第16話 脅威!新種討伐依頼
怪物の群れを討伐した賢也は、翌日、梶からの呼び出しで協会支部に向かった。協会支部に着くと梶のいる武器開発局に向かう。
「梶さん、おはようございます」
「龍崎さん!おはよう。よく来てくれたね」
梶が朝から上機嫌である。賢也は梶に質問をした。
「何か解剖して怪物の事が分かったんですか?」
「あぁ、その事かい。そっちは詳しくはまだ聞いてないんだけど、調査研究員の友人が興奮してたよ。本部の研究員達とまだ詳しく調べてから、発表するって言ってたな」
怪物の解剖については、梶もまだ詳しくは知らないらしい。賢也は続けて質問をした。
「梶さんは、何か楽しそうなんですが、新しい剣で何かあったんですか?」
「そう!それだよ!」
梶のテンションが一気に上がる。早く話しをしたくて堪らなかったようだ。
「いい材料を貰ったよ。こっちに来てくれる」
梶は、自分の研究室に賢也を案内する。
「まずは、これ」
梶は、賢也に胃袋のような変わった怪物の部位を見せる。
「君の話しだと、この怪物は声による衝撃波と火を吹いたんだよね」
「そうですね」
「で、解剖してみたら、気道の先にこの袋と肺が繋がっていた」
そう言うと、その袋を持ち上げ、袋の口の部分を下に向ける。すると、袋の中から液体が垂れてきた。
「衝撃波の方はおそらく強烈な肺活量で息を吹き出してたんじゃないかな。で、火の方はこの液体」
垂れ落ちた液体を綿棒で取ると火を点ける。ボワァ!凄い勢いで炎があがる。
「どうやら、この袋で油みたいなこの液体を作って、吹き出してたんだろうね」
「でも、種火は?」
「それは、これ」
梶は、怪物の歯を2本取り出した。
「見てて」
梶は、歯と歯をぶつけると火花が散った。
「この奥歯が火打ち石の役割だったみたい。でも、一番驚いたのは、この油袋だよ。怪物の体から切り離しても、ずっと油が湧き出てくるんだ」
「どういう仕組みなんですか?」
「うーん。残念だけど、そこまでは分からない。でも、この油袋と爪を使えば、君の要望の剣は作れると思う。2、3日くれないかな」
「問題ありません。よろしくお願いします」
賢也は、梶に新しい剣を頼むと協会支部を後にした。
3日後、梶から出来上がったとの連絡があり、賢也は梶の元に向かった。
「我ながら凄いものを作ったと思うよ」
梶は、満足そうな顔で剣を持って来る。
「刀身には、怪物の爪を3本使っているよ。金属を使おうとしたけど、炎に耐えられなかった。柄に付けたそのスイッチを押すと、あの奥歯がぶつかり合って火が点くよ」
賢也は渡された剣の柄にあるスイッチを押す。
バァッ!剣の刀身があっという間に炎に包まれた。
「おぉ!」
賢也は感動して、炎に包まれた刀身をじっと見ていた。
「危ないから気を付けて。火を消す時は鍔をスライドして、剣を振って油を切るんだ」
賢也は言われた通りに鍔をスライドさせ剣を振る。
それまで燃え盛っていた炎がピタッと消えた。
「なるほど。梶さん、いいですね。これ」
「だろう。油袋は、2つあったから、2本作ったよ。予備も含めて。でも、折ったりしないように気を付けてくれよ。貴重なんだから」
「はい!大事に使います」
「あと、刀身の切れ味は、前に作った剣の方が切れ味はいいみたいだね。炎を纏わせた時は、それ以上みたいだけど」
「そうですか。分かりました」
「あ、それと鞘に入れる時は、鍔の位置に気を付けてね。火を消す時の状態だと、油が鞘に流れ出して大変な事になるよ」
「気を付けます」
剣を貰い、賢也は家に帰った。リビングに入るとニュースを耳にする。
「新たな怪物が北海道で発見されました。以前に発生した怪物の群れのように、南に向かって移動を続けているようです」
新種が発生したらしい。何故、南下するのかは分からないが、怪物の新種が最近多い気がする。この間の群れのリーダーも新種だった。まだ、ランク付けはされていないが、Aランク以上だと思われる。
(今回の新種はどうなのかな?ここまでは来ないだろう。1体だけみたいだし)
新しい剣を武器庫にしまう。
(剣を取る時に名前があった方がVRみたいでいいかな?)
最初に貰った剣には【銀狼】、新しい剣は【紅蓮】、名前を付けると更に愛着が湧いた。
新種の報道があってから、3日経った。未だに討伐されたという情報は入ってこない。仕事に向かう準備をしていると、協会からの連絡が入った。
『龍崎殿、お願いがあります。現在、確認されている新種の怪物の討伐を請け負って貰えないでしょうか。新種をすでに2体も討伐した腕を見込んで、お願いします。既に10人のハンターが犠牲になっています。どうぞ、よろしくお願いします』
「おいおい、この間Eランクになったばかりの俺にこんな依頼をするか?普通?」
一人で呟いていると、その様子を見ていた綾乃が賢也に声を掛けてきた。
「どうしたの?何か問題でもあった?」
「いや、協会からこの間ニュースに出ていた新種を討伐してくれないかって連絡が来たんだよ」
「あの怪物って、まだ東北地方を移動中だったじゃない。何であなたに依頼が来るわけ?」
「新種を2体も討伐したからみたいだな」
「あなたの強さを認めてくれたんだ」
綾乃は自分の夫が褒められたようで嬉しそうである。
「困っている人がいるんなら、助けてあげたら、良いじゃない」
綾乃が賢也に依頼を受けたらと勧める。
「どうしたんだ?ハンターになる時は、反対してたのに」
「いや、危険だから嫌なのは嫌なんだけど…」
何故か、最後の方はゴニョゴニョとごまかす綾乃。
「なに?」
賢也が聞き返すと、観念したのか、恥ずかしそうに綾乃は答えた。
「お給料が、この間1000万超えてたから、助かるなぁとか思ったり…」
「プッ。アハハ」
賢也は思わず吹き出して、笑ってしまった。
「そっか、討伐報酬か。俺は武器にお金使わないからね。そうだな。生活するのに必要だしね。分かったよ。出稼ぎに行ってこよう」
「もうっ!心配だってしてるんだからね」
「はいはい。分かったよ」
賢也は、協会に討伐を請け負うと返答した。
「準備はしっかりしないとな」
(よく考えたら、梶さんに剣の代金払った方がいいよな)
賢也は梶から武器を只で貰って申し訳ないと思いながら、討伐に行くための武器の補充を梶に頼みに行くのだった。
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