20:00

ああ…。


もう少し、言葉選びした方が良かったかも。


僕は淡島さんに投げた言葉を改めて思い出し、日向の前では言うべきじゃなかったと後悔する。


けど、あの時僕の隣にいた日向はなんの気に求めてないのか、瑠愛さんととても美味しそうに焼き鳥を頬張って幸せそうな顔をする。


…その顔、僕だけに見せてくれないかな。


そう思いながら日向を見ているとその隣にいた瑠愛さんが僕に突然声をかけた。


瑠愛「琥太くんはネギが好きなの?」


…ネギ?


僕は自分が持っていた串を見てみると焼きネギだけのものをずっと食べていたみたいで、口の中に炭火焼とネギの甘みが広がってることに気がつく。


琥太郎「この焼きネギが甘くて…。瑠愛さんのそれは?」


瑠愛「ぼんじり♡」


琥太郎「僕も食べてみたいです。」


瑠愛「おっけぃん♡お肉いっぱい食べて明日からも頑張ろうね!」


そう言って瑠愛さんは僕にオススメの焼き鳥セットと油を流すお茶漬けを頼んでくれた。


その瑠愛さんの行動が僕の気持ちをいつも上げてくれるけれど、今日はどうしても日向の様子が気になって仕方がない。


あんな風に淡島さんと喧嘩別れみたいのを見せつけてしまった上に元から嫌われてるのにこれ以上仲を深めることなんて出来ないのかも知れない。


そう思ってしまうと僕はネギすら喉を通らなくなり、一度トイレへ逃げて気持ちを落ち着けてから席に戻ると新しい焼きネギがお皿の上に置いてあった。


日向「ネギ、冷えるよー。」


琥太郎「え…。あ…、ありがと…。」


僕は日向のまさかの優しさに驚き、毒でも入ってるんじゃないかと恐る恐る焼きネギを食べるけれど、ただただ少し冷えて甘みが減った焼きネギでしかなかった。


それにまた驚くけど、日向は自分がお気に入りの白子という部位を食べてほっぺたが落ちそうなぐらい幸せそうな顔をする。


そんな可愛すぎる顔をこんな大衆の面前で見せないでほしいと思いながらも、こういう時にしか見れないので僕はその顔をおかずにしてお米がふやふやなってしまったお茶漬けを飲み干しご飯を食べ終える。


琥太郎「ご馳走さまです。」


瑠愛「もういいの?」


琥太郎「これ以上食べたらせっかくの衣装がはち切れそうなので。」


瑠愛「…確かに。天ちゃんもそのアイス食べたら今日はやめとこうか。」


日向「そ、そうですね…。ここ最近、ちょっと太っちゃったし…。」


と、日向は自分の頬肉をつまみ、太ったというけれど僕が何も変わらないと思ってしまうのは恋愛フィルターで加工されているからなんだろうか。


それだったら日向が極端に太ってくれないと口出しも出来ないよなと、ないはずの日向との未来を考えてしまった僕は日向と同じアイスを頼み、口の中に残る味だけを一緒にさせてもらった。



環流 虹向/てんしとおコタ

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