第2話 入学

 遂にこの日がやってきた。

 魔法学園の入学の日。

 俺は今15歳。


 アイナは色っぽくなり始めていて、俺がボディタッチしようとすると真っ赤になって怒るようになった。

 なぜか、俺の手が死角から伸びても阻止されるんだよな。

 ある種の超能力みたいだ。


「さあ、魔法適性を計測します。並んで下さい」


 俺とアイナは列に並んだ。

 アイナの番が来た。


「どうぞ、名前を言って魔道具に触って下さい」

「アイナです」


 アイナがオーブ型の魔道具に触る。

 鑑定石と呼ばれている物だ。

 オーブは眩い光を放った。

 係の人が適性を読み上げる。


「魔力、31年。階級D。余白42。素晴らしい。是非、特待生になって下さい」

「親に相談してみます」

「色よい返事を期待してます。では次の方、名前を言って魔道具に触って下さい」


「ヒロです」


 俺はワクワクしながら魔道具に触る。

 魔道具は少しだけ光った。

 係の人が適性を読み上げる。


「魔力、45年。階級F。余白3。これは」


 うわっ、伸びしろがあるって言えばいいのか、これは酷いな。


「はっきり言って下さい」

「魔力は凄いです。頑張りましたね。ですが、階級と余白が残念というより他はないです。気を落とさないで」


 周囲から最低記録更新だなとの声が聞こえる。

 俺は最下位なのか。

 ふん、それがどうした。

 余白が3つあるという事は最下級の魔法が3つ覚えられるって事だ。

 3つも魔法が使えるんだぞ。

 贅沢を言ったら罰が当たると言う物だ。


 俺は早速、教員の所に行った。

 教員はいい女だった。

 ふう、いつか魔法で悪戯したいぜ。


「魔法を覚えたいので許可を下さい」

「あなたが一番乗りね。もっと、じっくり考えていいのよ」

「もう決めましたから」

「そう、決意は固いようね」


「そよ風魔法をお願いします」

「生活魔法としては良い選択だわ。訓練すればゴミ掃除もできるし、暑い日に扇いで涼をとる事もできる。この割符を図書室の司書に渡してね」


「俺はヒロです。先生の名前を教えて下さい」

「リリーです。よろしくね」

「はい、よろしくしたいです」


 こちらこそよろしくお願いしますという所をよろしくしたいと言ってしまった。

 エロエロとよろしくしたいとの願望が漏れてしまったんだな。

 気を付けないと。


 図書室の扉を開けると鉄格子があって、受付用のカウンターと小窓が鉄格子に備え付けられていた。


「すいません。これ」


 俺は小窓から割符を入れた。


「新入生か。分かった。すぐに用意する」


 小柄な司書が鉄格子の向こうに現れると、割符を手に取り奥に引っ込んだ。

 しばらくして2冊の魔導書を手に取って現れた。


「閲覧30分。ごゆっくり」


 俺は魔導書を手に取った。

 まずは魔法想見点。

 じっくり読む。


 内容は脳内に魔法陣を展開する魔導書だ。

 最下級の魔法陣は点。

 魔力で点を脳内に作る。

 とっても簡単だ。


 次に手に取ったのはそよ風魔法。

 本を開いたら脳内にそよ風魔法の基本の使い方が記録された。


そよ風ブリーズ


 さっそく魔法を発動すると風が起こった。

 ふっ、野望に一歩近づいたぜ。

 だが、このままでは風でスカートをめくることはできない。

 修行しないと。

 俺は魔導書を返して、職員室に戻り、リリー先生に話し掛けた。


「リリー先生、そよ風魔法の練習がしたいです。良い場所はありませんか」

「あるわよ。使ってない教室があるんだけど、埃が凄くって。掃除して貰えるとありがたいわ」


 その教室の鍵を貰い、教室に足を踏み入れた。

 俺が中に入ると埃が宙を舞う。


 魔道具の光に照らされて埃がふよふよ浮かぶのが見えた。


そよ風ブリーズ


 風の形が埃で見える。

 ふはははっ、面白い。

 童心に帰って何時間も遊んでしまった。


 魔法学園の授業は選択制。

 単位を取らないと卒業出来ない。

 俺はどの授業にも出ず、3時間の睡眠とご飯の時以外は埃と戯れた。

 そんなこんなで1ヶ月、ついに俺はそよ風を手の形に制御する事に成功。


 ふっ、実戦といこうか。


そよ風ブリーズ


 廊下ですれ違う女生徒に魔法をかけた。

 めくり上がるスカート。


「きゃー」


 絶景かな。


「あなたね。あなたがやったのね」


 不味い逃げないと。


「許さない。風の刃エアカッター


 この展開は予期してたので俺は安全圏まで逃げおおせた。

 やっぱり遠距離からスカートを操作できるって最高だな。


「ヒー、ロー」


 アイナが鬼のような形相で俺に詰め寄った。

 こいつ、どっから湧いてきたんだ。


「待て。話せば、分かる」

「問答無用。氷の槌アイスハンマー


「ちょっと、それは死ねる。うぎゃー」


 我が魔法人生に1マナの悔いなし。

 それからというもの女生徒達は盾の魔法を使ってスカートを守るようになった。


 くそう、俺は諦めんぞ。

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