4.変わらない幸せ(2)
ふと、紅茶を口に運ぶ途中で止めた。入学式後のアレが気になっていたので、今のうちに聞いておきたい。
「そうそう。私、てっきり入学時の魔力内包量測定で、イベントでも始まるかと思ったわ」
「あぁ、あれね。初イベントは、確かに測定時だよ」
「え? 何も起きてないよね?」
「うん、起きなかったねー」
「ちなみにイベントって?」
「五歳の属性鑑定を受けてないヒロインが、魔力内包量と一緒に属性鑑定を受けるんだけどね。そこでまさかの貴重な『聖属性』が開花する、『聖女イベント』が起きるの」
「え・・・・・・聖女サマ?」
「なってない、なってない! ていうか、見てたでしょ!? 緑と聖のはずが、聖属性なかったし。緑メインの多属性だったじゃん! まあ、
「うん。火の特化じゃなかった。寧ろ、メインは風」
「やっぱり、
「そういえば暴走ってイベントあったわね・・・・・・」
「あっても、あの殿下がなんとか出来そうじゃない? それに、勉強嫌いのレティシアが魔力制御の訓練をしたくないって
「まぁ、訓練やらないと厨房に入れてもらえなかったし・・・・・・。料理に使いたいって、先生とノリノリで訓練やってたからね」
「じゃあ、測定の聖女イベントみたいに無いでしょ?」
「そんなもんかなぁ」
「そんなもんだと思うよー」
紅茶を一口飲むと、八つ橋風クッキーとは別の梨ジャムが入ったパウンドケーキを食べ出したアリス。涼香の時も思ってたけど、この子の胃袋どうなってるんだろう? もう、クッキー十人分くらい食べてるんだけど・・・・・・。アリスになっても、胃袋ブラックホールは変わらないのね。
「そういえば、ヒロインって虐められてるんじゃなかったの?」
「あー、話せば長くなるけど・・・・・・
「あぁ。涼ちゃん肌荒れ
「まさにそれよ! お母さん亡くなってから引き取られた時に思い出したの、前世の
「それは――確かに」
「でね? 別に手をあげられたりしてないし、陰口か無視だけだったからさ。これから一緒に生きていくなら、息苦しい環境なんてなおさら嫌だし。何よりお父様のせいで傷ついた
「え!奇跡じゃん! 涼ちゃんの得意分野ね!って、あれ? 薬草専用ってことは、誰か使ってたの?」
「庭師のおじいちゃんに聞いたら、お父様の妹――
「よかったね! 自作できるじゃん――ってことは」
「そ! 化粧品なら、気にならない女子はいないでしょう? 温室こもって作ってたら」
「うんうん」
「使われてなかった温室で作業してたのが気になったお継姉様に、何やってるのか問いただされて――化粧品作ってるって言うと
「試して?」
「仲良くなったどころか、商会作っちゃった!」
「てへ」って言いながら
「もしかしてアメリス商会?」
「そーだよ! お継姉さまと私の名前からね!」
えっへんと胸を張るアリス。涼ちゃんの性格も相まって、
「なんの話してるの?」
「お継姉様!」
授業を終えたアメリーが、アリスの隣に座る。いや、ほんと似てるなぁ。可愛いが二つって感じよ。ゲームでしていたゆるふわパーマじゃないストレートヘアのアリスだから、アメリーのダークブラウンのストレートヘアと並ぶとグラデーションみたいで綺麗・・・・・・って、そうじゃなかった。今日もとりあえず、ここで『ゲーム』の話はお
授業を終えた他の生徒たちも続々とやって来て、静かだったサロンも
優しく差し込んでいた春の日差しも、主張するかのようにしっかり目に差し込んできた。少し遠い講義室で受けている殿下達を、先程までアリスが独り占めしていたクッキーをお供にお茶をしながら待つ。彼らが来るまで、日本にいた頃と変わらない味を
え!? アメリーの婚約って、ディオン殿下の一目惚れからのゴリ押しだったの!? ディオン殿下、一目惚れした相手が貴族の御令嬢でよかったね。
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