみます」
もし失敗しても俺がゴブリンを倒せばそれで良い。
「ではいきます……」
ルカは杖を構えて魔法を放つ。
「
すると鋭い風がゴブリンの腕めがけて飛んでいき、腕を刎ねた。
魔法ってもっと「○○○!!」って叫ぶイメージがあったんだがルカのようにひっそりと言うのもいいな。
なんかクールでカッコいい。
……てかなんかもう魔法使えてなかった?
「ルカ今のは…」
「まだまだですね…。もう一度やってみます…」
「そ、そうか」
ルカは腕のなくなったゴブリンに再度魔法を放つ。
そして今度は首を刎ねた。
ルカは自分に厳しい。
そうだとしても魔法を使うのが初めてでゴブリンの腕を刎ね飛ばす威力の魔法を放てるのは流石に才能があると言えるだろう。
魔法書の店の店主が言うには初級魔法は完璧に覚えたとしても初級は初級なので相手に少し傷を負わせるような威力しか出せないと言っていた。
しかしルカは初級魔法でしかも魔法を使うのが初めてであの威力だ。
俺の興味本位で魔法をやらせてみたはいいものの才能が完全に開花したな。
初級魔法を全力で一回使うのに消費する魔力の量は15。
少し絞れば5くらいまで抑えられる。
魔法特化のステータスにするには【魔力量】を必然的に上げる必要があるな。
「ルカ、レベルは上がったか?」
「はい」
俺はルカに獲得したSPを【魔力量】に振ることをオススメした。
ルカは快く【魔力量】にSPを振ってくれた。
「ルカは魔法の才能がある。だからレベルを上げて【魔力量】を多くしよう」
「私に魔法の才能が?そうなんですか…」
俺達はレベルを上げる為に森の奥地へと進んだ。
森の奥へと進むほどゴブリンの数が多くなった。
この森には討伐難易度が高い魔物はいないらしいので冒険者になったばかりの人たちはよくここに来てゴブリン討伐をするようだ。
すると俺達は目の前に洞窟を見つけた。
その洞窟を見張っていると一匹のゴブリンがその中に入って行った。
それに続き一匹、二匹と洞窟へ入って行った。
恐らくあそこで暮らしているのだろう。
ルカのレベル上げにはもってこいの穴場だ。
「ルカ、行こう」
「はい、分かりました」
俺達は洞窟の中へと入って行った。
洞窟の中は遅い道が続いていた。
足跡を追って行くと細い道を抜け広々とした空間に出た。
そして俺達は異変に気付いた。
「おい、何だこの数は……」
「……」
目の前には100を優に超える数のゴブリンがいた。
その光景はまさに異様そのものであった。
流石にこれは一旦引いたほうがかもな。
相手がゴブリンだからといってこの数で責められたら対処しきれないだろうし。
「ルカ、これは一旦引いたほうが良さそうだ」
「私にやらせてください」
「ん?ルカ…それはどういうことだ?」
「私の魔法なら広範囲の攻撃をすることが出来るはずです」
「なるほどな」
まあ相手は大量のゴブリンだがルカの魔法の威力には耐えられないだろう。
もし危なかったらすぐに逃げれば問題ないはず。
「分かった。ルカ頼んだ」
「はい」
ルカは杖を構えると魔力を多く込め魔法を放出する。
「
突如発生した水球が弾け水の弾丸がゴブリン達に目掛けて放たれる。
凄まじい速度の弾丸はゴブリンに接触すると身体を弾き飛ばした。
「す、凄い……」
これが凄さか…。
やっぱり風より水とかの方が迫力があるな。
より異世界感がある。
ていうか全滅しそうなんだが。
百匹以上いたはずのゴブリン達は既に姿を消していた。
辺りに広がるのは血の海だった。
「やったのか…?」
「いえ、まだ数匹残っているようです」
ルカが見ている方向に視線を向けると暗くてよく見えないが数匹のゴブリンの影が見えた。
あの魔法の中で生き残っているとは運がいいな奴め。
しかし俺はそのゴブリンの異様な気配に違和感を覚えた。
何だあの姿は?
普通のゴブリンに比べて肌が少し黒く褐色している。
そして目も充血していて今にも血が出そうだ。
俺はあのゴブリン達に見覚えがあった。
それは俺が初めて出会って初めて倒したゴブリンと同じだった。
「おい、アイツ……」
「どうやら上位個体のようですね」
アイツ上位個体だったのか。
だが異世界初心者の俺ですら倒せたんだからルカに倒せないわけはない。
「ルカ、倒せるか?」
「正直勝てる気がしませんがですがやってみます」
謙遜がすごいな。
あの威力なら楽勝だろう。
相手は四匹、全て上位個体とやらだが問題はないだろう。
「もう一度…
先程と同様の威力で弾丸がゴブリンに触れる。
しかしその凄まじいほどの速さの弾丸を瞬時に回避した。
「そんな……」
「ルカ大丈夫だ。もう一度やろう」
当たったら倒せるはずだ。
「
バタン。
ルカは魔力切れにより倒れてしまった。
「すみません……」
「安心しろ。後はどうにかするから」
「ライト様…逃げて下さい…」
「お前を置いて逃げるわけには行かないだろ。大丈夫だ。こんなやつら直ぐ倒すから」
相手はたかがゴブリンだ。
上位個体なのかもしれないがあの時より俺は強くなってるから四匹でも倒せる。
俺は一気にゴブリンに近づき短剣で首を掻き切る。
更にもう一匹。
俺がもう一匹に近づこうとすると一匹のゴブリンが片方のゴブリンを喰らった。
おいおい共喰いかよ…。
今のうちにやるしかない。
俺はゴブリンが捕食している隙に首を切ろうと近づくがその攻撃は回避された。
「なっ!」
そしてゴブリンは俺の背後に迫る。
ゴブリンの鋭い爪が俺の背中に突き刺さる直前、俺は体の軸をずらし頭に蹴りを入れた。
するとゴブリンは俺が以前に頭に石を当てた時と同様に意識が朦朧としていた。
恐らく弱点は頭だ。
身体と見合わない大きさの頭はゴブリンにとっての弱点だ。
そして俺は今度こそ首を掻き切った。
「倒せた……」
今度からは安易に攻撃を仕掛けるのはやめよう。
俺はルカを抱き抱え洞窟を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます