20:00

尚春先生って、本当にかっこいい。


私が寝ている間に写真で記録してくれていた箇所も作業を進めてくれていて、今この段階で明日の夕方頃には衣装が出来上がってる兆しが見える。


私は尚春先生の手際の良さと何も聞かずにやって欲しいことをやってくれたカッコよさにまた惚れ直していると、ゲストルームのドアがノックされた。


「お久しぶり。天ちゃん。」


と、いつもご飯をご馳走してくれる夏さんが彼女さんの莉李さんと一緒にやってきた。


天「うわぁ!お久しぶりです!色違いのペアコーデですか?可愛い…っ。」


私はとても仲が良すぎる2人のペアルックを見て、憧れのカップルはやっぱりこの2人だなぁと改めて思う。


夏「悠が瑠愛くんいなくて暇って呼び出されたからついでにプチ忘年会しよってことになったんだ。時間あったら一緒にオレンジジュース飲もう?」


天「是非!」


私は一旦作業を休み、みんなが集まるリビングに行くとまさかのすき焼きがあった。


天「…すき焼き!?」


悠「うん。瑠愛くんがお歳暮で貰ったのは勝手に使っていいって言ってたから。」


ひょえぇ…。


瑠愛さんのお知り合いは霜降りのお肉を送ってくれるほど、センスがいい人なんだなぁ。


私の家には毎年いらないと言われるハムとベーコン、娘息子を思ってのお菓子の詰め合わせが送られてくるけれどひぃ兄はもう家にいないし、私は毎年同じものを食べて飽きた。


だからいつものお歳暮じゃない物を見ると、人の物でも気分が上がる。


私は久しぶりにいいお肉を食べれる幸せに満腹になっていると、悠さんが部屋の電気を消してコンロの火とロウソクの火で部屋を灯す。


それは光に弱い莉李さんのためで、私もその手伝いをしていると莉李さんはずっとつけていたサングラスを取った。


莉李「ありがとう。このくらいがちょうどいいかも。」


そう莉李さんは言ったけれど、私たちにはちょっと暗くて物足りない。


けど、みんなでご飯を楽しむためにそうしながらご飯を食べているとコンロの火が消えてしまい、目の前が真っ暗になる。


それがちょっと不便だし、いつもの明かりの元でガスを変えたらこんなにも手間取らないのは分かっているけれど、夏さんも悠さんも莉李さんを軸にして行動していく。


その様子がとても愛されていると思ってしまった私はふと『いいな』と思った瞬間、目が潤む。


夏「一瞬眩しいから目隠すね。」


莉李「うん。」


悠「つけるよー。」


と、3人はつけたコンロの火を見て私が1つだけ涙を落としたことを気付かず、ホッとひと段落してまたご飯を食べ始めた。


私がもし病気になったら誰かがこうやって助けてくれるかな。


そのときは、誰が1番に私の元へ駆けつけてくれるんだろう。


そう考えたけれど、お父さんやお母さんは本当に死にそうになった時にくらいしか来てくれなさそうだし、ひぃ兄も私と音己ねぇだったら音己ねぇを優先しそう。


しかも私にはなんでも話せると思える友達はいない。


それが前は杏だったけれど、今は絶対来てくれないのは分かってる。


あーあ…、またひとりなの思い知らされちゃった。


私は少し痛む左腕の3本線をさすって気持ちを落ち着け、プチ忘年会を心半分で楽しんだ。



環流 虹向/天使とおこた

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