12/30
10:00
あー…、寒かったぁ…。
僕は朝から何度も走り込み瑠愛さんが納得いくまで何度も同じシーンを撮った。
その中で1番大変だと思う半裸での撮影も今日で終わったので一安心し、早めのお昼を食べに海鮮丼が美味しいと有名なお店に連れてきてもらった。
けど、温かいものを食べたいと思った僕は海鮮丼ではなくその横にサイドメニューとしてあったカニの味噌汁が気になって仕方がないでいると、トイレから戻ってきた日向が瑠愛さんの隣ではなく僕の隣に座った。
それに驚いた僕だけれど、よくよく見てみると瑠愛さんの隣には僕たちの荷物が両脇に置かれていて座ろうと割り込む隙もないほどに埋められていた。
その運命は瑠愛さんが作り出したものなのか、気まぐれが作り出してくれたものなのか、どっちなんだと考えていると日向は僕が持っていたメニュー表を覗き込み、真剣な顔でお昼ご飯を選び始める。
瑠愛「俺はしらす丼にしよっと。2人は?」
琥太郎「僕はカニの味噌汁と鯛茶漬けがいいです。」
日向「え?お茶漬けあるの?」
と、日向は珍しく僕に話しかけてくれた。
琥太郎「ここに鯛か鯖って書いてある。」
日向「あー、本当だー…。んー…でもなぁ。」
瑠愛「丼と迷ってるの?」
日向「…はい。ホタテと甘エビいいなって。」
…そこはマグロとかじゃなくて?
僕はまさかの王道を選びにいかない日向に少し驚き、瑠愛さんと相談する横顔をずっと見てしまう。
日向「えー…、どうしよう。絶対お刺身美味しいけど、温かいのも食べたい。」
瑠愛「俺は丼1個で腹一杯になっちゃうから、琥太くんと半分したら?」
と、瑠愛さんは少し楽しげな目で僕にアイコンタクトを送ってくる。
日向「えぇ…、それはちょっと…。」
瑠愛「皿に取り分けるだけなんだからいいじゃん♡はい、決まりー♡」
瑠愛さんはすぐに店員さんを呼ぶとしっかり注文を通して取り皿をもらった。
瑠愛「同じ丼を食べる仲って素敵な関係性だよね!」
日向「そうでしょうか…。」
瑠愛「うん!やっぱり美味しいものはみんなで共有しないとね!」
そんなことを言う瑠愛さんは自分の丼も分け合ったけれど、僕と日向だけにしっかりとお茶漬けをわけ合わせて同じように体を温めさせた。
日向「んー…っ!しらす美味しいです!」
瑠愛「だね!このホタテもとろけて口の中ですぐなくなっちゃうー。」
…なんだ、この幸せすぎる空間は。
ずっと尊敬してる瑠愛監督が目の前で美味しそうにご飯を食べていて、ずっと好きな日向が僕と一緒のお茶漬けを食べて喜んでいる。
この時間が永遠に続いてくれればいいのに。
そう思って時間を過ごすけれど、胃が押し上げられるほどお米が多かった丼も味が思ったよりも濃かった味噌汁も全て胃に入ってしまって昼休憩があっというまに終わってしまった。
しかも、明日は大晦日で日向は悠さんと一緒におせちを作るから今日みたいに朝から一緒にはいてくれない。
…学校、始まってほしくないな。
僕はそれを近くの神社でお参りした時に気休め程度にお願いをして午後の撮影に挑んだ。
環流 虹向/てんしとおコタ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます