第6話 アイナ、転生

Side:アイナ


 私は野方のがた愛菜あいな

 今はよぼよぼのおばあちゃん。

 寿命を迎え、私は死んだ。


 白い空間にポツンと一人。

 ふーん、死んだらこういう風になるんだ。


「今回、呼んだのは他でもない」

「うぁ、びっくりしたぁ」


 綺麗な男の人が目の前に立っていた。

 この人は死神さんかな。

 私、転生するのかな。

 世界の仕組みがそうなっているのなら仕方ないわ。


「続きをいいかな」

「ええ、どうぞ」


「心残りがあるのではないかな」

「あります。若い頃に交通事故にあって助けてもらいました。彼に一言、お礼を言いたかった」

「ふむ、彼のこれからについて聞く気があるかね」


「ええ、彼にこれからがあるのなら」

「彼は先ほど転生した。しかし、転生した後は幸福な人生は送れないだろう」

「何故ですか。できる事なら彼を救ってあげたい」


「理由は君にも関係している。君はあの事故で死ぬ予定だった。イレギュラーが発生したのだよ」

「そうなんですか。じゃあ彼が私の代わりに死んだのですね」


「そうだ。そして彼は正常な転生が出来ない。記憶も消せないし、魂の無駄な部分もそぎ落とせない」

「そうなるとどうなるんですか」


「魔法の才能が無い人間が生まれてしまう。しかし、彼が本当に不幸になるかは分からない。イレギュラーなのでね。もちろんハンデだけでは無く、逆の利点もあるがね」

「どんな利点ですか」


「魂が肥大化してしまった事で、多大な集中力が生まれる。常人には真似できないほどのね。だが、魔法の才能がないので大した事は出来ないだろう」

「私に何か出来る事があるのですか」


「君には彼の人生を正常な物に戻してほしい」

「来世で彼が不幸になるのは決定なんですか」

「分からない。何度も言うがイレギュラーなのでね」


「来世の次で彼が幸福になれるのだったらやります」

「君には彼のイレギュラーを治すワクチンになってもらう。別に君が不幸になったりしないので安心してほしい。ただ、君の魂と彼の魂が結ばれてしまうがね」


「やります」

「そうか、では良き来世を」


 私アイナ、3ちゃい。

 あれっ、何か重要な事を言われた気がする。

 何だっけ。


 何でか赤ん坊の頃から一緒にいるヒロの考えがわかるのよね。

 なんでかな。


 ヒロはエッチだ。

 お母さんにその事を言ったら、男はみんなそうよと返ってきた。

 変なの。


 時は流れてある日、ヒロは女の人に悪戯して魔法で打ちのめされた。

 大変。

 このまま大きくなったら、ヒロが死んじゃう。

 ヒロのエッチなのを治してあげないと。


 お母さんに相談した。

 男が馬鹿な事をしでかしたら、思いっきりつねってやるのよ、正気に戻しなさいと言われた。


 でも、ヒロのは、つねったぐらいでは治らなそう。

 そうだ。

 魔法で軽く痛めつければ。


「ヒー、ロー」

「待て、話せば分かる」

氷の槌アイスハンマー

「ぎゃあ」


 怪我にならないように殴ったけど、大丈夫かな。

 こそっと回復魔法を掛けてあげましょ。

 でもヒロが心配だわ。

 このままだと女性のトラブルで死んでしまうんじゃないかな。


 嫌だ。

 ヒロが死んだら嫌だ。

 ヒロの事を思うと胸が痛い。


 やっぱり、心を鬼にしてヒロを矯正してあげないと。


 ある日、モーラさんから、呼び出しを受けた。


「突然、お呼びして申し訳ありません。実は彼、ヒロについて話したい事があるのですの」

「どういう事ですか」


「領地に帰る旅行に、彼をお借りしたいのです」

「私に許可を取らないでも」

「いいえ、彼に嘘の婚約者になってもらおうかと考えております」

「駄目よ、駄目」


「彼以外の人に頼むのは心ぐるしいのです。命がけの依頼になるのですから」

「それならもっと駄目」

「ですが、彼は既に巻き込まれています。私を狙った相手を撃退してますから、今後命を狙われる事があるやも知れないのですわ」

「私も一緒に行けるのなら良いわ」


「では私の使用人という事でいかがでしょう」

「それで良いわ」


 何だかモヤモヤする。

 嫌、嫌よ。


「違う、私も婚約者になる」

「彼の婚約者が二人ですか。貴族では複数の妻も珍しくはないので良いでしょう」


 うん、すっきりした。

 婚約者なら近い所でヒロを見張れるわ。

 それにモーラさんとヒロを二人っきりにするのは不味い気がする。

 エッチが爆発するんじゃないかな。

 邪魔しないと。

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