第4話 冒険者登録


 ※少し遡ったところから始まります。


 私は走り続けた。

 母の言葉をだけを想って走り続けた。


 『――逃げなさい!生きて!』


 その言葉だけがいつでも頭を駆け巡っていた。

 

 父が目の前で死ぬ姿を見て、母が真後ろで痛み苦しむ声が聞こえたのが脳裏にこびり付いていた。

 そして疲れ果てた時、私はふと思った。


 私って何の為に生きてるのだろう……。

 生きるってどうやって生きればいいんだろう……。


 お腹が軋むような飢餓感。

 体力が限界に達したことによる疲労感と倦怠感。

 

 あの時の私は生きる意味を失っていた。

 

 それから三日間、その場に止まった。

 これ以上歩き続けても体力が削られるだけ。

 

 しかし私は一人の救世主によって救われた。

 道の端にうずくまっていた私に声をかけてくれた一人の青年によって。

 

 私は話しかけられるまで気づく事ができなかったが人が居ると認識した直後本能のままに助けを求めた。

 上手く声が出なかったが一生懸命に助けを乞うた。

 するとその青年は見ず知らずの小汚い私を街まで連れて行ってくれた。

 そこから私を宿屋で休ませる為にお金を用意してくれたのだ。

 その青年は私に食事を与えてくださり、そして寝床も用意してくれたのだ。

 私はその時誓った。


 これからずっと彼のそばにいよう。


 彼の事を詳しくは知らない。

 だがその時私は生きる意味を見つける事ができたのだった。

 

 

 ○○○


 あの日からルカは丸二日寝ていた。

 相当疲れていたのだろう。

 その間俺もこの部屋から出ずに一緒に過ごした。


 「……おはようございます」


 「はい、おはようございますルカさん」


 彼女の名を呼ぶとウトウトした顔から浮かない顔へと変わった。


 「あの…これからはルカとお呼びください。そして敬語はおやめください。ライト様は私の命の恩人なのですから」


 「そうです…そうか、分かった。これからはルカって呼ぶよ」


 「ありがとうございます」


 で、これからどうしようか。

 別に俺は元の世界に戻りたいとかないからな。

 取り敢えず自分でお金を稼がなきゃな。

 思い付く職業といえば冒険者くらいか…。

 こんな世間知らずを雇ってくれる所なんて冒険者くらいしかないよな…。


 「取り敢えず冒険者ギルドに行こうか」


 「どうしてですか?」


 「お金を稼がないと生きていけないだろ?」


 「ライト様の実力なら騎士や傭兵も出来ると思いますけど…」


 「俺が騎士や傭兵だって?」


 そんなわけないだろ。

 俺は一般市民だぞ。

 喧嘩も小さい頃に数回しかした事ないし武道を少しかじってただけだぞ。

 

 「ライト様は物凄くお強いじゃないですか…」


 もしかしてこの前の冒険者ギルドでの出来事の事を言っているのだろうか。

 

 「この前の冒険者ギルドの事か?多分あれはあの男が物凄く弱かっただけだと思うよ」


 だって俺鳩尾みぞおちを殴って顔を蹴っただけだぞ?

 それだけで倒れるなんて弱いとしか言いようがないだろ。


 「そうなんですかね……」


 「きっとそうだ。取り敢えず冒険者ギルドに行こう」


 俺達は宿を出て冒険者ギルドへと足を運んだ。

 冒険者ギルドへ入ると以前とは違い俺を見ている奴はいなかった。

 

 なんか視線を感じるんだが。

 

 何か違和感があるが冒険者登録をする為に受付へと向かった。


 「冒険者登録をしたいのですが」


 「冒険者登録ですね……って貴方は!?」


 よく見たら俺の事を小馬鹿にした受付嬢だった。

 

 「その節はどうも……」


 「この前は大変失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした!」


 「いえ、あれは俺が世間知らずだっただけで」


 「で、では冒険者登録をさせて頂きますね!」


 俺は差し出された水晶のような物に催促され手を乗せる。

 すると水晶は幻想的に光った。


 「冒険者登録が完了致しました。それが冒険者のギルドカードです。このギルドカードは身分の証明にまで使えますので常に持っていてください」


 「分かりました」


 「それでは冒険者ギルドの説明をしますね。冒険者には下からF、E、D、C、B、A、Sの7段階の階級に分かれています。功績を上げギルドが認めると階級が上がるシステムになっています。Sランク冒険者はこの世界で両手で数えられる程しか居ません。階級ごとに受けることの出来る依頼が限られていますので承知しておいてください。説明はこれで終わりです。何か気になることがありましたら気軽に声をかけてください」


 「分かりました」


 「ギルドカードの裏を見てください。そこに貴方のステータスが記載されています。間違いがあったら報告をお願いします」


 カードの裏を見ると異様に【回避力】が高い俺のステータスだった。


 「間違いありません」


 「それは良かったです。それでは其方のお嬢さんも冒険者登録を致しますか?」


 ルカが冒険者だって?

 どう考えてもそれはないだろ。


 「この子は――」

 「はい、お願いします」


 「……ルカ本当にやるのか?」


 「はい…少しでもライト様のお役に立てればと……」


 俺の事を思っての事か。

 それは無碍むげには出来ないがルカはついこの前まではただの一般市民だったんだぞ。

 いやまあ俺もそうなんだけどな。

 ルカが怪我をしないように最善を尽くすしかないな。


 それからルカも俺と同じように冒険者登録をした。

 ルカが冒険者登録が完了した後ルカのギルドカードの裏のステータスを見ると俺とはかなり違うステータスだった。


―――――――――――――――――――――――


 【ステータス】 保有SP : 0


 〈名前〉 ルカ

 〈レベル〉 1

 〈称号〉 ――――――

 

 【体力量】120〔+〕

 【魔力量】120〔+〕

 【攻撃力】120〔+〕

 【防御力】120〔+〕

 【敏捷性】120〔+〕

 【回避力】100〔+〕

 【幸運値】0.0 〔+〕


―――――――――――――――――――――――


 初期SPを【回避力】と【幸運値】以外に平均的に上げているのか。

 何で【回避力】を上げないんだろうか。

 この中で【回避力】が一番やつに立つと思うのだが。

 まあステータスは人それぞれか。

 俺がルカにとやかく言う責任はない。


 とか思いつつも俺はこの後ルカに【回避力】について語りまくった。

 

 

 

 


 

 


 

 


 


 


 

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