第15話 群れ襲来!

怪物の群れが発生したニュースが流れ、1週間が経った。

 協会は、この群れの対策に頭を抱えていた。1体でも危険な怪物が100体以上。普通に考えても対抗するためには、ハンターを100人以上集める必要がある。だが、ハンターは個人で活動している者がほとんどのため、乱戦になる可能性が高い。ハンター同士で協力するためには、それなりに訓練が必要だ。そんな時間は無い。対応が遅れれば遅れる程、群れは大きくなり、移動していく。どうしたものかと結果的に何も出来ないままだったのだ。


 怪物の群れの中心にいる二足歩行の怪物は、新たな地にたどり着き、賢也の気配が近付いているのを感じ取っていた。


「グルルルル」


 唸り、他の怪物に指示を出す。そして、歩み始める。賢也の職場まであと100km程の位置まで来ていた。


 その頃、賢也は、職場で仕事をしていた。

 ライセンスにメールが入る。


『居住エリアに例の怪物の群れが到達しました。十分な注意と緊急時の要請があった場合は、ご協力お願いします』


「まさか、ここにも来るとはな」


 そして、予想はしていたが、専属ハンターの打ち合わせ案内がやって来た。


「みんなライセンスメールが届いたな」

「はい」

「ああ」


 賢也以外のメンバーは動揺を隠せないでいた。

 いつも威勢のいい諸井も今日は黙っている。


「この地域に来るかは分からない。だが、覚悟はしておく必要があるぞ」

「いや、この間決めただろ。そのままやり過ごすって」

「そうだが、もしもの時は戦わないといけないだろう」

「来ないことを祈ろう」


 皆、怪物の群れが来ないことを祈りながら、解散した。

 解散の時、武井は賢也を呼び止める。


「龍崎、お前はやけに落ち着いてるな。この間もお前だけが、戦う選択をしていたが、大丈夫か?もしもの時は、俺とお前の2人で何とかしないといけないかもしれない」

「そうですね。その時が来たら考えますよ」

「頼むぞ」

「はい」


 賢也は返事をすると戻って行った。その後ろ姿を見て、武井は、


(ランクが一番上の俺より成り立ての龍崎が落ち着いてるなんて。しっかりしろ!)


 自分に活を入れると自分の職場に戻って行った。


 職場に戻ると、事務所内がざわついていた。戻って来た賢也の周りに職場の人達が集まる。


「なぁ、龍崎。群れが県内に入ってきたって本当か」

「そうですね。さっきメールが来ました」

「マジかよ。怖ぇよぅ」

「ここに来るか分からないですから、とりあえず落ち着きましょう。それにこういう時のために俺たちがいるんですから」

「頼むぜ。本当に」

「大丈夫ですよ」


 賢也の返事を聞き、不安そうにしながらも、皆、席に戻って仕事を再開した。


 午前中は何事もなく終わり、昼休みも終わって、午後の業務時間が始まろうとした時、賢也はバッと突然立ち上がった。

 手には剣を持つ。周りの人達が驚いた。


「どうしたんだ、龍崎。剣なんか持って。びっくりするじゃないか」

「まさかとは思いましたが、来ました。奴らです」

「何を言ってるんだ?何も放送とかないぞ」


 その時、緊急放送が流れ出す。


「緊急、緊急、只今、当社前の道路に怪物の群れが現れました。専属ハンターの皆さんは集合してください。他、従業員の方は外に出ないようにお願いします。繰り返します…」

「何で放送前に分かったんだ、龍崎」

「あぁ、奴らの気配が分かるんですよ。俺。じゃあ、行ってきます」


 賢也は、集合場所に行くとメンバー全員揃っていた。一応、武装はしている。

 監視カメラのモニターで外の様子を見ると、群れの中に逃げ遅れた車が囲まれている様子が写っていた。


「不味いな。あの車」

「でも、ここから手を出せばあの群れがこっちに押し寄せてくる。諦めるしかないな。あれが餌食になって何処かに行くのを待つぞ」


 諸井が決めていた行動指針のままやり過ごすように言う。


「そうだな。あれは無理だ」


 圧倒的な数の恐怖に皆諦めていた。その中で武井が全員に問いかける。


「良いのか!目の前で人が死ぬかもしれないんだぞ」

「じゃあ、どうするんだよ。言ったろ。下手に手を出せばこっちに向かってくるんだぞ。あの大群が!ここが戦場になって、被害が拡がっても責任取れるのか!」


 諸井が怒鳴る。武井は、黙ってしまった。


「ほら見ろ。どうしようもないんだよ。黙ってろ」


 そのやり取りを見ていた賢也が口を出す。


「俺、行ってきますよ」

「何を言ってるんだ。お前は?馬鹿か?新人のくせに」

「怪物どもが居なくなるまで動くんじゃねぇよ!」


 諸井と臼井が賢也に怒鳴る。


「いや、動く気配無いですよ。奴ら」


 賢也がモニターの方を指差す。確かに、何故か怪物達はその場から動く気配がなかった。


「このままじゃ、誰も外に出られないし、奴らも腹を空かしたらこっちに押し寄せて来るんじゃないですか?」

「そんなの分からないだろうが。それともお前1人であいつらと戦えると思ってるのか?あん?」


 賢也に喧嘩ごしに諸井は問いかける。どうせ無理なんだと言わんばかりに睨み付けていた。


「諸井さん、あなたの敵は俺なんですか?怪物ですか?」


 賢也は呆れて質問した。


「はぁ?何生意気言ってんだお前は」

「別に。あれは俺が全部やってくるんで、良いですよ。何もしなくて」


 そう言うと、賢也は歩き始めた。


「おい、龍崎!」


 武井が呼び止める。賢也は、振り向くこともなく、手を挙げた。


「じゃあ、行ってきます。下手な援護射撃とかしないで下さいね」

「てめえ、頼まれてもするかよ!」


 そして、賢也は外に出ていった。


「さてと、やりますか!」


 賢也は、剣を抜くと怪物の群れに歩いて行った。

 その様子をモニターで見ている武井達。


「あいつ馬鹿だ」

「ここが襲われたら、あいつと武井、お前らのせいだからな」


 賢也は近付くと、二足で立っている一際でかい怪物を見た。


(あいつがリーダーか)


 その怪物が叫ぶ。


「ガァァッ!」


 その声を聞いた周りの怪物が一斉に賢也に向かっていった。どれもFランクの怪物で、噛み付きと爪による引っ掻きが攻撃手段である。賢也に近付かなければ攻撃出来ない。

 賢也は、ゆっくり構えると、近付いて来た怪物を次々と斬っていく。怪物達が近付くのを止める。既に10匹は、斬り倒していた。

 

「何だ。あいつ。もうあんなに倒したのか」

「いや、斬ったんだろうけど、剣振ってたか?」


 モニターを見ていた武井達は賢也の戦いを見て、驚いていた。あり得ない速度で怪物を倒している。


「あいつなら本当に倒せるのか?」


 諸井以外の全員が賢也の戦いに希望を抱き始めていた。


 怪物達の侵攻が止まり、賢也は怪物達に向かって、剣をかざす。


「どうした?来ないのか?」


 それを聞いたからか、あの怪物がまた指示を出すように叫ぶ。


「グァ!」


 賢也の周りを怪物が囲み始める。


「へぇ。怪物のくせに頭使うじゃないか」


 怪物の行動に感心するが、動揺はしない。賢也を囲んだ怪物達が賢也に襲いかかってくる。


「奥義、風雅満月!」


 賢也は、その場で一回転すると、次の瞬間、襲いかかってきた、怪物達の首が飛んだ。


「さて、次はこっちから行くぞ」


 賢也は、近くの怪物に駆け出し、一撃で倒しながら、どんどん進んでいく。囲まれていた車まで進むと中を確認する。中には、女性が1人だけ乗っていた。車は傷だらけになっていたが、女性は無事だ。


(さて、どうする?この人を外に出したら危ないしな)


 タイヤはパンクしている。走れそうにない。


「とりあえず周りをもう少し片付けるか」


 そして、車の周りにいた怪物をあらかた片付けると、声を掛けた。


「大丈夫ですか?今なら、外に出て逃げられます。動けるなら、あの建物に向かって、走って!」

「わ、分かりました」


 女性は返事をすると、車から降り、賢也の会社に向かって走り出した。

 それを怪物が襲おうとすると、


「お前達の相手は俺だろうが!」


 叫び、女性を襲おうとしている怪物を斬り伏せた。そして、常人なら当てられただけで、気を失いそうな程の殺気を怪物達に向け放つ。怪物達の注意は殺気を放つ賢也に向けられ、女性には目もくれなくなった。

 必死に走った女性は会社の敷地にたどり着き、建物の中に逃げ込んだ。そこは、武井達がいる場所だった。


「あなた達はハンターさんなんですか?何でこんな所にいるんですか。あの人を手伝って下さい!」

「うるさい。あいつが一人でやるって言ったんだ。部外者は黙ってろ!」


 賢也の活躍をモニターで見て機嫌の悪い諸井が女性に怒鳴る。


「諸井!すみません。お怪我は無いですか?私は武井と申します。すみません。私達は力不足で彼の足を引っ張ることしか出来そうにないんです」

「ごめんなさい。理由も知らないで。彼が一人で戦っていたから、つい」

「いえ、今は彼が無事に帰ってくるのを一緒に祈りましょう」


 賢也が半分程の怪物を倒した時、外の様子が分かるように各事務所のモニターに監視カメラの映像が映し出された。


「あっ、外の様子だ。えっ?賢也さん一人で戦っているの?」


 モニターを見た優が驚く。


「マジかよ。あいつ凄いな」


 斎藤も驚き、事務所全員が賢也の勝利を祈り出した。


「さぁ、あと半分くらいだな。どうした?来ないのか?」


 賢也は怪物達を挑発する。


(さっきの女性は無事、中に逃げ込めたみたいだな)


 女性の気配が建物の中に入っていったのを確認する。

 挑発された怪物は唸り声をあげてはいるが、動く気配が無い。


(うーん。どうするかな?)


 あの二足で立っている怪物との戦いのために出来るだけ、力を温存しておきたい。向かって来てくれれば、最小限の動きで力を使わずに済むのだが、怪物達は動いて来ない 。しょうがない斬り崩して行くかと思った時、背後から弱いが殺気を感じる。意識を集中すると、空気を裂く音が聞こえる。直ぐに振り向くと剣を振る。キーンと言う音が響く。それは一発の銃弾だった。怪物達は背を向けた賢也に一斉に襲いかかり始めた。

 賢也は怪物達に背を向け、力を溜めながら、走り出した。

 距離を取った賢也は、怪物達の方に向き返ると、溜めていた力を解放する。


「飛燕!」


 賢也の放った飛燕は一斉に向かって来る怪物達をほとんど真っ二つに切り裂き、残りは、Fランクが10体と二足立ちのみ。

 ここにきて、今まで動きの無かった二足立ちの怪物が遂に動き始めた。


「ガァッ!」


 叫ぶと残りの怪物がまた賢也の周囲を取り囲む。一斉に襲いかかり始めた時、さっきとは比べ物にならない位の馬鹿デカイ声で叫び声をあげた。


「グガァァァ!」


 すると、賢也を襲いかかって来ていた怪物が吹き飛ぶ。


「何だ?」


 賢也に強烈な衝撃波が直撃し、後ろに吹き飛ばされた。

 その勢いは激しく、会社を囲む塀に叩き付けられた。


「がはっ、あいつの叫び声は衝撃波が出るのか」


 起き上がるとまた衝撃波を放とうとしているようだった。

 怪物との距離が離れていた。賢也は、飛燕の構えを取る。


「飛燕!」

「グガァァァ!」


 賢也の飛燕と怪物の衝撃波がぶつかり合うが、飛燕がかき消されてしまった。そして賢也は、また塀にぶつけられる。


「ぐぅ」


 衝撃波を躱して、近寄るしかない。衝撃波が治まったと同時に怪物に向かって走り出した。


「グガァァァ!」


 また、衝撃波を放ってくる。

 賢也は右に飛んだ。衝撃波が足に当たり、その場で一回転する。


「うぉっ。当たり判定は狭いのか。なら、躱せる!」


 体勢を立て直し、さらに突っ込む。怪物は、また衝撃波を放ってくる。

 しかし、賢也はこれを今度は完全に躱す。間合いが詰まってきた。剣を前に突き出す。


「喰らえ!氷雨!」


 賢也が三連突きを放とうとした時、怪物は大きく息を吸い込んだ。


「衝撃波は当たらないぞ!」


 横に飛び、そのまま突っ込もうとしたが、嫌な予感が頭をよぎる。次の瞬間、怪物は口から火を吹いた。


「嘘だろ!」


 何とか寸前で躱すが、また間合いが離れてしまった。

 衝撃波に火と厄介なと思っていると、怪物は自分の爪に火を吹き付けた。


「何をしてるんだ?」


 爪が火に包まれている。


(あれはVRの紅蓮剣と同じなのか!)


 怪物が賢也に向かって走り出した。速い。火を纏った爪で斬りつけてくる。賢也は躱し、爪は地面を切り裂いた。切断面には火が残っている。


(あれに斬られたらヤバいな)


 怪物がまた大きく息を吸い込んだ。


「火か!」


 賢也は下がり躱そうとすると、


「グガァァァ!」


 怪物の攻撃は、衝撃波だった。


「フェイントだと」


 賢也は後ろに吹き飛ばされる。だが、今回は塀に叩き付けられなかった。塀を足場にして飛び出す。足場にされた塀は砕けてしまった。だが、その勢いで一気に怪物に近付くと左腕を斬り落とした。


「よし!」


 次の攻撃をしようとした時、既に怪物は賢也の前から離れていた。


「速いな」


 離れた先には、戦闘に参加出来ていないFランクの怪物がいた。すると、怪物はFランクの怪物を喰らい始めた。


「これは。まさか!」


 そう、前に倒した巨体の怪物と同じ行動だった。怪物の左腕が再生する。しかも、前より太く力強くなったように見える。


「こいつ、回復用に雑魚を少し残してたのか」


 賢也は、先に、生き残っているFランクの怪物を倒そうとするが、それを阻止しようと火を放ってきた。


「こいつ、頭がいい」


 仕方なくFランクの怪物は後回しにする。


「あと9回、回復されるのか。だったら!」


 回復出来ない強烈な攻撃で倒す!

 賢也は、大きく息を吸い込むと静かに吐き出した。そして、剣を高く掲げる。怪物は、再生した左腕の爪に火を纏わせた。互いに走り出した。賢也が先に斬りつける。


「朧!」


 怪物は、爪で初撃の上段斬りをガードする。そして、反撃をしようとした瞬間に賢也の下段からの斬り上げで、右腕を斬り落とされた。


「ガァッ!」


 距離を取り回復しようとFランクの怪物の方向を見た瞬間、賢也の三連撃目が右肩に直撃する。


「うぉー!奥義!鳴神ぃ!」


 踏み込んだ足音が『ダーン!』と激しい音を立て、超高速の上段斬りが、右肩からバッサリと怪物の体を2つに切り裂いた。


「ふぅっ」


 大きく息を吐く。そして、そのまま残った9体のFランクの怪物を斬り、賢也は一人で100体以上の怪物の群れを討伐し終えたのだった。


 賢也は、討伐完了の連絡を協会にすると、会社に戻っていった。

 そこで目にしたのは、縛り上げられた諸井の姿だった。


「何してるんですか?」


 賢也は質問すると、


「こいつ、お前を狙って銃を撃ちやがったから、縛り上げたんだ」

「ああ、あの時の」

「あの時のって。龍崎、お前よくそんなに平然としていられるな」

「別に。気にしてないですよ。言ったじゃないですか。流れ弾に当たるようなヘマはしないって。あれがあったから、雑魚が一斉に動き出してくれたから、手助けみたいなものですよ。離してあげて下さい」


 賢也は諸井を縛っているロープほどいた。


「ああ、諸井さん、今回は気にしてないですけど、次は斬りますよ」


 賢也はさらっと、諸井に釘を差す。


「す、すまなかった。絶対もうしません。勘弁してください」


 賢也に対する諸井の態度は豹変して、大人しくなった。


「それより、怪我は無かったですか?すみませんでした。怪物達の中を走らせてしまって」


 賢也は助けた女性に声を掛けた。


「いえ、本当にありがとうございました。貴方が居なかったら私は食べられてしまっていました。お名前を聞いても宜しいですか?」

「はい。龍崎です」

「龍崎さん、本当にありがとうございました」


 女性は賢也に礼をすると帰っていった。


 会社に放送が流れ始めた。


「怪物の群れは討伐されました。緊急事態は解除されました。繰り返します…」


「龍崎、お前本当に強かったんだな」

「俺も剣に変えようかな」

「これでお前もEランクのハンターだな」


 皆が賢也の強さに興奮していた。

 その時、協会から連絡が入る。死体の回収作業に入るから、立ち合って欲しいとの事だ。


「じゃあ、私は行きますね」


 賢也は、出ていった後も中は賢也の活躍で暫く盛り上がっていた。


 死体回収班の中に梶がいるのを見付けた賢也は、梶の元に向かった。


「梶さん!」

「おぉ、龍崎さん。君、凄いね」

「梶さんの作ってくれたこの剣のおかげですよ」


 賢也は梶に剣を見せる。


「いやぁ、有り難いね。俺も作った甲斐があるよ」

「梶さん、この死体からも武器作ってもらえるんですか?」

「あぁ、何かあったのかい?」

「実は…」


 賢也は戦った新種の怪物が火を吐き、爪に火を纏わせた事を説明した。


「へぇ。それは興味深い」

「ゲームじゃないですけど、火属性の剣みたいなのが、出来たらいいなって思ったんですよ」

「よし。死体の解剖の時に確認してみるよ。上手く出来たら連絡するね」

「よろしくお願いします。楽しみにしてますね」

「それにしても、凄いな。研究班も忙しくなるぞ。これは」


 死体回収に立ち合い終わった賢也は家に帰った。玄関を開けると子供達が興奮して、出迎えた。


「パパ!パパがテレビに出てるよ」

「テレビ?」


 綾乃が続いて、出迎えて来た。


「よかった。怪我は無いみたいね。今、ニュースが貴方の事で持ちきりよ。怪物の群れを討伐した新人ハンターって」

「いや、別にテレビの取材とか受けてないぞ。俺は」


 家に入ると、ニュースが流れていた。


「本日、協会の発表によりますと、新人ハンターの龍崎さんが、問題の怪物の群れを一人で討伐したとの事です。彼の経歴は、新種の怪物を討伐後、ハンターに志願。そして初仕事で群れ討伐という快挙を成し遂げており、協会の中でも期待の新人ハンターという事です。今回の群れの中には、新種も居たとの情報もあり、新種を2体も既に討伐したという話です」

「うわぁ、何だこりゃ。俺は何も聞いてないぞ」

「パパすごーい。つよーい」


 子供達は喜んで、リビングを走り回っている。


「無理はしないでよ」


 綾乃が賢也に釘を差す。だが、ニュースで自分の夫が褒められているのがまんざらでもないようで、上機嫌だった。

 その日のニュースは、群れ討伐で持ちきりだった。


 翌日、梶からのメールが入っていた。


『凄いよ。龍崎さん。お手柄だよ。研究班が、死体を調べて、怪物の正体が分かったらしい。近い内に発表されるんだって。あと、例の剣の話だけど、今度こっちに来て。これも凄いから!』


 梶がもの凄く興奮しているようだ。

 怪物の正体が分かったとは一体?


 賢也は、協会支部に向かうのだった。

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