8.ビバ!青春!
夏の花祭りである
「レティ! 準備できたよー!」
バンッと開いた扉から、勢いよく私にダイブしてきたアリス。抱きとめたけど、首に体重がかかっているせいか、おっ重たい。これでも
「アーリースーさーん。重たい! 苦しい!! 首、キツイ!!」
「あ、ごめん」
パッと離してくれたけど、「やっちゃった! てへ」って顔しないで! めっちゃ可愛いけど! そのまま抱きしめるな!? 後ろのニナもスルーしないで!! ニナも最近アリスの扱いに慣れてきたわね・・・・・・。
「あれ? 彼女も行くのかい?」
そう。この部屋には、もう一人いるんです! 無視しちゃいけない人が!! というか、この人の
この人が
殿下を認識した瞬間に「げ!?」っと口から
「あわっ、はわわわ!?」
「アリス、言葉になってないよ」
「ななななんで、いっいらっしゃるんですかあぁぁー!?」
「居たら、まずいことでもあるのかい?」
おっと、黒いオーラが見えるのは気のせいかな!? いつも思うけど、ゲームなら攻略対象なのに
「いーえ。
「それは――お互い様じゃないかな?」
本当に、この人たち何やってんだろう・・・・・・。アリスの態度も不敬罪になると思うのに、殿下も殿下でその態度を遊んでる感があるんだよね。仲良いんだか、悪いんだか。
いい笑顔なのに黒い二人は、バチバチと火花が散っているように見えるのは――気のせいということにしておく。放っておけばずっとこのままなのもいつも通りなので、先ほど出来上がった琥珀糖をお茶と一緒にニナに出してもらった。今日の琥珀糖はアールグレイを煮詰めた物なので、水を入れずにミルクで煮出したミルクティーを頼んだ。口に含んだアールグレイの琥珀糖が、ミルクティーと合わさって濃厚なミルクの甘さが引き立つし、後味が柑橘系紅茶であるアールグレイのおかげで爽やかでサラッとしてる。あ、暑くなってはきてるけど、まだまだ風が冷たいからホットミルクティーだよ!
琥珀糖が出てくるや否や、アリスの目は輝くほどにキラキラに変わって、周りに花でも咲かんばかりの可愛らしい笑顔で私の横にサッと座った。
「やったぁー! レティシア様の琥珀糖!」
「そういえば、キラキラして綺麗なお茶菓子ではあるけど・・・・・・
「これは、水と砂糖に寒天を使っています。寒天は
「なるほど。先程見ていた資料にあった海藻類か――面白そうだから、一度加工場を覗いてみるよ。その時はレティ、案内をお願いね」
「・・・・・・えぇ、勿論です」
「今の『間』は何かな?」
「いえ!何でもありません! 是非とも、ご一緒させてください!」
「フフッ。いや、無理にとは言わないよ? レティのことだから、料理の時間が無くなると
「うっ・・・・・・そ、うですけど」
「地図にあった通りなら、確か加工場の近くに市場があったんじゃないかい? 時間があるなら、視察の後に市場で何か料理に使える物を探すのはどうだろう?」
「!? ・・・・・・行きたいです」
「じゃあ、案内よろしくね」
「ちょっと!! 難しい話してると思ったら――何、デートの
「
「居ますよ!?
遊んでる
私の行動もいつも通りなので、ニナが何も言わずに空いたカップにおかわりを淹れてくれる。二人とも良くもまあそんなに沢山、色々言いたいことが出てくるのね・・・・・・凄いわ。
お代わりに手をつけ始めようとした時、ふと先週の花祭りのことを思い出した。確か、アリスって誘ってたよね。
「デートといえば、ベルナール様とのデートはどうしたの?」
「それがね! ベルナール様がね!」
「
「付き纏ってません!」
「じゃあ、何かな?」
「猛アタックしてるところです!!」
「・・・・・・世間では、それを付き纏ってると言わないかい?」
「殿下にご迷惑をかけている訳ではないので、いいじゃないですか!」
「まあ、そうだな。おかげで、愛しの婚約者殿との時間を邪魔されないし」
「な!? 私がベルナール様に会いにいってる間に、レティシア様に手出ししてませんよね!?」
「・・・・・・それは、どうかな?」
遊ばれてるわ、アリス。大丈夫よ、アリスが思ってる展開にはなってないから。
結局二人の
当初の予想に反して、乙女ゲーム的展開はなかった。お腹黒目な婚約者さんをゲットし――いや、ゲットされちゃった?のかな・・・・・・。ゲームヒロインは、まさかの
せっかくなので、このまま乙女ゲームは忘れたまま、アリスたちと
この時、沈み始めた日差しに向かって拳を突き上げている姿を、小休憩用のお茶を淹れにきたニナに見られていたのを知らなかった。ニナは「また始まったか」とでも言いたげな顔のまま素早く茶器をセットし、静かに部屋を出ていった。私がそれに気づいたのは、お茶がすっかり冷めた頃。せっかく温活目的で温かいお茶淹れてもらってたのに! じょ、常温ならまだいいか?
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