12/31

10:00

今日は大晦日ということもあって、どこもかしこも人で賑わっている。


だから悠さんと一緒に来たスーパーでも人がたくさんいて、なかなか買い物リストに書き出した品物をカゴに入れられない。


悠「…邪魔。」


天「もうちょっと遅めに来ればよかったですかね…。」


ちょっと不機嫌な悠さんは今日の夜食べる予定の年越しそばに乗せる天ぷらを選びに私にカートを任せて1人で惣菜コーナーに行くとついでにはちみつやあんこも手に持って帰ってきた。


天「ナイスです!これであの人混みに行かなくて済みます!」


私は小さい体をうまく使ってくれた悠さんに感謝してまだ混み合ってない場所からなるべく回っていると、顔を合わせたくなかった人が両親と買い物をしていたところに鉢合わせてしまった。


淡島「日向さんだ。隣の方はお姉さん?」


と、淡島さんは両親を先にレジに行かせて自分だけ私の前に残った。


天「ううん。お兄ちゃんの知り合い。」


悠さんも夏さん同様、ひぃ兄と一緒の専門学校に行っていて顔見知り。


あまり絡んでいるところを見たことはないけど、それはきっと瑠愛さんの彼女だからってこともあるんだろう。


淡島「妃李です。」


悠「…清泉しみずです。」


と、悠さんはまだ不機嫌が続いてるのか、少し低い声で私が初対面した時には言ってくれたフルネームを言わなかった。


淡島「日向さんって大人の知り合いがいっぱいいるんだね。なんで?」


天「お兄ちゃんが専門生だから。」


淡島「へー。それで色々教えてもらってるんだ?」


天「…何を?」


淡島「色々だよ。私にはあんまり分からないけど日向さんは教えてもらってるから分かるでしょ。」


そう悪意全開な淡島さんに私は少し腹が立ってくると、隣にいた悠さんは私がずっと持っていたカートを取り、淡島さんを軽く轢いた。


淡島「危な…っ、いですよ…。」


悠「…この子、天ちゃんの友達?」


天「え…。」


私は悠さんが完全にお怒りなのを声で感じ取り、返答もせずに驚いてしまう。


悠「お前、さっきからネチネチうるさいんだよ。顔がある程度整ってても所詮ブスはブスなんだよ。」


と、悠さんは私たちの学年で1番可愛いくてモテる淡島さんを罵った。


淡島「急になに…?」


悠「天ちゃんが何しようと天ちゃんの勝手。人の人生に口出しする前に自分の生き方見直しなよ。」


淡島「…意味が分からないです。」


悠「顔と愛嬌で男が釣れるのは若いうちだけ。その性格、今のうちに治さないと孤独死だね。」


そう言って悠さんは驚いたままの淡島さんを鼻で笑って、カートと一緒に私をその場から連れ去ってくれる。


悠「あのガキ、私よりも背があって腹立つ。」


天「…私もありますけど。」


悠「天ちゃんはいいの。一くんに似て背が高いから。」


理由になってない気がするけど、悠さんがそう言ってくれるならいっか。


悠「ああいう陰湿で遠回しな感じ、1番腹立つ。あの子ってカースト上位?」


天「え?あー…っと、上位だとは思うんですけど、1位ではないですね。」


悠「そっか。まあ、ああいう子は男に嫌われたくないから当たり障りのない感じで遠巻きに突いてくるんだよね。」


今の状況がまさにそんな感じ。


知り合いがいないこのスーパーで友達になったこともない私に話しかけてきたのは、この間の腹いせみたいなものだろう。


悠「学校は嫌になったら休んじゃえばいいよ。うまく規定内の休み取ってギリギリで卒業しても履歴書にはちゃんと書けるから。」


天「…してたんですか?」


悠「うん。学校嫌いだもん。」


じゃあなんで今の専門は行ってるんだろう…。


悠「けど、今の学校行ったお陰で瑠愛くんと出会ってるし、これからのこと考えればプラスだよね。」


天「…羨ましいです。」


悠「天ちゃんは私と出会ってるから大丈夫。先輩が上手なサボり方教えてあげる。」


そう自慢げに言ってしまう悠さんが年上だけれどちょっと可愛く思えて私は素直に頷き、家に帰っておせちの仕込みをしながらサボりテクニックを教わった。



環流 虹向/天使とおこた

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