第8話 異世界には女忍者は居ない、従って風呂タイムもない

 モーラさんが椅子の前に立ったので椅子を引いてやった。

 みんなの視線が痛い。

 続いてアイナの席を引いてやる。

 二人に挟まれた形で俺が座った。


 細長いテーブルの端には厳めしい顔つきの老人が座る。


「では食事を始めよう。創造神に日々の糧を感謝します」

「「「「「感謝します」」」」」


 食事が始まった。

 和やかなムードの中食事は進み。


「お爺様、私のフィアンセを紹介させて下さい」

「お前も、もうそんな歳か。わしがその男を見定めてやろう」


「フィアンセのヒロです。現在、魔法学園の実技で首席ですわ。魔法戦無敗です」

「ヒロと申します。モーラにはよくしてもらってます」


氷の槍アイスジャベリン

「お爺様、何をなさるの」


魔力感知マナセンサーそよ風ブリーズ呪いの藁人形カースドストロードール


 お触り魔法を発動。

 つんつん、秘孔魔法・霧散拳。


「ふっ、消去魔法か。詠唱を誤魔化すのはどうやっておる」

「誤魔化してません。3つの最下級魔法で消去魔法を実現してます」

「はははっ、それが本当ならこいつは天才だな。気に入ったぞ小僧」


「天才とは限りません。ペテン師かも知れない」


 禿げた中年の男がそう言った。


「ペテンでも魔法が消えたのは事実だろ」


 俺は反論した。


「ふん、おおかた魔道具だろう」

「叔父様、口が過ぎます」


 この叔父様とやらが俺の敵らしい。

 微妙な空気を残して食事は終わった。


 俺は部屋に戻ると流魔呼吸法を始めた。

 寝るなんて勿体ない事は出来ない。

 頑張って魔力を200年分ぐらい溜めるんだ。


 深夜、天井に人の魔力がある。

 ふっ、来たか。

 まさかとは思ったが刺客が来るとはな。


 天井の板が外れる音がしてひらりと男達が舞い降りた。


風の刃エアカッター


 つんつん、秘孔魔法・反射拳。


「ぐわっ」

「こいつ反射魔法を使ったぞ」

「ならば、身体強化フィジカルブースト

身体強化フィジカルブースト

身体強化フィジカルブースト


 ナイフを抜いて刺客が俺に襲い掛かってくる。

 秘孔魔法・金縛り拳、発動。


「こいつ妙な魔法を使ってる」

「斬れっ」


 ナイフが空中を走る。


「うぎゃあ」


 お触り魔法が斬られた。

 そう来るよな。

 風の魔法は目に見えないから魔力感知だけが頼りだ。

 もやっとでも位置だけ分かられば対処は容易いので、魔力感知はみんな覚えている。

 俺ほど使いこなしているかは別だが。


 そうだ、お触り魔法から出ている魔力を霧散させれば。


魔力感知マナセンサーそよ風ブリーズ呪いの藁人形カースドストロードール


 お触り魔法を発動。

 俺は素手でお触り魔法にある魔力の秘孔を押した。

 これで魔力が漏れないはずだ。


 よし、今だ。

 つんつんつん、秘孔魔法・金縛り拳。


 刺客が金縛りになったので呼び鈴を鳴らす。

 燭台を持ったメイドがやって来た。


「御用ですか。ひっ」


 メイドさんは今、気が動転している。

 チャンスだ。

 風の手でおっぱいをつんつん。

 よい弾力をお持ちで。


「ヒー、ロー」


 何だよ。

 お楽しみ中だってのに。

 アイナは何で俺の事が分かるんだろう。


「アイナさん、それよりも刺客を片付けないといけませんわ。そこのあなた、ロープを持って来て頂ける」

「はい、只今」


 我に返ったメイドさんが走って視界から消え、ほどなくしてメイドさん3人がロープを持って現れた。

 ロープを掛けられた刺客を喋れるように秘孔魔法・解除拳を掛ける。


「俺達が喋ると思うか」

「思わないし、どうでも良い。それよりも何で女の刺客が来ない。ちくしょう何かの陰謀だ。訴えてやる」

「陰謀でしょうね」

「モーラさん、ヒロの馬鹿はそういう事を言っているんじゃないけど」


「だって忍者なんかは、半数ぐらいがくのいちじゃん」

「女の刺客が来ないのは、腕利きを雇ったからですわ」


「腕利きだと女が居ないの」

「ええ、少ないですわ」

「こいうのは安い奴を雇ってから段々と高くしていくもんだろうよ」

「何の為にですか」

「そういうお約束なんだよ」

「ヒロの話を聞いていたら埒が明かないわ。とにかく朝まで三人で固まっていましょう」

「そうですわね」


「聞いていいか。敵は叔父さんという事で良いのか」

「ええ、そうです。いくら私が結婚したら女伯爵になるとは言え、叔父さんも手段を選ばなくなりましたわね」

「ちなみに叔父さんはなんて言うんだ。これから殺すかもしれない男の名前ぐらい知っておきたい」

「ゲスーク・ルドウィンですわ」

「よし、覚えたぞ。すぐに忘れるかも知れないがな」


 敵の名前より重大な事がある。

 女の子と一緒の部屋で一晩かぁ。

 ちょっと、たぎってきた。


「この線を越えたら殴るからね」


 ロープで部屋を区切られてしまった。

 しくしく。


 ふふん、諦めるものか。

 お触り魔法をそろそろと近づける。


 ロープを越えた途端、アイナに握り潰された。


「手が、手がぁ」

「お見通しよ」


 くそう、流魔呼吸法でもやって過ごそう。

 良いんだ今に見てろよ。

 隠蔽魔法を絶対に覚えてやる。

 ぐふふっ、隠蔽魔法を使ったら女湯を覗けないかな。

 夢がひろがりんぐ。

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