第2話 冒険者ギルド
そろそろ街に着く頃だろうか。
しばらく歩き続けたが一向に街に着く気がしない。
永遠に続くんじゃないかってくらい奥に道が続いていた。
だが今は歩くことしかできない。
歩こう。
すると遠くから見たらよくわからなかったが道の傍に
この世界に来て初めての人だ!
エルフだったりするのかな。
「どうかしましたか?」
「……」
意気揚々と近づき話しかけるが応答がない。
ローブのせいで顔もよく見えなかった。
「あのー…、生きてますか?」
「…て…」
「はい?」
僅かに聞こえたが聞き取ることは困難な声量だった。
耳を傾ける確実に聞こえる距離まで近づく。
すると、
「助けて下さい…」
掠れた声で"彼女"は言った。
助けてって…どうすればいいんだ?
俺はこの世界に来たばかりでここがどこかすら分からないんだぞ。
一体どうすれば……。
「ここから最寄りの街までどのくらいかかりますか?」
「分かりません…。ごめんなさい…。」
「取り敢えず歩きましょう。肩を貸して下さい」
俺は彼女の肩を支えながら街道を進んだ。
○○○
街に着いた。
数時間は歩き続けただろう。
その間に彼女以外の人とは会わなかった。
俺は彼女を休ませる為に宿屋に向かうがあることに気がつく。
金が無い…。
どうしようか。
何か売るしか無いか。
確かさっき倒したゴブリンが宝石のような物を落としたよな。
あれは売れるだろうか。
「すみません。魔物の素材を売ることのできる場所をご存知ですか?」
「冒険者ギルドに行けば売れるだろ。とんだ世間知らずもいるもんだ」
屋台を出していた大柄な男に尋ねると小馬鹿にされた。
俺の住んでるところより田舎じゃないか!
まあ教えてくれたからいいとしよう。
俺は冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは中々大きい建物だった。
中に入ると広々とした空間が広がっていた。
想像通りというか酒場のようなところもあり、柄の悪い冒険者が俺たちを薄気味悪い笑みを浮かべながら見ていた。
「あのー、すみません。魔物の素材を買い取って欲しいんですが」
「魔物の素材の買取ですか、珍しいですね。この辺りに換金できるほどの魔物はいないはずですが、何の魔物ですか?」
おいおい。
俺の持っている魔物の素材はゴブリンのだぞ。
恐らく最弱の魔物だぞ。
今更引き下がれないし、ほんの少しでもいいから換金してもらえないだろうか。
「ゴブリンです……」
「はい?」
「ゴブリンです……」
「ゴブリンですって?馬鹿にしてるんですか?そんな最弱の魔物の素材なんて売れるはずがないじゃありませんか」
受付嬢はゴブリンの素材を持ってきたというと馬鹿にするように笑った。
それに惹きつけられた冒険者たちが背後から近づいてくる。
「おいおいにいちゃん。なんでゴブリンの素材なんか持ってきてるんだ?」
「ええと……」
「そんな雑魚モンスターの素材なんか売れるわけがないだろうが」
冒険者たちはギルド中に聞こえるような声量で俺を馬鹿にしていた。
やはりか。
ここに来るのは間違えだったな。
早くここを出よう。
「すみませんでした」
俺はギルドを出ようと彼女の手を引こうとすると肩を掴まれる。
「あのー…」
「にいちゃん、無視すんなよ。何も知らない田舎者にはここのルールを教えてやらねえとな」
すると酒場から「やれやれ!」などの野次馬が飛び回る。
「金が必要なんだろにいちゃん。俺に勝ったら銀貨5枚やるよ」
なんでこうなった…。
相手はやる気満々じゃないか。
俺はゴブリンを倒すのにも苦戦するような奴だぞ。
こんな大柄な男に勝てるわけがないだろう。
見ている奴らも分かっているだろう。
俺が負けると。
分かりきった勝利を手に入れて何が面白いんだ。
異世界怖い……。
「……分かりました」
とっととやられてここを出よう。
殴られるのは慣れてる。
「ここから離れて下さい」
「……はい」
彼女に怪我をさせないように離れさせる。
「じゃあ始めるぞー」
巨漢な男の腕が俺の首を狙う。
掴みかけられた瞬間俺は一歩下がり
こいつ遊んでるな。
わざと動きを遅くしてやがる。
盛り上がりを下げない為に少しはやる気を見せるか。
男は息をするのが困難になったのか腰を屈める。
そこから顔に向け無象座に蹴りを入れた。
数回、数十回と蹴りを入れる。
「おい…もう…」
どうせこの後俺はボコボコにされるんだろ。
なら少しでも怪我を負わせないと。
「おい!」
「はっ!」
一人の男の声で我を思い出した。
俺は昔からそうだ。
興奮すると我を忘れてしまうんだ。
さあ、殴りたいなら好きなだけ殴れ。
「もう…やめて下さい…」
「え?」
胸ぐらを掴んでいた男を見ると白目になり、失神していた。
え?
もしかして勝った?
「すみませんでした……」
よく見ると周りの冒険者たちは俺を恐ろしいものを見る目で俺を見ていた。
そうだ。
勝ったんだから金を貰わないと。
「すみません。お金は…」
「今渡します!」
失神した男のそばにいた男は小袋ごと俺に渡し失神した男を引きずりながら出て行った。
「えと…」
なんか気まずいんだけど。
受付嬢を見ると目を見開いて固まっていた。
「あのー…」
「先程は失礼いたしました!!では素材を換金しますね!」
引き攣った笑顔で俺のそばに寄ってきた。
俺はポケットから宝石を取り出し渡す。
すると受付嬢の反応は予想外なものだった。
「これは何ですか……?」
「恐らくゴブリンの魔石って言われる物だと思います……」
「これがゴブリンの魔石な訳ないじゃないですか……」
「え?じゃああの魔物はなんだったんだ?」
あの見た目は完全にゴブリンだったよな。
若干目が充血してたか?
いやそれは好戦的なゴブリンにとっては普通だろうしな。
「……すみません。こんな珍しいものここでは換金することができません……」
「そうなんですか……」
やはりゴブリンの魔石は売れないか。
念の為持っておこう。
「じゃあ行きましょうか…」
彼女の手を引きギルドを出た俺たちは町外れにあった宿屋に向かった。
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