20:00

今日と明日だけは何にもない日を元々設定してたから私はそのまま瑠愛さんと悠さんの家で年を越すことにしたけど、渡辺もそうするみたいでちょっと気まずい。


けど、ひぃ兄は学校の友達と富士山に行くっぽいし、私には学校の友達も年越しくらい家にいろって言う親もいないからここにいることにした。


瑠愛「あっという間に新しい年になっちゃったね。」


悠「だね。今年は本当にあっという間って感じする。」


と、未来の夫婦さんはお笑い番組を見ながらゆったりとソファーで抱き合っている。


私も尚春先生とこんなことしたいなって思うけど、したら心臓が止まりそうなのできっと出来ないし、そもそも付き合える見込みはない。


けど、ちょっとは頑張りたいから借りた本をこのゆったりとした時間に読み終えようと集中していると、私の横にいい匂いのココアが置かれた。


渡辺「…飲む?」


と、ゲストルームで1人作業をしていた渡辺はちょっと気まずそうに私に声をかけた。


天「飲む。ありがとう。」


渡辺「スプーン使って飲むと飲みやすいよ。」


そう言って渡辺は自分のカップに入れていたスプーンを私のカップに入れて、自分のココアを飲んだ。


私はちょっと甘いものが欲しいと思ってたのでちょうど良すぎるココアを口に入れると、思っていたよりもドロドロで思わずカップに戻してしまう。


天「…え?なにこれ?」


渡辺「え?ココア。」


天「もっとまともに作れないの?」


私は絶対的に配分を間違えているスライムのようなココアを見て眉を寄せる。


渡辺「これが美味しいんだよ。文句言うなら僕が飲む。」


と、私が吐き出したのを見ていなかったらしい渡辺は私のカップを手に取ろうとしたので私は咄嗟にその手を止める。


天「…飲むけど、牛乳持ってきて。」


渡辺「は?そんなに?」


天「こんな原液みたいなココア飲む人いないよ。」


渡辺「カルピスは原液に近い方がうまいじゃん。」


天「美味しいけど、ココアはさすがに違うでしょ。」


渡辺「…んだよ。せっかく作ったのに。」


少し怒りながらも渡辺は私がお願いした牛乳を取りにキッチンに向かった。


瑠愛「琥太くん、生チョコみたいなココア好きなんだよねー。」


と、瑠愛さんは瓶ビールを口にしながらそう教えてくれた。


天「けどこれはさすがにやり過ぎです…。ドッキリかと思いました…。」


瑠愛「そのココア、琥太くんのお父さんがよく作ってたからちょっと寂しくて作ったのかもね。」


悠「琥太くんのお袋の味はどろっとココアなんだ?」


瑠愛「お袋っていうか親父だけどね。」


…けど、そういうのあるの羨ましいな。


私はそんなの思いつかないから本当にお袋の味自体ないんだと思う。


そう思っていると、渡辺はまだ不服そうにしながらも牛乳パックを持って帰ってきた。


私は初めて人の思い出が残っている家庭料理を口にして私もこれを真似しようかなと思ったけど、絶対的に体に悪そうなので辞めておいた。



環流 虹向/天使とおこた

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天使とおこた 環流 虹向 @arasujigram

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