12/29
10:00
「んー…ぅ。行かないで。」
別れ際、夢衣は俺に抱きついて改札に向こうにいる夏と莉李を気にせず俺を引き止める。
来虎「もう新幹線来てるから。4日は終電に帰ることにしたからその時に遊ぼう?」
夢衣「…やだ。」
別れ際になると夢衣はいつもこうやって駄々をこねる。
それは数少ない友達が遠くに行ってしまうからと前は思っていたけど、俺の事を恋愛対象として好きと思って離さないのは今日やっと理解した。
けど、俺はそんな夢衣と同じ気持ちにはなれずにどんどん迫ってくる出発時間に焦ってしまう。
来虎「年明け、少し遅いけど一緒に初詣行こうか。」
夢衣「…行く。」
来虎「うん。約束は絶対守るから。向こうに着いたら電話もするから一旦お別れしようか。」
夢衣「いやだぁ…。」
と、夢衣は若干涙目で俺を上目遣いで見上げてきて、別れをまだ渋る。
来虎「んー…、どうしよっかな…。」
俺は夢衣の対応にどうすればいいか分からずにいると、夢衣は俺の困った顔を見たからかゆっくりと俺の体から離れた。
夢衣「…嫌だけど、ばいばいね。」
来虎「うん。寝たらあっという間に正月は明けるし、こっちに飛んでくるよ。」
夢衣「寝れないときは…?」
来虎「電話かけていいよ。なるべく出れるようにスピーカー大音量にしとく。」
夢衣「…分かったよーぅ。」
と、夢衣はふてくされ気味な顔で俺に手を振り、改札の向こうから見えなくなるまで俺たちのことを見送ってくれた。
莉李「夢衣さんって来虎兄さんのこと大好きだよね。」
夏「だね。俺たちは放っといて夢衣さんと年越し過ごせばいいのに。」
来虎「元は2人を実家に連れ戻すのが役目だったから。遊ぶのはおまけみたいなもの。」
莉李「役目が終わったら東京に戻っていいよ。」
来虎「家の掃除があるし、父さんが腰痛めたから今年は俺がしめ縄飾らないといけない。」
夏「俺がやりますよ。」
来虎「夏は莉李の隣にいてほしいから。」
俺はどうしても東京に帰そうとする2人にちゃんとした理由があることを伝えて新幹線からタクシーに乗り換え、やっと安心できる実家に着く。
家に到着すると莉李は久しぶりの実家にとても嬉しそうで、夏は結婚を前提に同棲させてほしいと2人に頼み込んだぶりにこの家に来たからか少し緊張した顔をしていたけれど、少ししたらもう家族の一員としてホットプレートで父さんと一緒に焼うどんを作っていた。
俺はそんな仲が深まっていくみんなを見て、ここに夢衣がいてくれたらとふと何度も思ってしまった。
環流 虹向/ココのさきには
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