20:00

今年は散々なクリスマスだけれど、終わりが近づくに連れて楽しい気持ちが増えていく。


音己「これで大丈夫そう…?」


ひぃ兄にプレゼントされた綿毛のような真っ白いニットワンピースを着こなしている音己ねぇは、サンタさんも来てくれたみたいで首元にゴールドで細身のチェーンにピンクの石がワンポイントあるネックレスをつけていてとっても可愛い。


天「うん!ここの仮縫い地味に大変だったから助かった。」


私は衣装の復元を手伝ってくれた音己ねぇにプレゼントを渡して、一息つく。


すると、その様子をずっとそばで見ていた渡辺が新しいほうじ茶をテーブルに置いた。


渡辺「すみません。僕の管理不足でパーティーなのにこんなことさせてしまって。」


と、渡辺はソファーに座っていた体を床に落とし、頭を深々とさげた。


音己「いいのいいの。紀信きしんくんの手伝いが出来るならなんでもやっちゃう。」


音己ねぇは渡辺が紀信 琥太きしん こたと言う名前の子役としてTVに出ていた時期をよく知っているらしく、今でもファンを継続してる様子でたまにお菓子を貢いでるらしい。


渡辺「日向も本当にごめん…。なんでもやるからなんでも言って…。」


だいぶ渡辺は落ち込んでいるらしく、スクールカースト1位の面影もない。


それを見て私は本当になんでもやるか試しに言ってみる。


天「じゃあ、あとで肩揉みして。とりあえず音己ねぇの肩揉みから。」


渡辺「え…っ。」


天「なんでもするって言ったじゃん。」


渡辺「…分かったよ。」


私は大人しくなった暴君リーダーを口で操れたことに少し心が楽しんでいるのを感じていると、瑠愛さんがお菓子を持ってやって来た。


瑠愛「俺の家で全部管理しとけばよかったね。本当にごめん。」


と、瑠愛さんは全く悪くないのにそう謝った。


「「瑠愛さんは悪くないですよ。」」


私は自分の声と渡辺の声が丸かぶりして思わず音己ねぇの肩揉みをしている渡辺と目を見合わせる。


瑠愛「でも、2人が仲よさそうでよかった。作品はチームで作るし、今回は3人しかいないから密な関係性でいたい。」


と、瑠愛さんは言ってくれたけれど、私はどうしても渡辺とは密な関係性にはなりたくないと思ってしまう。


瑠愛「俺の知り合いで裁縫得意な人見つけとくから、来週の29日までになんとかなりそう?」


天「んー…、まあ私が夜なべでやれば出来るのでそこは心配ないです。」


瑠愛「成長期の子はちゃんと寝てほしいけど…、琥太くんが出したいエントリーの期限が1月10日だからね…。本当、ごめん。」


天「大丈夫です!衣装代は貰ったし、元々予備があったらこんなことなかったんです。だから元は私のせいです。」


私はみんなが謝罪ばっかりするのが嫌でそう言うと、瑠愛さんが急に抱きついてきた。


瑠愛「天ちゃん、本当にカッコいい!好き!」


と言って、瑠愛さんは私の耳にキスをしてオーブンの鳴った音と彼女さんのゆうさんに呼ばれてオープンキッチンに戻っていった。


私は顔が暑いのを渡辺に冷やしてもらうようそばにあった雑誌で仰いでもらっていると、早く会いたいと思ってた人がやっときた。


私はその人の元へ走り出し、しっかりとラッピングしたプレゼントの箱を渡す。


天「ジャケット、出来ました!おまけ付きです!」


来虎「おお…!本当に作れたんだ!」


と、来虎さんは目玉が落ちそうなほど目を開けて驚き、一緒に来たヤドリギの妖精みたいなドレスを着る夢衣ちゃんと中身を見てくれる。


夢衣「やっばい。来虎、かっこいい…。」


天「ぱっと見、ネイビー1色なんですけどボタンホールとか中の縫い目はゴールドにしてシャンパンをモチーフにしたネクタイとハンカチの色と合わせてみたんですけど、どうですか?」


私が来虎さんの逆三角形に驚きながらも、ジャケットの説明をすると来虎さんは私のオフショルダーだったドレスの袖を肩に上げてヘアアレンジが崩れないように頭をそっと撫でた。


来虎「ありがとう。こんなにいいもの作ってくれるとは思わなかった。」


私はその言葉を貰えて少しゆるく感じる肩まわりも気にせず、近くのソファーに倒れて達成感に酔いそうになると側にいたひぃ兄の可愛い友達のあきくんが私の体にすぐブランケットをかけた。


明「危ないよ。おっぱいぽろろんするところだった。」


天「…え?!」


私はかけてくれたブランケットの下を少し覗いてみると、夢衣ちゃんと一緒に買ったヌーブラが丸見えになっていた。


明「可愛い服はそれなりのリスクあるから着るときは気をつけないと。」


そう教えてくれた明くんは少し前から服の趣味を変えてしまったのか、少しボーイッシュで今日は肌の色とよく合うホワイトベージュのスーツを着て私にそう教えてくれた。


天「…明くんは可愛い服、また着ないの?」


私がずっと気になっていたことを聞くと、明くんは少し切なそうに笑った。


明「冬は寒いからズボンだと温かいし、恋人と並んでも後ろ指刺されないから。」


天「好きな人の隣にいるためには自分が変わらないとダメなのかな。」


明「好きな自分よりも、好きな相手に合わせようって思えるほど好きが深まったらいいんじゃないかな。」


天「じゃあ…、私も合わせる。」


明「尚春先生と大学デートでしょ?そのままデート出来るように大人っぽコーデ勉強しよ!」


そう言って、明くんは私に新作のワンピースを見せてくれたけれど前みたいにスクリーンショットではなくてHPを見て、その場で新作を見つける。


それが私にとって少し悲しくて、可愛い洋服を共有出来る友達がまた減ったことに寂しさを覚えてしまった。



環流 虹向/天使とおこた

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