間幕2
① 私と悪役令嬢と
前世から美味しいものは大好きで、特にお隣の幼馴染と
幼馴染が行方不明になってからは、従妹の
大人になっても従姉妹同士で集まる機会は多く、友達と遊ぶよりもみんなして莉香の家に押し寄せては、彼女の手料理を食べていた。
莉香を失い、和香は実家の部屋から出てこなくなった。仁香は
子供ができなかった私は、夫のおかげでそれなりに幸せに暮らした。だけど、
前世の記憶を取り戻したのは、やっぱり愛しい今世の家族を失った時だった。あの時は「また連れて行ってしまうなんて、神様は私のことが嫌いなの?」と
新しい家族とも仲が深まり、一緒にいて楽しいくらいに人生を再び歩みだしたけれど・・・・・・まだ心のピースは欠けたままだった。そんな時、急に仁香がはまってた『乙女ゲーム』について思い出した。もう何十年も前のものを。そのゲームは唯一、私たち全員が知っているゲーム。
日々過ごしていく中で、そのゲームと違う部分もあるがシンクロ率が
おかげで、あるあるイベントの代わりに『大事な人』にまた逢えた。彼女は、私たち全員が可愛いと言っていたゲームの悪役令嬢として
私たちが好きだった彼女が生きてる――失ったピースがはまりだした世界で、ゲームが強制的に起こるなんてもっての
そんな
私のそんな決意を全く知らない彼女は、今日も元気に私と
「それで? その後、ベルナール様と手でもつ」
「それよりさぁ! この味って・・・・・・」
「え? あぁ、それ。テレビCMで外国人が作り方説明してた、某紅茶のクラフトティーっぽいでしょ?」
「え、めっちゃ美味しいんだけど!?」
「こっちの素材の方が日本で再現するよりも、似てるんだよねー」
話を中断したにも関わらず、料理の話でニコニコの彼女は、今日もあの頃と同じように美味しいものを私に出してくれる。
「本当はね、夏の定番の某乳酸菌飲料が飲みたくてね」
「あぁ、子供の頃のお中元に瓶入りできてたアレね」
「再現を試みたのよ。家とか魔法とか
「権力と魔法の使い方、間違ってない?」
「でね、出来なくて・・・・・・諦められなくて」
「綺麗にスルー。まあ、いいけど。ていうか、諦めなかったのね」
「クラフトティーなら出来るわ!って思って、やっちゃった!」
「さいですか」
あの頃とかわらず、お金の使い方がおかしいけど。今は
「だって、夏の定番も飲みたかったけど・・・・・・クラフトティー片手に乳酸菌飲料入りのしっとりクッキー食べたかったんだもん!!」
「えらい、可愛い理由だなーおい」
普段は私がいじられっぱなしなのに、料理の話だと逆転するのよね。可愛いからいいけど。
「やっぱり、あんた可愛いわ。レティシアになっても」
「いや、
「・・・・・・やっぱり可愛いわ。これで、領地改善のために勉強もしてるとか――そりゃあの腹黒が
「呼んだかい?」
「!! ・・・・・・いえ(いつからいたんだよ!?)」
「あ、リオネル様! 今ちょうど焼き上がったところなんですが、リオネル様も召し上がります?」
「レティの手作りだろう? 勿論、いただくよ」
「ちょっと! それ、私の分なんですけど!?」
「おや、居たのかい」
「殿下より先に居ましたけど!?」
ちょっと鼻につく
今日も今日とて、何も起こらないように祈りながら殿下とレティのパウンドケーキを取り合う。私もレティに劣らず食い意地張ってるな――
拝啓、前世の愛しい
またどこかで逢えるのなら、一緒に美味しいものを食べに行こうね。
アリス・ロゼ・タイヤール
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