第4話 無事だった家族

 地震も落ち着き、職場に戻ると地震の影響で、壁にはひびが入り、ロッカーは倒れ、ひどい箇所では、床が抜け、天井が落ちていた。


「これは仕事どころじゃないな」

「家は大丈夫かな?」


 皆が不安になっていると、


「今日はもう全員帰宅していいぞ。気を付けて帰るように!」

「明日から暫く、復旧作業で何も出来ないから、連絡あるまで自宅待機だ。」


 上司から帰宅の指示が出て、皆、帰宅を始める。


「家と家族は無事だろうか?」


 地震の影響で、電話が繋がらず家族の状況が確認出来なかったため、足早に家に帰る。

 家に帰り着いた賢也は、愕然とした。妻と子供達が家の前に立っている。


「綾乃!良かった。無事だったんだな。電話が繋がらないから心配してたんだ。」

「賢也も無事で良かった。」

「パパ!怖かったよぅ」

「輝、さくら、大丈夫だよ」


 賢也を見た綾乃が、安堵した表情をし、子供達は賢也にしがみついてきた。


「でも、家が…」

「そうだろうな。頑丈な会社の床や天井が崩落するくらい凄かったからな」


 家の壁は崩れ、2階の部屋は崩落し家具が散乱していた。


「地震保険入ってて、良かったな…」

「それよりも寝る場所とか、食糧はどうするの?」


 妻が心配そうな顔をしている。


「とりあえず車で寝るしかないか。食糧は非常食が無事だといいんだけどな」


 賢也はそう言うと、崩れ落ちた家の瓦礫の山から、非常食等が入っていた防災グッズを探し始めた。


(最悪、斎藤に非常食は分けてもらうか)


 そう思いながら探していると、防災グッズを保管していた1階倉庫が奇跡的に無事に残っていた。


「良かった。斎藤に借りを作らずに済んだな」


 無事だった倉庫から防災グッズを引っ張り出すと、その日は車の中で眠りに着いたのだった。


 一夜明けて、賢也は携帯でニュースを確認する。昨日の地震はやはり隕石が落ちた衝撃によるものだった。世界中で地震が起き、隕石は富士の樹海に落ちたらしい。

 子供達が起きてきて、車内テレビを点ける。テレビはどの番組も隕石落下と地震の特番だった。


「ニュースしかなくてつまらない」


 子供達は見たい番組がなくて文句を言っている。


「しょうがないでしょ。昨日は大変だったんだから。」


 妻が子供達をなだめていると、ニュースから専門家のコメントが聞こえてきた。


「観測された大きさの隕石が落下して、あの程度の地震で終わるなんておかしいんですよ。」

「大気圏に突入する前と後のサイズが変わってないというデータもあり、あり得ないんです。」


 通常、隕石は大気圏に突入すると生じる摩擦熱に耐えられず、分解されるものが一切大きさも変わらずそのまま落下したらしい。


「あのサイズで落下すれば地震どころか、周囲一帯が吹き飛んでもおかしくないのに、衛星写真を見ると全くそんな形跡がないんです。」


 専門家がしきりに今回の隕石落下は不思議な事象だということを訴えている。


「そもそも隕石は地球に落下することなく、通過するはずだったのに軌道が突然変わるなんて事からおかしい。あれは本当に隕石なのか?」


 別の専門家が、隕石がUFOが何かじゃないのかと言い出した。ニュースの司会者は、この終わらない討論を切り上げさせるように話し出す。


「ありがとうございました。政府はこの隕石について、調査隊を派遣する事を決定しました。続いて、各地の地震による被害の状況です…」

「隕石の調査より、地震の被害の方が大事だろ。何を考えてるんだ政府は。」


 賢也は政府の対応に呆れながら、保険会社に連絡を取るが、何処も同じ状況のため、中々対応が取れないらしい。仕方ないので、瓦礫を片付けながら、これからどうするかを考えるのだった。

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