5.そうだ!豚汁を作ろう!
日差しの照りが夏に近づいてきた今日は、一年次合同課外実習の日。魔法科・騎士科・
で、今は十人
おかしいな。目の前に巨大なお肉が歩いてるわ・・・・・・。
「あ、豚肉だ」
「何
「いやー、だって
「ボサっとしてないで逃げるよ! レティシア!」
「なんで? それよりさぁ、アリス。豚汁食べたくない?」
「
「逃げてたら、実習の意味無くない?」
「それとコレとは別でしょう!? 先生ですら逃げてるんだよ!?」
「えー・・・・・・お腹すいたのに」
そう。何故か先生が真っ先に逃げてる――何でよ? オークぐらい倒せないと、この学院で先生やっていけないんじゃない? まさか、
「じゃあとりあえず、動かなくなったらいいんだよね?アレ」
「え? いや、まあ。そーだけど・・・・・・」
「じゃあ、そーれ」
ドーン・・・・・・。
普通のより少し大きめの
「「「・・・・・・え?」」」
「いや、だから可愛いもんだよ?アレ」
「「「・・・・・・」」」
「何で先生まで『え?』みたいな顔してるんですか? はぁー・・・お腹すいちゃったし、豚汁でも作っていーい? 倒した魔物は生徒の
「えっええ。そうですね・・・・・・」
「レティ!?」
ちょっと圧込めたからって、ビビらなくてもいいじゃない? そ・れ・よ・り!ちゃきちゃきと動きますよ? 鮮度が大事だからね! キビキビ動いて、サッと手速く部位を分けていく。あ、このオークさん、魔石持ちじゃん。だから、ちょっと大きい個体だったんだね。浄化かけてからじゃないと、周りのお肉が美味しく食べれなくなっちゃうんだよねー。
「コレくらいで逃げてちゃだ〜め! 特に、そこの騎士科!!あと、先生も!! さっさと
「「「ハイィィぃぃ!!」」」
私は知らなかったんだ――すっかりペッシャール家に毒されてるって事をね。料理が好きな私には、日本よりも色々な意味で生き生きと料理をする環境が整っていた。
ちなみにどの公爵家に行っても、一般人からしたら逃げて応援を呼ぶ必要があるオークは、ゴブリンやスライムに匹敵する初心者向け魔物と言われる。学院で初心者にしか教えない平和ボケした教師たちが、逃げるのも無理もない。騎士科の教師である現役の騎士の先生たちは、毎年この時期になると騎士科の上級生を連れて南公爵領の訓練地で対陸の魔物討伐練習合宿を行うために不在。本来ならこの国では魔法科も官吏科も戦えないといけないのに、職務を
あ、あの木の根元にキノコ生えてる! 土が良いんだ――ここ、ふかふかじゃん! 秋になったらキノコ採りして、キノコのお味噌汁作りたいなぁ。そんな呑気なことを考えながら、テキパキと素材として売れる部分・食用に向く部分とに分けていく。
結局、先生達は捌き方も知らず、私が全部捌いた。
あ、アランくんは後から知ったけど攻略対象の一人。騎士団長の息子さんで、ルシールさんとラウルさんは騎士団長の
思考が
いつの間にか自前エプロンに身を包んで、料理し出す私の横にスタンバイするアリス。説明した通りに
ガックリと肩を落としたい気持ちを内にしまい、手招きで騎士科生達と先生を呼ぶ。何で私の班はアリスと私(と使えない先生)以外、騎士科しかいないんだよ。しかも使えな・・・・・・もう、いいや。お腹空いたー!! ちゃっちゃと教えて、パパッと作って食べる!!
おっと、『
『障壁』は基本属性と上位属性で使える結界のことで、大体十人程度守れる大きさ。匂いも
そそくさと『障壁』を張らせ、空間収納から出した蒟蒻、
一番問題だったのが先生。ぬるま湯に
四公爵家なら野営は当たり前だから、前線に行く人は
みんなが野菜と
野菜と格闘し終えた人から順番に、小鍋に脂をひいてさっき切り分けたお肉を焼かせる。今回は野営版だからお肉に半分火が通ったくらいでイモとエペの根、水を入れて煮込む。私とアリスの分だけ、空間収納からこっそり取り出したストックしてあった
やばい・・・・・・
ノリノリしすぎて途中で騎士科生に
野菜が煮えたところで一度だけ
味噌が溶けたところに作った天かすを入れ、
汁物用の器も行き渡ったところで、それぞれ鍋を火からあげ、各自座ってお昼にする。先生のは、私が作ってた大鍋からよそって渡した。
女子二人で、こっそり「いただきます」と手を合わせて食べる。あぁ、出汁とお肉の脂のジュワッと溶けていく甘さが混ざって美味しい――これ、あとで知ったら殿下怒るよね・・・・・・。
「・・・・・・美味しい。やっぱりお味噌汁とご飯って、最強だよね」
「アリスは、特にお味噌汁が好きだったもんね」
「レティが作るのは、間違いなく美味しいしね!」
「あら、嬉しい! そんなアリスに、あとでデザートつけちゃう!」
「やった! ありがとー」
小声でこんなやり取りしている向かいからは、「これ、俺が作ったのか?」や「うまい・・・・・・」とか、初めて作った豚汁を味合う男たちの会話が聞こえてきた。しっかり
アリスと二人
先生よりも私が先生したような課外実習は、ご飯の後に出てきたスライムを倒す戦闘訓練をして終わった。他の班より私たちの班の騎士科生が自信を持てたのか、実習後の復習
課外実習があった次の日のお昼。案の定実習中の行動がバレていた私は、何も言わずに空間収納から豚汁とおにぎりにしておいたご飯を取り出す。笑顔が怖い方から優しい方に変わった殿下は、嬉しそうに食べていた。ほんと、誰が報告してんのよ!?
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