第9話 仇討ち

 俺達は翌朝、ゲスークの陰謀を阻止する為に、さっそく行動を開始。

 ゲスークと家族は普段、王都の邸宅に住んでいるが、今週末は今いる屋敷に滞在していた。

 俺達はゲスーク達の隣の部屋に入った。


「で、どうする」

「貴族の嗜みとして聞き耳魔法は覚えていますので、それを使います。聞き耳ヒアリング


「で、どう」


 俺達3人は連なるようになって壁に耳を当てる。

 俺の背中にはアイナの胸が当たっている。

 アイナが俺の後頭部を叩き俺から少し離れた。

 ちっ、勘のいい奴だ。


 俺はモーラさんに背後から密着。

 つい後ろから、モーラさんの胸をむんずと掴みたくなった。


「駄目ですわ。遮音魔法が使われています」

「俺にお任せ。秘孔魔法・霧散拳。これでどう」


 声が聞こえて来た。


「失敗しただと。この無能が。高い金をふんだくったのだから、役目を果たしてもらおう」


 これはゲスークの声だ。


「分かりました。吉報をお待ちを」


 こっちは分からない。

 それから声は途絶えた。


「ヒントにもなってないな」

「今、命令を受けた人の後を付けましょう」

「そうね」


 隣室でドアが閉まる音がする。

 俺達はそっとドアをあけ、廊下の様子をうかがった。

 男が廊下を歩いて行くのが見える。


「待って、今、遮音魔法を使うわ。遮音サウンドインシュレート


 足音は敵に聞こえなくなったと思うが、姿が丸見えだ。

 後を付いていくが、途中で気づかれた。

 やっぱり、隠蔽魔法は必要だな。


 モーラが不要の遮音魔法を解いたようだ。

 戦闘音がどこからか聞こえる。


「嘘よ。この方向はお爺様の居室ですわ」

「よし、そこに急ぐぞ」


 駆け付けると使用人二人とお爺様は事切れていた。


「だから言ったのに、護衛をおかないと物騒だと」


「お前達がやったのか」


 ゲスーク達が現れそう言った。


「白々しいですわ。こんなの事をしておいてよくも」

「ふん、何とでも言うが良い。おい、こいつらを逮捕しろ」


「継承権の第一位はモーラさん何だよな。この場の指揮権はモーラさんにあると思うんだが」

「そうね。ゲスーク一味を始末して下さる」


「ええと報酬次第かな。お触りし放題でどうだ」

「ヒー、ロー。こんな時に何を言うのよ。無条件で手伝ってやりなさい」


「ええい、構わん捕らえるのだ」

「かしこまりました拘束バインド


「火の粉は払いますよ。秘孔魔法・霧散拳。どうします、モーラさん」

「そうね。お爺様の仇を討つためだったら、悪魔でも魂を売るわ。やって」


「秘孔魔法・金縛り拳」

「くそう、動かん。どうなっている。おい暗殺者、俺を助けろ」


解呪ディスペル。これでどうです」

「駄目だ動けん。俺に構わず、やってしまえ。皆殺しだ」


 黒ずくめの男達が現れた。


 こうも短絡的だとな。

 なんか萎えるな。

 まあいい、お触りの為に犠牲になってもらうぞ。


「気を付けろ。奇妙な魔法を使う」

「魔法は解除されると報告にあった」

「一斉にかかるぞ」


 男達は一斉に襲い掛かってきた。

 お触り魔法が縦横無尽に動き、魔力の秘孔を押す。


「秘孔魔法・金縛り拳」


 男達はバタバタと倒れる。


「むぐ……」

「喉まで麻痺させたから、喋れないだろう。魔法が唱えられないはずだ」


 モーラさんが短刀を抜いて動かないゲスークに刃物を向けた。


「女の子がそんな事をしちゃいけない」


 俺はモーラさんから短刀を奪うと、躊躇なくゲスーク一味の首をかき切った。

 人殺しになったが、意外になんとも思わないな。

 後で悪夢を見て飛び起きたりするのだろうか。


「始末はつきましたわ。証拠を押さえませんと」

「黒幕を始末して終わりじゃないのか」


「誰でも殺して良いという訳ではないのですわ。殺した理由をはっきりさせておかないと、後で追及される恐れがあるのです」


 俺達はゲスークの部屋に急いだ。

 部屋には夫人と子供が二人いた。


「あなた達がここにいるという事は失敗したのね」

「叔母様、こうなっては死んで頂きますわ」


「分かっているわ」


 そう言うとゲスーク夫人は毒らしき物を呷った。

 子供二人が震えている。


「始末するのよ」

「子供は殺せないな。お触りし放題は諦めるか」

「なら、私がやりますわ。風の刃エアカッター


 秘孔魔法・霧散拳、発動。

 俺はモーラさんの魔法を消した。


「モーラ、駄目よ。それをやったら人でなくなっちゃう」


 アイナがそう言ってモーラさんを宥めた。


「そうだな。俺も反対だ」

「仕方ありませんわ。修道院に入ってもらいましょう」


「そうだな。それがいい」

「ああ、お爺様、これでよろしいですわね。仇は討ちました」


 俺はその夜うなされる事はなかった。

 なぜか朝になると俺のベッドにはアイナの姿がある。

 ここまできたらオッケーという事だよね。

 まずはおっぱいを。


 俺が形のいいおっぱいに手を伸ばしたらアイナはぱちりと目を覚ました。


氷の槌アイスハンマー

「ぎゃあ。なんでだよ」


「うなされてたから、慰めてやったのに。恩を仇で返すとはこういう事を言うのね」

「分かった。分かったから。アイスハンマーで小突くのを止めろ」


 添い寝してくれて、ありがとうアイナ。

 癒しをもらった気がする。

 アイナがいれば戦っていける気がした。

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