第20話 レロレロ

 俺は謝罪して回る事にした。

 最初はアイナだ。


「申し訳ございませんでした」

「急に改まって何よ」

「承諾も無しにエッチな事して不快だったと思う。遠慮なく殴ってくれても良い」


「改心したのね。もうエッチな事はしないのね」

「いや、それはやる。パートナー限定で、承諾を得てな」


「反省したと思ったらこれね。まあ、今までの事を謝りに来たというのが進歩なのよね。分かったわ、許す」

「ありがとう。これで気兼ねなくエッチな事が出来る」

「もう、エッチなんだから」


 次はモーラだ。


「申し訳ございませんでした」

「何でございましょう。謝られる覚えはありませんわ」

「承諾も無しにエッチな事して不快だったと思う。風の鞭で叩いてくれてもい」

「その事ですか。貴族にはもっとゲスで好色な男も存在しますわ。あなたは、まだましな方ですの」

「許してくれるのか」

「ええ、最後の一線は越えてないですし」


「ちなみ聞きたいが、俺よりゲスな奴がなんで許されているんだ」

「有能だからですわ」


「じゃ、俺も有能なのか」

「ええ、とっても有能ですわね」


「どんな所が」

「武力と経済力ですわね」


「じゃあそれがなかったら、モーラはパートナーになってくれなかったのか」

「その仮定に意味はありませんのよ。でも、その二つがなくてもパートナーになっていたと思いますわ。あなたは優しい人ですから」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」


 次は俺の被害者である女生徒の一人だ。


「申し訳ございませんでした」

「私はあなたを許さない」


「分かっているよ。酷い事をしたって」

「何を分かっているんですか」


「盗賊に襲われた女の人を見たよ。俺は盗賊と同じ事をしたんだってな」

「そうですね。付け加えればゴブリンやオークと一緒です」

「ああ、そうだな」

「分かってません。ゴブリンやオークの巣穴に運ばれた女性がどうなるか知ってますか。人間性を破壊されるのです」

「俺も酷い事をした」

「全然、分かってません。この世界は女性に優しくない。だから魔法があるのです。腕力に頼らない力が。あなたは女性を貶める為にその力を使った」

「これからは女性に喜ばれる使い方をする。誓うよ」

「まだ駄目です」


「何をしたらいい」

「では一生償って下さい」

「一生償う事を誓う」


「何が出来るのですか」

「これ、不安を和らげる呪物」

「こんな物では騙されません」


「ゴミ箱に捨ててくれても良い。ただ渡したいだけなんだ。もし捨ててから、再度必要になったら言ってくれ。いつでも用意する」

「用が済んだら立ち去って、もう顔を見せないで」


 ドアが勢いよく閉じられた。

 分かっていたさ。

 俺が酷い事をしたって。

 それから全ての被害者を回った。

 反応は似たり寄ったりだ。


 俺は最後の被害者トニアの所に行った。


「申し訳ございませんでした」

「顔を上げて下さい」


「俺は酷い事をした。あれは悪戯を越えていたと思う」

「そうですね。今でも夢に見ます。でも歓喜と恐怖なんです。おかしいですよね」


 トニアの人生を変えてしまったんだな。


「これ、不安を和らげる呪物」

「こんな事をしてもらわなくても」

「謝罪の気持ちだよ。受け取ってほしい」


「では頂戴します」

「俺を許してくれるのか」

「許しません。私を変えたんだから、責任を取ってもらわないと」

「何をすればいい」


「そうですね。あの快感を再現できるまで付き合って下さい」

「そんな事なら喜んで」


「そよ風の形がどうも上手く作れないんです」

「俺は手をイメージしてる」

「ふんふん、なるほど。あれの方が簡単そうですね」


「あれってまさか」

「見せてくれませんか」

「廊下でそんなもん出せる訳ないだろ。露出狂の気なんてないんだから」


「何を言っているんです。舌ですよ。舌」

「それなら自分の物を見たら良い」


「鏡だと見づらいんですよね」

「形なんて多少いい加減でも良いだろ」

「でもイメージが」

「仕方ないな」


 俺は舌を突き出してレロレロした。

 こんなのはたから見たら変態だな。

 でもエロいのかもしれない。

 女の子の舌ならエロさを感じるかも。


 よく考えたら、舌でエロ魔法。

 物凄くエッチだな。採用だ。

 今度、俺もやってみよう。


 俺は女生徒達を回って色々と聞いた。

 盗賊がやるような行為は許せないと改めて思う。


 エロ魔法道第2条を考えた。

 それはゴブリン、オーク、盗賊、痴漢を許すまじだ。


 自戒の意味を込めてそう決めた。

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