12/27

10:00

んー…っ、とっても眠い!


けど、私はどうしても借りていた本を数冊返したかったので図書室へ行き、温かすぎて眠くなってくる暖房を浴びながら借りる本を選んでいると図書室の扉が優しく開いた。


そこにはやっぱり尚春先生がいて、いつものように小説がいっぱい並んでいる本棚へ向かう。


私は気づいてないフリをしながら尚春先生の横目につく本棚の端に立つと、尚春先生はいつも通り声をかけてくれた。


尚春「お!おはよう。もう10冊読んじゃったの?」


天「いえ。30日から3日まで貸出がないので3冊分だけ返却しに来たとこです。」


尚春「早め早めの行動はいい事だね。私も見習わなきゃ。」


そんなことを言う尚春先生はまた私に本を選んでくれたけれど、私は眠気のピークを迎えていてせっかくの会話が入ってこない。


尚春「…日向さん、眠い?」


と、まぶたを落としかけた私の顔をまじまじと見てきた尚春先生は私の肩を持って少しふらついてた体を支えてくれていた。


天「ちょっと、徹夜してて…。」


尚春「中高生は体の発達時期だからしっかり睡眠取らないとダメだよ。こっち座って。」


そう言って、尚春先生は私を椅子に座らせると、なんと自分も席に座った。


尚春「もしかしてジャケットが期日までに間に合わなかったとか?」


天「いえ…。夏休み後、すぐに作ったスウェット生地の学ランがあるじゃないですか?あれを今また作って…。」


尚春「また?今更なんで?」


天「本当は今日から使うものだったんですけど、持ち主の事情で使える状態ではなくなってしまったのでもう一度1からやり直してるんです。」


尚春「…あれって3週間くらいかけてたよね?」


天「はい。でも、あの時よりかは手際が良くなってるはずなので明後日までに気合いで間に合わせます。」


私がそう言うと尚春先生はズボンのポケットから携帯を取りだし、何かを確認するとよしと言って立ち上がった。


尚春「私も手伝うよ。今ってその服持ってきてないの?」


天「え…?いいんですか?」


尚春「うん。生徒のピンチに先生が手助けせずに見て見ぬフリなんか出来ないよ。」


…好き。


他の先生はそんなこと言ってくれない。


だって、面倒事が嫌なんだもん。


誰だってそうだけど尚春先生は目の前にいる私をいっぱい助けてくれたから本当に尊敬してるし、好き過ぎる。


尚春「今から15時くらいまでなら暇だから持ってきてもらえばやるよ。その間、日向さん寝てなさい。」


と、尚春先生は少しまぶたが上がらない私の眉下を親指で撫でて私を気力で会話させようとしてくれる。


天「実は今持ってて…。パンツラインと学ランのラインを縫うのが手こずってて…。」


尚春「見せて。」


私は瑠愛さんの家に行って作業する予定だった学ランを取りだし、尚春先生に見てもらう。


尚春「この間も綺麗に縫えてたけど、今回の方が縫い目が綺麗だね。すごいよ。」


天「ありがとうございます…っ。」


尚春「これに沿って俺が進めちゃうから、日向さんは起こされるまで寝てね。じゃあおやすみ。」


そう言って尚春先生は自分が着ていたコートを私の頭に被せて光を閉ざしてくれた。


私は尚春先生の匂いがいっぱいのコートという夢心地な暗闇の中にしばらくいられる幸福感でいっぱいになり、そのまますぐに眠りに入った。



環流 虹向/天使とおこた

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