第5話 初依頼


 「取り敢えず何か安全な依頼を受けよう」


 俺達は依頼の書かれた紙が貼ってあるボードへと向かった。

 沢山の依頼がある中で一番簡単そうで安全そうな依頼が薬草採集だった。


「この薬草採集なんかいいんじゃないか?安全そうだしな」


 「そうですね」


 俺達は依頼の書かれた紙を受付へ持っていき街を出た。


 

 俺達は街の近郊の森へと足を運んだ。

 

 「ここだな。一応薬草の特徴を聞いたけど見つけ出すのが難しいらしいぞ」


 薬草の特徴はチクチクとした葉の形をしていて鼻につくような匂いを放っているらしい。


 「手分けして探そうか。ここの森に魔物は出ないらしいから安全だと思う」


 「分かりました。では後ほど」


 ルカと離れてから2時間ほど経った。

 俺が採集した薬草の量はと言うと……。

 まだ一つも見つけることができていなかった。


 全然っ見つからないじゃないか〜!!

 木の根元や木の葉の下を探したが全く見つからないんだが……。

 本当にこの森にあるのか?

 それすらも怪しくなるくらい見つからない。


 俺は先程決めた集合場所に向かった。

 ルカは既に集合場所に着いていた。

 両手には何も持っていなかったのでルカも見つからなかったのかと思ったがそれは早とちりだった。


 「俺は薬草を見つけられなかったがルカもか?」

 

 「私は少しですが見つけました」


 少しか。

 冒険者になったばっかりで少しでも見つけられたら十分だろう。

 俺は一切見つける事が出来なかったからな。


 するとルカは俺の方向からは見えなかったが木の裏から大量の薬草を出してきた。


 おいおい…。

 なんでこんなに集まってるんだよ…。

 こんなのどうやってやったんだよ。

 

 「ルカ…こんなにどうしたんだ?」


 「実は私、村にいた時によく薬草を取りに行ってたんです。母が医者だったので」


 にしてもこの量は凄すぎだろ。

 もしかして俺、壊滅的に薬草採集のセンスがない?

 

 「そ、それじゃこれをギルドにて納品しようか……」




 ギルドで納品を済ませた俺達はある店へと向かっていた。


 「本当に俺が報酬を貰って良かったのか?」


 「勿論です」


 本当に自分が不甲斐ないな。

 もしかして俺これからもルカに養ってもらわなきゃいけないのか?

 それはいよいよ問題になってくるぞ……。

 

 「着きましたよ」


 俺が自分の不甲斐なさを感じていると店に着いたようだ。


 俺達が向かっていたのは武器屋だ。

 看板には『グルの武器工房』と書かれていた。


 中に入ると壁には多くの鎧と武器が掛けられていた。

 

 「すみません、誰かいらっしゃいますか?」


 応答は無かった。


 「誰もいないのでしょうか…」

 

 店員を探す為に店の奥へと向かったがどこにも居なかった。


 「もしかして無人の店か?でも"グルの"って書いてあるよな」


 「…ふぁ〜。呼びましたか…?」


 俺の腰掛けていた机の下から一人の少女が起き上がった。


 「……もしかしてグルさんですか?」


 「はい。私がグルです」


 俺の背丈の半分ほどの身長の少女はグルと名乗った。


 「武器を買いたいんですが」


 「ご要望は何かありますか?」


 「そうですね…」


 ごつい剣なんか使えないしな。

 どうせなら回避をするんだから起動力に長けた武器がいいな。


 「動きやすい武器は何かありますか?」


 「動きやすい武器だと短剣なんかがオススメですよ」


 短剣か。

 確かに動きやすいな。

 

 「それじゃあ短剣でお願いします」


 「其方のお嬢さんは?」


 「私は……」


 「遠慮なく言っていいぞ。さっきの報酬は全てルカの手柄なんだからな」


 「そうですね…。ライト様が前衛で戦うのなら私は邪魔にならないような武器がいいです」


 「それなら魔法用の杖か弓なんてどうですか?」


 魔法の杖だって?

 それは見てみたい。


 「魔法の杖なんてどうだ?」


 「ですが…私は魔法なんて使うことが出来ません…」


 「それは心配しなくていいですよ。帰りに隣のお店に寄ってみてください。魔法書が売られていますから」


 「分かりました」


 「ではどれにするか選んでください」


 俺はデザインはシンプルだが切れ味が良さそうな短剣を選びルカは軽くて構えやすい長めの杖を選んだ。


 「ありがとうございましたー」


 店を出て直ぐ隣の店に入り魔法書を勝ってから帰った。


 買ったのは初級魔法の書と書かれた魔法書だ。

 店主曰いわく初級の魔法書を完璧に覚えるのは二ヶ月程掛かるようだ。

 これからルカの魔法の練習に付き合うしかないな。

 俺ももっと強くなる為にレベルを上げないとな。


 

 次の日俺は新たな依頼を受けに行った。

 今日はゴブリンの討伐だ。

 ゴブリンは群れで行動するらしいが稀に逸れゴブリンがいるようだ。

 俺が以前に戦ったゴブリンはその逸れゴブリンだろう。

 レベルも上がったし腕試しだ。

 Fランクの依頼は依頼を失敗しても特に罰は発生しない。

 危なくなったら逃げればいい。

 

 ちなみにルカは用事があるようで今朝どこかへ出て行ったのだ。

 だから今日はソロだ。


 目的地の森へ着くと早速発見した。

 数は三匹。

 茂みから発見したのでこちらを見つけることは出来ないだろう。

 以前見たゴブリンとは少し違うか?

 以前のゴブリンはもう少し小さくて肌の色が少し黒く褐色していた気がするがまあいいか。


 俺は深呼吸をし、茂みから素早く出た瞬間腰にかけてあった短剣よりを抜き、全てのゴブリンの首を切り落とした。


 「フーッ、案外簡単だな。これもレベルの上がったおかげだな。さてとレベルはどのくらい上がったかな」


 ステータスを開くがレベルは一切上がっていなかった。

 

 前は一体倒しただけで44レベルも上がったはずだ。

 レベルが上がるほど上がりにくくなるのはテンプレだが1レベルも上がらないなんてそんな事はないだろ。


 その後もゴブリンを倒し続けたがレベルが上がる事はなかった。

 そしてギルドに戻りゴブリンの耳を切り取りギルドにて納品をし、宿に戻った。

 

 

 


 

 


 


 

 

 

 

 


 

 

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