第二章
1.ヒロインとゲームスタート?(1)
朝日に照らされた窓を開けると、春の暖かな風が通り過ぎていく。今の私には眩しすぎる穏やかな陽気に包まれながら、今日から始まる新生活のため、
わざわざ今日の門出を祝うが為に領地から出てきてくれた父と、学院滞在中に社交をする為と理由をつけて私を一人にしない為に付いてきてくれた母と共に、新たな生活に
入学式の時間に合わせて学院のローブを
「おはようレティ」
「・・・・・・おはようございます、リオネル様」
両親とも挨拶が終わった殿下は、当たり前のようにエスコートして馬車に乗せてくれた。ルシールさん、知ってたなら教えて欲しかった・・・・・・。落ちていくはずだった気分も、殿下のおかげでどこかに行ったから良かったのかもしれない。
殿下と護衛二人の四人で王家の馬車に揺られて学院へ向かうと、学院の門の
「・・・・・・リオネル様。あの方、何かあったのでしょうか?」
「ん? どの人だい?」
「あの門の
「・・・・・・本当だね。どうしたんだろう? 声をかけてみようか?」
「リオネル様。もし寮住まいの方たちだった場合、私達二人で声をかけると
やや
「わかった。必ず呼ぶんだよ? 私も降りるが、少し離れた場所で見守っているよ。必ずだよ?」
「はい。ありがとうございます、リオネル様」
微笑むと、仕方がないと言わんばかりの表情で
行ってきますと殿下に
彼女へ近づくにつれ、何かブツブツ聞こえてきた。確かに百面相しながらブツブツ何か言っていたら、近くに行きたくはないわね。普通に怖いわ。だが、病気や怪我なら困るので、勇気を振り
『・・・・・・あぁ、・・・・・・った。本当に
避けられな、い? 何が? 懐かしい日本語につられて、ゆっくりと側へ寄るとはっきり聞こえてきた。
『本当、なんでニカがハマってた乙女ゲームなんだろう・・・・・・。どうせ転生するなら、悪役令嬢がざまあするラノベの世界が良かった・・・・・・ヒロインじゃなくて、モブで悪役令嬢を
ヒロインと聞こえてきて、自分が忘れそうになっていた落ちかけの気分がどんどん押し寄せてきた。多分、彼女がこの乙女ゲームの世界のヒロイン、アリス・ロゼ・タイヤールで間違いない。聞いてた雰囲気とは少し違うが・・・・・・それよりも二カって――これは確かめるしかない。彼女が言う『ニカ』が私の知る『
彼女の斜め向かいから、少し
「あの。こんな所で立ち尽くして、何かありましたか?」
私の声に驚いた彼女は、目を
「――!! あ、えっと、その・・・・・・ちょっと」
いきなり声をかけられて
『
「黒こしょ・・・・・・って、えぇ!? 『その・・・・・・隠し味は?』」
『
「!!」
殿下とは在学生代表挨拶がある為、この後直ぐに別行動予定。ルシールさんやラウルさんとは、学院内は騎士科生や騎士科担当の講師が現役騎士で
更に今日の予定は、入学式後に魔力内包量の測定だけ。クラスは魔法科・騎士科・
「
その言葉に、周りをチラッと見回したヒロインのアリスは、状況を理解したのか直ぐに欲しい返事をくれた。
「――!!
「アリス?」
返事をくれて直ぐ、ヒロインを
驚いている私の横から、ヒロインの鈴の鳴るような可愛らしい声が聞こえてきた。
「お
「こちらって・・・・・・」
スッと私の方へ目を移した二人は、私を見て目を見開いた。またか・・・・・・と思っていると、
「レティ。ここでは皆の邪魔になってしまうから、とりあえず中に入ろうか。式までまだ時間があるし、会場近くに休める場所があるからそこへ行こう。君たちもどうだい?」
確かにここ、門の前ですごく邪魔。そして、皆口にしないけど、まさかの大物二人の登場。うん、移動しよう!
殿下の誘いに、ネモフィルの王太子は直ぐに
「ええ、
「では、行こうか」
殿下に
降り注ぐ暖かな日差しとは別に、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます