12/28
10:00
「はっ…!今何時!?」
私は知らない玄関の音が聞こえて目を覚ますと、瑠愛さん家のゲストルームで作業したまま寝てしまったらしく、首に激痛が走る。
そんな中で無理矢理体を動かして携帯で時間を確認すると、10時を少し過ぎたところ。
一応衣装はこのままのペースでやったら今日中に完成出来るから1回ベッドで柔軟しよう。
そう思った私は明くんに教えてもらったベッドの上で寝転がって出来るヨガを苦痛を漏らしながらやっていると、扉がノックされた。
天「ごめんなさいっ。」
小さな悲鳴をあげていたことに謝ると同時に扉が開き、申し訳なさそうに入ってくる仕事終わりの瑠愛さんがいた。
瑠愛「…びっくりした。おなってんのかと思った。」
天「おな…?」
瑠愛「こっちの話。衣装どんな感じかな?」
と、瑠愛さんは仕事終わりでもお風呂上がりのようにいい匂いの体を私のそばに寄せて、新着情報を聞いてきた。
天「あと、襟の刺繍が終わったら完成します。お知り合いの方々を呼んでくださってありがとうございます。」
瑠愛「いえいえ。俺が発案者だから出来る限りのことはしたいからね。」
天「…瑠愛さんは元々監督さんだったんですよね?渡辺が監督ってずっと呼んでて気になってたんです。」
瑠愛「してたけど、素人だよ?琥太くんと撮ったのも1回だけだし、ああやってずっと覚えてくれるとは思わなかったなー。」
瑠愛さんは渡辺のことを嬉しそうに話すけれど、私はどうしても同じ気持ちにはなれない。
瑠愛「琥太くんって学校でどんな感じ?昔みたいにおちゃらけてるのかな?」
天「…まあ、みんなの先陣を切ってはいますね。」
瑠愛「へー!やっぱり琥太くん面白いからみんなの人気者なのかな?」
天「一応、学年1モテてますね。」
瑠愛「うわぁっ!色男♡」
瑠愛さんは渡辺自身が話さないことを私に聞き、とても楽しそうにするけれど私は全く楽しくなくてだんだんと申し訳ない気持ちになってくる。
瑠愛「やっぱり中学生の頃って顔が1番だよね。まあ、この歳でもそういう人いるけど。」
天「んー…、私はやっぱり性格かなって思います。」
瑠愛「天ちゃんは1歩大人だね♡好きな人いるの?」
天「いるけど…、叶いっこないのでそばにいることだけ楽しんでます…。」
私がそう自信なさげに言うと瑠愛さんは数秒何かを考えるように空に目を向けてから、口を動かした。
瑠愛「先生とか?」
私は1発で当てられて思わず肩を竦めてしまう。
瑠愛「当たりっぽいね。俺も先生好きだったことあるよー。」
天「…そうなんですか?」
瑠愛「うん。けど、俺の悪い噂で日常会話も出来なくなっちゃった。」
天「…どんな噂だったんですか?」
瑠愛「俺の兄さんが危ない薬売ってるって噂。」
天「え?瑠愛さんのことじゃないんですか?」
瑠愛「うん。兄さんが色々やってて、その代償が全部俺に降ってくるの。」
天「ひどい…。」
この間の私よりもひどいじゃん。
瑠愛さんは何もしてないのに、お兄さんの勝手できっと先生からもクラスメイトからも距離を置かれてしまったんだろう。
瑠愛「暇な人って大概愚痴と噂話が好きだからね。だから、朝昼夜でニュースがやってるんだよ。」
天「…そういう事なんですか?」
瑠愛「うん。政治は文句しか出ないし、スキャンダルは本当か分からないでしょ?ああいうのダラダラ見てる人間の気が知れない。」
と、瑠愛さんは毒づいて笑った。
瑠愛「天気予報くらいは見るけど、自分の地方って5秒くらいで分かるし本当いらないよね。あの時間が流れるくらいだったら映画1本見れるもん。」
天「…確かに。大体2時間以上はやってますもんね。」
瑠愛「そうそう。しかも繰り返し同じニュースやってるのも嫌い。だから新聞1つで十分。」
瑠愛さんは自分のベルトに挟んでいた新聞紙を取りだし、すぐに4コマ漫画を確認してくすりと笑う。
そんな瑠愛さんのことを悠さんは好きなんだろうなぁと思っていると、少し寝癖がある前髪をした悠さんが部屋にやってきて私と瑠愛さんを朝ごはんに呼んでくれた。
やっぱり、私ってこうやって誰かと一緒にいないと気が紛れないのかも。
1人でいるとまた自分を傷つけてしまいそうだなと思った私はひぃ兄の家には帰らず、瑠愛さんの家で最後まで作業をすることにした。
環流 虹向/天使とおこた
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