20:00

夕方まで寝ちゃったよ…。


あの時の眠気的に2時間くらいで起きられると思ってたのに。


私は自分の睡眠欲を侮り過ぎてこれからは昼夜逆転生活確定になってしまうだろうなと思っていると、瑠愛さんが呼んでくれた裁縫が得意な人たちは仕事があると言って帰ってしまった。


私もひと段落したらひぃ兄の家へ帰ろうかなと思っていると、ゲストルームの扉がノックされた。


天「はーい。どうしました?」


私は部屋に入ってきた瑠愛さんの彼女さんの悠さんと顔を合わせながら、少し凝り始めた肩を回す。


悠「ご飯出来たよ。」


天「え、いいんですか!?」


悠「うん。今日1人だし、余ったケーキ一緒に食べよ。」


やった!


悠さんが作ってくれたケーキ、今日でコンプリートしちゃうかも。


私は一度作業を辞めて悠さんが用意してくれたご飯の前に座ると、昨日とてつもなく美味しかった唐揚げがあり目が飛び出そうになる。


天「この唐揚げ…。」


悠「美味しいから冷蔵庫の奥に取っておいたの。家主の特権ね。」


そう言って悠さんはキャベツいっぱいのお皿に唐揚げを2つ乗せると幸せそうに頬張り、瑠愛さんがいなくても楽しげに過ごす。


そんな悠さんと一緒にご飯を食べ進めつつ、ちょっと興味を引いた映画を見ていると20人近い人が大きなダイニングテーブルを囲んでパーティーをしているシーンが流れた。


それを見て今年の夏休みにこの家で悠さんたちと過ごしたのを思い出し、実家よりも居心地がいいとまた思ってしまった。


それにちょっと罪悪感を感じていると、悠さんが最後の1個の唐揚げをくれた。


天「ありがとうございます!」


悠「うん。天ちゃんってお袋の味って言えば何?」


天「お袋…?」


悠「そう。お家の人が作ってくれた中で定期的に食べたくなるご飯って何かある?」


天「んー…」


私の家は大体お母さんがご飯を作ってくれるけど、料理が苦手なのか外食で食べるご飯が美味しいと思ってしまうことが多い。


この間は、ボーッとしてたのか豚肉じゃなくて鶏肉のロールキャベツ作ってたし、私の家ってご飯に執着してないのかも。


天「…ないかもです。」


悠「お家の人、あんまりご飯作らないの?」


天「作ってはくれるんですけど、食に無頓着なのか味付けがバラバラで美味しいって思って食べたこと一度もないかもです。」


ただ栄養を必要分入れてるようで薬じゃないのは満腹中枢を刺激するためな感じの食事。


だから、友達だった杏のお母さんが作ってくれたお好み焼きとか、音己ねぇがこの間くれたマフィンとか愛情が入っていると感じるご飯を家で食べたことがない。


悠「私の家もそんな感じ。だから外でご飯食べるの好きなんだ。」


天「でも、昨日のご馳走って全部悠さんと瑠愛さんが作ったんですよね?」


悠「うん。レシピサイト見て1ヶ月くらい練習しといた。実家ではガスコンロの付け方と包丁の持ち方教わったくらい。」


天「…けど、あんなにすごいの作れちゃうんですね。」


悠「料理ってある程度基礎知ってれば大体美味しくなるんだけど、多分味覚が合わないから美味しいと思えないんだろうね。」


そう言って悠さんはケーキを取りにキッチンへ行き、ケーキとパーティで少し人気がなかったアップルサイダーを持ってきてくれた。


悠「瑠愛くんもないって言ってて、私もないからイチから作ってみようってなったんだけど中々思いつかなかったんだ。」


天「うーん…、TVとかでは定番は肉じゃがとか聞きますよね。」


悠「それは好きな人の胃袋を掴む時じゃない?」


私は自分の思い違いにびっくりして少し顔が熱くなる。


悠「出来ることなら思いつきでサッと作ることが出来るご飯がいいなって思うけど、何がいいかな。」


そう私に色々な候補を出させる悠さんは携帯でメモを取りながら、瑠愛さんと自分のためにお袋の味を決めて今度私と一緒に作ることを約束してくれた。


私はそれを楽しみにしてひぃ兄の家に帰り、また1人で作業を進めた。



環流 虹向/天使とおこた

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