第3話 お触り魔法

 俺が次に向かったのは呪い魔法の先生の所だった。


「初めまして、ヒロといいます」


「ローニー、よろしくぅ。ふひひひ、なにようかなぁ」


 ローニー先生は長い前髪を垂らしてホラー映画の悪霊みたいだ。

 ぱっと見は男か女か区別はつかないが、声は男だ。


「先生、髪の毛を入れた人形を傷つけると、いれた髪の毛の人に痛みが走るっていう魔法ありますよね。藁人形魔法でしたっけ」

「ふふふ、あるよぅ。なにぃ、覚えたいのぅ」


「ええ」

「あれはねぇ、最下級魔法だけどぉ、とっても使えるよぅ。人間に使うとぅ、魔法を破られてぇ、倍返し食らうけどぉ。ふひひっ、モンスターならぁ、やりたい放題だからぁ」


「分かりましたから早く割符を下さい」

「いいよぅ」


 割符を貰い図書室に行き魔法をインストールする。

 ええと髪の毛を人形に埋め込んで、その人形にいろいろとするんだな。

 女生徒の髪の毛を人形に仕込むと思うだろ。

 ちっちっちっ、違うんだな。


 そよ風に俺の髪の毛を仕込む。

 こうすると風が触ると、俺に触った感触が生まれるという訳だ。


 ふっ早速実戦だぜ。

 ベンチに座っている女生徒に俺は狙いを定めた。


そよ風ブリーズ呪いの藁人形カースドストロードール


 ふむ、ふよんとな。

 もみもみ、何とも言えない揉み心地。

 そよ風ブリーズ魔法と呪いの藁人形カースドストロードール魔法のこの合わせ技は、お触り魔法と命名しよう。


「きゃー。誰? 誰が触っているの? 透明化魔法なの。あんっ」

「ヒー、ロー。氷の槌アイスハンマー


 アイナが現れた。

 アイナって急に現れるけどもしかして超能力使ってる。


「ヒーローってのはHとEROから出来てるんだぜ。うぎゃあ」


 我が魔法人生に1マナの悔いなし。

 くそう、これも失敗だ。

 何がいけない。

 そうだ。

 俺が見える所にいるからいけないんだ。

 壁の向こうからでも出来るようにしないと。


「リリー先生。魔力感知魔法を覚える許可を下さい」

「ヒロ君、あなた授業に一つも出てないようだけど、このままだと落第よ」

「いいんですよ。卒業できなくっても」

「駄目よ。卒業しないと、一生親不孝者って言われるわ」

「じゃあ、魔力感知魔法を覚えたら授業に出ます」

「約束よ。魔力感知魔法は基礎中の基礎だから、覚えておいて損はないけどね」


 俺は割符を貰い魔力感知魔法をインストールした。


「ではさっそく。魔力感知マナセンサー


 自分の部屋でやったのだが、ぼやっとした物が自分にあるのが分かる。

 とりあえず、隣の部屋ぐらい分かるようにならないと。


 俺は物凄く集中した。

 それこそ血管が切れるぐらいにだ。

 そして1週間。


 隣の部屋の魔力がもやっと感じ取れるようになった。

 でもこんなのじゃだめだ。

 俺は食べる暇や寝る間も惜しんで魔力感知を磨いた。


 俺は何日、飯を食ってないんだろう。

 隣の部屋にいる人間が放つ魔力の輪郭が見えた。

 シルエットは女性のようだ。

 シルエットだけだけど、この状態でもなんとなくエロいな。

 もっとだ。

 立体で感じ取れるようにならないと。

 冒険者ご用達の、水で溶かすだけの簡易スープを飲んで過ごす事1ヶ月。

 遂に立体で魔力感知が出来た。


 裸の輪郭が立体で分かる。

 エロいぞー。

 これはエロい。


 よしもっとだ。

 更に1ヶ月。

 なんと魔力の流れが完全に分かるようになった。

 そして流れの意味も分かる。


 なんか思ってたのと違う。

 おれの理想では肌の色が付いて、ヌードが見えるはずだったんだ。

 血管みたいな物が見えてもエロくない。

 もうこれ以上やっても意味がないな。


 あれっ、いまガラスが割れる音がしなかったか。

 魔力感知で見ると隣の部屋には二人の人間がいる。


 人間は男と女だ。

 男女で寮の同じ部屋に入ってはいけない決まりになっている。

 うらやまけしからん。


 あれっ、攻撃魔法を撃ち合っているぞ。

 その割に声や音が漏れないな。

 感知には部屋全体を覆う結界が見て取れた。

 これは大ごとだ。

 俺は廊下に出ると隣室の扉の前に立った。


 扉を開けようとしたが開かない。

 どんどんと扉を叩くが返答がない。


 よし女の子を助けよう。

 おっぱいが無くなるのは人類にとって損失。


魔力感知マナセンサーそよ風ブリーズ呪いの藁人形カースドストロードール


 お触り魔法を発動。

 男の方をくすぐれば集中力が途切れるかも。

 お触り魔法はドアの隙間から侵入して男に近寄った。

 火球魔法が放たれ、お触り魔法が燃やされて、霧散した


「ぎゃあ、手が熱い」


 呪いの藁人形を燃やされたら、熱は当然ながら俺に襲い掛かる。

 こんな弱点が。


 それに、魔力感知は基本だから、攻撃魔法に限らず魔法の魔力を感知したら、攻撃するのは熟練なら当たり前だ。

 何か別の手を考えよう。

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