20:00
私は先月始めに引っ越した兄の家に今日買った材料と冬休みの間に着る服などが入ったキャリーバックを持って部屋前に着くとぶすっと顔のひぃ兄が出てきた。
一「なんでまた物持って来てんだよ。」
ひぃ兄はとってもイケメンの部類に入るけれど、子供の時に左側の額に大怪我をしてしまって少しおでこが凹んでるような傷跡が残っていてずっと隠していた。
けれど、夏休みが明ける前に親友で幼馴染の奏くんに説得されたらしく、今は傷を隠さず金髪で派手なカッコイイお兄ちゃんになった。
天「夏さんの彼女さんのお兄さんにジャケット作るための道具と冬休み分の服だよ!」
一「その名前出したら食事一切禁止な。」
天「はー…い。」
ひぃ兄は夏さんと同じ専門学校で絵の勉強をしてるらしいけど、なんだか仲が悪いらしい。
私の命の恩人だから食事を奢ってもらえるなら遊んでもいいっていうひぃ兄の不思議な契約で夏さんとはご飯に行ってるけど、それも本当のとこは嫌らしい。
一「彼女の兄さんって言ったら
と、ひぃ兄は私が生地の型取りをしてる作業の隣で携帯とスケッチブックを交互に持ちながら作業をしている中、話掛けてきた。
天「そう。クリスマスパーティーで着れたらいいなってお願いされたから明後日までに仮縫いまで終わらせる。」
一「…ってことは泊まりか?」
天「お母さんにタクシー代貰ったからいいとこまでやったら帰るよ。」
一「ならいい。」
そう言ってひぃ兄は自分の作業に集中し始めたので私も集中して広々とした床があるリビングで型を切り抜き、ひぃ兄が私のために用意してくれた元・ウォークインクローゼットで現・作業場に行く。
そのこじんまりとした集中出来る作業場でジャッケットのデザインの想像と現実を擦り合わせていると、少しリビングが賑やかな気がしたので休憩がてらに覗いてみると会いたかった人がいた。
天「…あ!
私はたまにお下がりの服をくれるひぃ兄の
夢衣「今日はこっちに来てたんだね。じゃあちょうどいいかも。」
と、夢衣ちゃんは嬉しそうに背後にあったブランド物の紙袋からクリスマス仕様のラッピングで綺麗に包まれている箱を出した。
夢衣「ちょっと早いけどクリスマスプレゼント。天ちゃんにぴったりだと思うよ。」
そう言って夢衣ちゃんはひぃ兄の持っていたスケッチブックと同じくらい大きくて可愛い箱を私にくれた。
天「…え、えっええ!!いいの!?」
夢衣「うん。どうせだったらクリスマスパーティーの時に使ってほしかったし。」
一「よかったなー。俺もフライングで靴下もらった。」
ひぃ兄はソファーでだらつきながら脚を上げて、もこもこでルーズソックスみたいなトナカイとサンタさんの靴下を見せてくれる。
天「ありがとう!大切に使います!」
私はまだ中身を見てなかったけど、夢衣ちゃんがくれるものは絶対的にいいものと知ってるのでしっかり約束をしてプレゼントの箱を開けた。
天「…ぅわぁ。…きれぇ…い。」
箱の中にあったワインレッドの深い赤みがとっても綺麗なベロア生地に私は目を奪われる。
しかもその上にはサンタさんがソリに乗っている時につけてしまったかのような星屑がキラキラと散らばっていた。
夢衣「天ちゃんが『大人っぽくなりたい!』って言ってたからちょっとお姉さん張り切っちゃった♡」
そう言って夢衣ちゃんは箱からドレスを取り出すとバックサイドを見せてきた。
夢衣「腰のとこのあみあみ見て!めっちゃかわゆいぃ♡」
天「かわいい…っ!しかもこのキラキラシースルーのおっきなリボンも付いてるんだね!」
私はタイトめのベロアドレスを見て夢衣ちゃんと一緒に心踊っているとそれを見ていたひぃ兄が起き上がった。
一「それ、普通の下着だと形見えんじゃん。」
夢衣「Tバックはけばいいじゃん。ね?」
天「え!?も、持ってないよ…。」
夢衣「え?そうなの?じゃあついでにパンツも買ってあげればよかったな…。」
一「というより、中学生にしては肩も腰も肌の露出多すぎ。中になんか着ろよ。」
天「え!?これだけで十分可愛いのに…。」
夢衣「そうだよ!中学生でも天ちゃんは大人っぽいから大丈夫!パンツは一緒に買いに行こうね!」
一「中学生は多分ヌーブラ持ってないぞー。」
と、ひぃ兄が私の下着事情を言うと夢衣ちゃんはまた驚き、中身は全部一緒に揃えようということになった。
私は急にイベントがたくさん入った今週に気分が上がり過ぎて、明け方まで作業をして家に帰った。
環流 虹向/天使とおこた
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