第3話 開かぬ色したおもむきへ

 酔い潰れた華のある美女が姉だ。結局彼女は姉を見つけ、一緒に帰っていった。俺はもっと引き留めていたら、側におけたら、今ごろどうなっていただろうと想像してばかりだ。実は幼なじみだったと気づいていたんじゃ?戦争になって恨んでいるのでは?俺のように結婚したり、子どもはいるんだろうか。


 絵の具の蓋が固まって開かない。思いつきで絵を描こうとして、絵の具を引っ張り出してきた。この目の前の燃えるような赤と、今にも崩れそうな廃墟をどうにか形にしたい。そんな俺を嘲笑うかのように、使い古した色は固くしまったまま。俺に力がなくなってしまったからだろう。


 落ち込んでもおかしくないのに俺は面白くなってしまった。この手が直接人を殺したり、指示をしていた時代もあるのに。今ごろ思うように動かないなんて。それともただただ寒いせいか、風はこんなに冷たいものだったのか。厚着してくればよかったな。


 孫は赤色の瞳をしていた。新政府の方針だ。俺が青色にしたから、新しい時代だとでもいいたいんだろう。手術による瞳の色の変更や、管理人や商人へ特別な力を身に付けることを認めた。子どもに限り。空に長くいた母親の子は澄んだ空色の瞳をしていた。あまりに鮮やかでそれを隠すために、周りの子を手術させた。どれだけ長く空にいるか分かってしまう。あの子と違うなんて可愛そうだ。大人の手術は禁止だ。くすんだ青や紺色のその目を手放したいと思う者も元々いなかった。

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